オペレッタ The Beastly Bombing 公式サイト(英語)

以下は、The Beastly Bombing, or a Terrible Tale of Terrorists Tamed by the Tangles of True Love のリブレット著者 Julien Nitzberg さんの許可を得て、あらすじを日本語に訳したものです。本文中のリンクは公式サイトにある音楽の mp3 ファイルです。

忌まわしい爆破

真の愛のもつれにほだされたテロリストたちの世にも怖ろしい物語

リブレット:ジュリエン・ニッツバーグ
音楽:ロジャー・ニール

(注意:この要約を読んでしまうと、劇の面白いところが全部分かってしまうので、劇を見た時の楽しみが減ってしまうかもしれません)

第一幕

現代世界で起こる出来事がますます現実離れして信じがたくなっていく中で、「忌まわしい爆破」は、それらを同じように変わった視点から描いています。具体的には、19世紀の喜劇オペレッタの展開と音楽が用いられます。ギルバートとサリバンに倣って、「忌まわしい爆破」では、「ペンザンスの海賊たち」の乱暴だがロマンチックな海賊とか、「ミカド」の皇太子の変奏旅行とか、「魔法使い」の愛の媚薬といった設定が、乱暴だがロマンチックなテロリストや、お忍びで行動する大統領の娘たち、麻薬のエクスタシーなどに姿を変えて登場します。

多くの優れたミュージカルと同様に、舞台は二人の白人至上主義者(パトリックとフランク)の登場で始まります。政府に不満を持つ彼らは、その不満をブルックリン・ブリッジを爆破することによって示そうと考えています。同じころ、クラリッサとエリッサという双子の姉妹がニューヨークに逃げて来ました。クラリッサとエリッサはお父さんに見つかるのを心配してはいますが、ニューヨークに来たことをことさら喜んでいます。彼女たちがワシントン・スクエア公園を歩いていると、麻薬密売人がやってきます。どんなヤクが好きかと聞かれ、二人は幸せそうに「幻覚きのこが好き」と歌います。でも二人はありとあらゆる薬が好きなようです。

ブルックリン・ブリッジに来たパトリックとフランクが爆弾を仕掛けようとしていると、アブドゥルとハリッドに出会います。アルカイダのテロリストである彼らも、同じように橋を爆破しようとしていたのです。二組のテロリストたちは、争っているうちに、相手の爆弾を橋から落としてしまいます。爆弾は川の中で爆発し、爆破は失敗に終わります。

警察や消防のサイレンが遠くで鳴り始め、四人はいっしょに逃げ出します。アブドゥルは怒って、白人至上主義者の二人には橋を爆破する理由などないじゃないかと責めます。それに対し、パトリックとアブドゥルは互いに自分たちの動機を「我々のイデオロギー」の歌で説明します。彼らは、どちらも同じようにユダヤ人やアメリカを牛耳る「シオニスト占領政府」(ZOG)が嫌いであることを知ります。サイレンの音が近づいてくる中、ずぶ濡れの四人は着替えを見つけようとブルックリンの洋品店に駆け込みます。その店はなんと、信心深い保守派のユダヤ人が経営しているのでした。しかし、警察の目を逃れるため、四人はその店で正統派ユダヤ教徒の服を買って、外に出ます。

パトリックとアブドゥルは意気投合し、頭の悪い相棒たちと別行動で新たな計画を立てることにします。置いてけぼりにされそうなフランクとハリッドは互いに、自分がテロ組織の中で馬鹿にされ続けたことを、悲しげに、「繊細な白人至上主義者の歌」で訴えます。

そうこうしていると、クラリッサとエリッサの双子姉妹が警察に追われて、登場します。正統派ユダヤ教徒の服装をしている四人を見て、二人は持っていた麻薬を彼らの服の中に隠します。しかし、やって来た警察は四人だけでなく、クラリッサとエリッサも逮捕し、六人を留置所に入れてしまいます。

警察は四人が正統派ユダヤ教徒だと思っているので、ユダヤ教の教義に従って調理された食べ物がないと言って、四人に何も食べさせません。空腹をまぎらわすため、四人はクラリッサとエリッサが持っていた錠剤を覚醒剤だろうと考えて、飲むことにします。その直後、監房の窓越しに四人はブルックリン・ブリッジが爆破され崩れ落ちるのを見て、唖然とします。犯人はいったいだれ?

一方、ホワイトハウスでは、大統領が「最も勇敢な大統領」の歌で自分の勇気を自慢げに歌いながら部屋に入ってきます。歌の途中で、補佐官たちがブルックリン・ブリッジが爆破されたこと、そして大統領の双子の娘たちが麻薬中毒者更正施設から脱走して行方不明になっていることを告げます。

第二幕

舞台は再び留置場。薬の効き目が現れてきました。ところが、覚醒剤だと思っていたものは、実はエクスタシー麻薬だったのです。エクスタシーの効果で、六人はみんな恋に落ちます。「私たちのように愛する人たちは」の中で、フランクとクラリッサ、ハリッドとエリッサ、そしてパトリックとアブドゥルが互いの愛を告白します。

新しい逮捕者が監房に入れられます。何の容疑で捕まったのか問われて、「社会の道徳」を歌いながら、彼は自分が牧師で、若い男の子たちが大好きなのを偏狭な世間にとがめられて逮捕されたのだと語ります。今すぐ結婚したいと言う六人の願いで、牧師は監房の中で結婚式を執り行います。式が終わるやいなや、政府のシークレット・サービスが留置場に現れ、大統領の娘たち、そしてその新郎たちと残りの二人も釈放します。

ホワイトハウスでは、大統領がだれかに復讐をしようと敵愾心を燃やしています。爆破事件の犯人がサウジアラビア人らしいと告げられると、大統領は「サウジ王家」への愛を歌います。彼は、適当にチャドを(名前が気に入らないから)空爆することに決めます。

六人が部屋に案内されるのと同時に、大統領のもとに、怪しげな潜水艦がニューヨークのイースト・リバーで拿捕され、それに乗っていた者たちがホワイトハウスに連行されつつあることが伝えられます。潜水艦に乗っていたのは、大統領が予想していたチャド人ではなく、ものすごく高齢の日本人でした。彼らは、1944年からずっと、標的のブルックリン・ブリッジを探して世界中を彷徨っていたのです。第二次世界大戦が終わったことに気づいていない彼らは、自分たちの任務がようやく完了したことを喜び、「バック・イン・1944」を歌います。

もうミサイルはチャドに向けて発射されています。大統領は「考え得る唯一の選択肢」だとして、ミサイルの進路を日本に変更するよう命令します。補佐官たちが慌てて部屋を出ていったため、部屋には大統領とテロリストたちだけが取り残されます。アブドゥルとパトリックは喜びます。橋を爆破するよりももっとデカいことをやるチャンスがめぐってきた。そう、今こそ大統領を殺害するチャンスです。しかし、ハリッドとフランクは乗り気ではありません。大統領の義理の息子というのも悪くないな、などと考えているのです。

アブドゥルとパトリックが大統領を殺そうとするのを制して、ハリッドは大統領に彼の中東政策を説明するように求めます。もうみんな家族になったのだからと言って、大統領は彼の秘密を告白します。以前、まだ若かったころに彼は飲酒運転で逮捕されたことがありました。留置所で、彼は黒人ムスリム運動に参加していた男に出会い、コーランのことを初めて知ったのです。ムハンマドが勇敢な戦士であって、何人もの妻と結婚していたことを聞いて、彼は喜び、だれにも知られずにイスラムに改宗したのです。その後、彼はずっと、反シオニスト占領政府運動の企みで政府の中枢に入り込むべく活動してきたのでした。イスラム社会は常に宗派争いが続いています。彼は今や、その解決のための完璧な作戦を行ないつつあったのです。ムスリムのためには、私はイスラエルを支持する/なぜなら、ムスリムの一致団結に必要なのは/アメリカと世界のユダヤ人への憎悪だからだ。さらに続けて彼は歌います:私はアラーによって遣わされた/わが同胞のムスリムたちを勇気づけるためだ/私は何回でも戦争に失敗して/イスラムへの信仰を強くさせる/二期目が終わったら/私はメッカに帰るのだ/ニセの仮面を脱ぎ捨てて/新たな最高指導者になるのだ! これを聞いてアブドゥルとハリッドは喜び、自分たちもムスリムであることを明かします。

ミサイルの弾頭が日本全土で炸裂する中、みんなは喜びに満たされて互いを抱擁し、大統領がフィナーレの曲の中で、どんなに世界が悪くなっても、「愛がまだある」ことを覚えていなくてはならないと彼の新たな家族たちに諭します。そして(可哀想な日本人たち以外)みんなは末永く幸せに暮らしましたとさ。

(大野 裕 訳 2007/1/23)