歪む教育
Texas elementary school taught 3rd graders just 2 subjects - and nothing else: report - 昨日に続いてテキサス州の小学校の話なのですが、全くの偶然です。
去年から今年にかけて、テキサスのある小学校では3年生に算数と国語(reading)の2科目しか教えていなかったという事実が明るみに出ました。アメリカの小学校の科目について私はあまりよく知らないのですが、社会、理科、美術、体育は必ずあるはずですし、国語も読む技能だけでなく、書く技能などの時間があるはずです。これらの科目については、校長の命令で偽造された記録が市の教育委員会に届けられていました。
なぜこんなことが起こったかと言うと、それはテキサス州で実施されている Texas Assessment of Knowledge and Skills Test という統一学力テストが小学3年生については算数とリーディングしか実施されないからなのだそうです(学年が上がるにつれて科目が増えるようです)。
私たちの国でも、例えば大阪で、そう遠くないうちに同じような話を聞くことになるような気がします。
学校間の競争を重視するとか、教育の資質ではなくマネジメントの能力を重視して校長を登用するとか、教員に命令の絶対服従を求めるとか、教育委員会の力を弱めて校長の権限を拡充するとか、そんな考えの行き着く先に、このテキサス州のニュースはあると思います。
不必要に政治化された教育行政で割を食うのは、市民と子どもたちです。
テキサスの子どもたちの写真は Neighborhood Centers が CC-by-nc-sa で公開しているもの。
2011年 11月 24日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
全く同感です。
それにしてもアメリカの教育事情もこんなとこまできてるんですね。
やっぱりテストの成績がわるい学校には入学希望者があつまらない、とか補助金削減のうきめにあうとかそんなことがあるんでしょうか?
こんなことはアメリカさんの真似しなくてもいいのにと思います。
投稿: rhayader | 2011/11/24 22:44:21
rhayader さん、
まあ、ニュースになるくらい極端な例(犬が人を噛んだではなく人が犬を噛んだ、のたぐい)なので、全国的に心配な状態というわけではないと思います。
でも、成績と補助金を連動させる問題とか、競争重視、校長の選び方等々のやりかたをやめれば、起こりにくくなる問題なのだろうと思います。それをあえてやろうというのはねえ…
投稿: うに | 2011/11/25 0:21:29
お久しぶりでございます。
この問題は、2012年には珍しくなっていたのかもしれませんが、「ヤバい経済学」という2004,5年ごろに原著が発売され、日本でもベストセラーになった本に出てきます。先ごろ、映画にもなったとか。
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d07/2007/bookreview2007_01.html
>第1章だけ紹介しておきますと、学校の先生はインチキしてる。相撲力士もインチキしてる。これが第1章の結論です。どういうことかというと、アメリカの初等教育の教育水準が低いというのはずっとアメリカ国内でも問題になってきました。アメリカは天才も多いけれども、あまりできない人たちも多い。それの原因というのは初等教育がよくないからじゃないかというようなことを言われてインセンティブの導入がものすごく行われています。一発勝負テストで学校の先生も評価されるし、生徒も評価されるという制度を導入した。
レヴィットさんは、このテストでインチキがあるということをいろいろな形で検証していったわけです。テストが導入されたことによって先生がインチキをする。先生が生徒の答案用紙をマークシートなので書き替えて、それをインチキして点数を上げているという現象が1,000人の先生のうち、だいたい50人ぐらい、つまり5%ぐらいですかね、先生がインチキをしていたということがわかったわけですね。
検証はシカゴの教育委員会をベースにして行った。テストでは生徒は褒められると同時に、先生は低い点数だと怒られたり首になったりする、そういうインセンティブを与えたんです。かなり強烈なインセンティブを与えた。そうすると先生はどうしたかというと、自分で先生が生徒の答案を集めてその答案を消しゴムで消して自分でやった。ところが、ちょっとやそっとでは平均点は上がらないからそれを機械的に一斉にシステム的に修正したわけです。そこでレヴィットさんは、先生たちがシステマィックな答案用紙の修正を行っているかどうかを検出するアルゴリズムを考えだして、そのアルゴリズムで検証していってどれくらいのインチキ率が発生したかというのをやったわけです。
新自由主義者のいかれた価値観・人間観と、俺の金を貧乏人のがきに注ぎ込まないためには馬鹿な貧乏人の下卑た根性・劣情に訴えてごまかし話をそらすのが一番と言う最低なあり方が良く現れています。
旧教基法が示すように、良い教育をし子供の力を引き出すには、単にたっぷり教育予算をつけ、現場の裁量に任せて、外野がぐちゃぐちゃ介入しないのが一番ですが、これこそ新自由主義者が最も憎み我慢ならないことであり、しばしば劣情に負けてしまうひとびとの大嫌いなことでもあります。
兄弟国たるイギリスでも同様な制度があるようです。統一テストの条件を揃えるために、全国で毎日毎時間同じプリントで同じ指導法で同じ進度で授業をやり、その点数で学校と教員の評価をやって、罰しているとか。が、こちらも、反現実的な上に、政府としても毎年学力が向上している振りをしなくてはならず、大分反省が出て修正されつつあるようですね。全英第一位の成績を挙げた校長が、その秘訣をと聞かれたら「教育省の言うことに一切従わなかったからよ」と英国人らしいことを答えてました(昔、世界に書いてありましたよ)。
投稿: L | 2011/11/25 21:12:09
Lさん、コメントありがとうございます。
Freakonomics は、Democracy Now! でも何回か紹介されていたのを覚えています。
そうかあ、私が紹介したのは、特に極端な例というわけでもないかもしれませんね。恐ろしいことですが。
投稿: うに | 2011/11/26 14:08:59