« 国境線から幾千里のがれきの町に立つ | トップページ | 国勢調査から抜け落ちる »

2011.03.22

みえない雲

Anti-Nuclear Children's Author: 'I Hope the Japanese Will Be Spared' - 独シュピーゲル紙の記事。ドイツの作家、グードルン・パウゼヴァング(Gudrun Pausewang)さんによる寄稿です。

Grafenrheinfeld by MarcelGパウゼヴァングさんは『みえない雲』(Die Wolke)という子ども向けの小説を書いた人だそうで、この本は5年ほど前に映画化されたそうなので、ご覧になった人もいるかもしれません。

ドイツ中部にある原子力発電所で事故が起こり、14歳の少女、ヤンナベルタは、ちょうど両親が旅行に行っていたため、8歳の弟と恐怖と混乱の中を生きていかなければならない、という話だそうです。記事の中でパウゼヴァングさんは、「私が子どもだったころは、子ども向けの作品はハッピーエンドになることが常識だった。しかし、貧しい家庭に育った私は、人生がいつも幸せな結末を迎えるわけではないことを知っていたので、自分がこれらの作家たちにまともに相手にされていないような気がした」と語っていますから、とても読むのが辛い本なのかもしれません。

「この本に書いたことのいくつかは、既に日本で起こっている。どうか日本の人々が、これ以上の不幸に遭いませんように」とも書かれていました。私も、強く、強く、そう願います。

パウゼヴァングさんは、ナチスのもとで少女時代を過ごしました。当時の大人たちに「どうしてあなたは何もしなかったのですか」と彼女が尋ねたいように、自分の孫の世代に「あの時、あなたは何をしていたのですか」と問われないために、この本を書いたとも語っています。私もその問いに答えなくてはなりません。

小説の舞台となった原子力発電所の写真は MarcelG さんが CC-by-sa で公開しているものです。

このブログで

2011年 3月 22日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12988/51182584

この記事へのトラックバック一覧です: みえない雲:

» フランスの独立系原子力監視機関が報じる2011年3月21日の福島原発の記事 トラックバック 村野瀬玲奈の秘書課広報室
   フランスの独立系原子力情報センター、「CRIIRAD」の2011年3月21日11時(日本時間で同日19時)の発表記事を読んでみましょう。ここに含まれるいくつかの情報、たとえば、「ホウレンソウの汚染が27倍」...... 続きを読む

受信: 2011/03/23 22:48:47

コメント

うにさん、おはようございます。

2006年の10月にJIM-NETから、「黒い雲」上映会のお知らせがきていたときの記事があったので、TBさせてもらったのですが、うまく送れないようなので。

そのあと原作本が京都市の図書館にあったので、読ませてもらっています。心の痛いお話でした。

投稿: winter-cosmos | 2011/03/22 5:46:56

こんにちは。
「見えない雲」を翻訳した高田ゆみ子と申します。
今回の福島の事故、私にとっても悪夢のようです。
チェルノブイリ事故は今から25年前、その直後に書かれたのがこの本です。
福島原発については現在ドイツでも大々的に報道されていて、そういえばパウゼヴァングさん、なにかコメントをしていらっしゃるかなと思って検索したらうにさんのブログに行き当たりました。Spiegelの記事も読みました。前作の「最後の子どもたち」を翻訳した直後、彼女ご自宅に訪ねたことがあるのですがお元気でいらっしゃるのですね。けれど、彼女が書いた小説が現実となってしまった、というようなことでまたお話を聞くことになろうとは。それも四半世紀もたって・・・。
テレビや新聞で報道される内容、世の中の反応、「原子力専門家」や政治家のインタビューを見るたび、小説の内容とあまりにも似ていて愕然としています。
今回のことは、日本のひとつの転換期となるような気がしている私です。
「見えない雲」のことを書いてくださってありがとうございます。パウゼファングさんのコメントも読む機会を与えてくださったことにも。
原発のこと、まだまだ注視していかなければなりませんね。
取り急ぎ。
高田ゆみ子

投稿: 高田ゆみ子 | 2011/03/22 21:24:30

winter-cosmos さん、こんにちは。

http://winter-cosmos.cocolog-nifty.com/first/2006/10/post_d2bc.html
http://winter-cosmos.cocolog-nifty.com/first/2006/10/post_5705.html
http://winter-cosmos.cocolog-nifty.com/first/2007/07/post_b88f.html

ですね。読みました。「見えない雲」という表現を聞いて、どこかで見たことがあるなあと思ったのは、 winter-cosmos さんのところで読んだのだったのですね。なるほど。


高田さん、

コメントありがとうございます。そして、何よりも、貴重な訳業に敬意を表します。

私も、今日、小学館文庫版を書店で見つけ、買ってきました。

すべてを見通すような本を訳されたかたには、今回の事故はトラウマになるのではないかと心配です。どうかご無理をなさいませんように。

今はとにかく、本当に状況がこれ以上悪くならないことを祈るばかりです。

投稿: うに | 2011/03/23 0:04:22

うにさん、こんにちは。
「みえない雲」で検索してきました。

この作品は未見ですが、公開されたとき、そして絵空事ではなくなった今、興味が出てきました。

政府の発表はデタラメの極みだし、汚染地域も少な目にしか発表しないでしょう。

被爆者の数も少な目にして、後で大幅に犠牲者を増やす結果になることでしょう。

チェルノブイリではそうでしたから。
by「チェルノブイリ報告」

投稿: わい | 2011/04/09 15:07:41

わいさん、

おっしゃるとおり、政府や東京電力の発表は信じていいものやら、悩みますね。私は、直感的には、いろいろと隠されている感じがするのだけど、専門的な知識がないので、発表もそれを批判する声も消化できずにいます。

こういう素人が非常に不安を感じるのはしかたがないことだと思うのですが、それを言葉にして、例えばブログに書くと、ただ他の人の不安を煽るだけになってしまいますからねぇ。

原発の近くの人たちのためにも、そして私のような人のためにも、早く事態が収まってほしいです。

投稿: うに | 2011/04/09 21:28:09

うにさん、久しぶりです。原発事故にほんとうに心が痛みます。
当方の所属する生協法人で、「みえない雲」の上映会を、5月連休明けにでもしようとおもっています。

http://www.nishinari.coop/?p=3076

関心のおありの方はご連絡ください。日時など詳細が決まりましたら、お知らせします。
fish(-_-X)

投稿: ゼファー生 | 2011/04/22 13:47:13

ゼファー生さん、お久しぶりです!

とりあえず、「最悪の事態」にはならずに済みそうに思えますが、なかなか安心させてもらえませんね。緊張が長く続いて、心が崩れそうです。

「みえない雲」、私も見たいなあ。日時が決まったら、ぜひ教えてください。

投稿: うに | 2011/04/23 1:10:24

うにさんへ
試聴しました。良心的な映画と思いましたが、原作のほうがずっと良いです。原作にあった、反原発の父母と容認ないし黙認の祖父母の対立の構図など社会的な広がりが映画ではラブロマンスとして解消されている気がしました。かろうじてエルマーの親に対する「反抗」として表現されてはいますが…
28日に、東日本大震災支援活動の報告会がありますので、そこで、企画すべきか図ってみます。

投稿: ゼファー生 | 2011/04/24 10:53:11

ゼファー生さん、

今の時期、「みえない雲」の本を読むのは本当に辛かったので、映画ではある程度希釈されていても、しかたがないんじゃありませんか? 本は、胸が張り裂けそうになったら、ひとまず置いて、涙を拭くなり、他のことを考えるなりできるけど、映画は容赦なく進んで行ってしまうから…

投稿: うに | 2011/04/25 23:59:46

うにさんへ
「みえない雲」上映会が決まりました。
5月21日(土)午後4持からです。
詳細は、下記の通りです。

http://www.nishinari.coop/?p=3187

投稿: ゼファー生 | 2011/04/29 15:40:40

ゼファー生さん、

ご連絡ありがとうございます! これって無関係の人でも見に行っていいんですよね? 行きたいなあ。でも行けるかなあ。今、同僚が一人、入院してしまって、てんてこ舞い状態なんです。

投稿: うに | 2011/04/30 0:49:25

ドイツ在住の日本人です。3月以来、日本にいる家族および日本のことを心配しながら、なすすべもなく悲しみにくれる日々の後、原発のことを知り、原発に反対していこうと決心しました。
そんな中で数週間前にぶつかったのが、パウゼヴァンクの著作でした。恩姫さんの記事を見つけたのも、日本語で訳されているのを知って検索している途中でした。
「みえない雲」は、ドイツ語版でも青少年向けに書かれているもので、表現自体はセンチメンタルでもドラマチックでもないのですが、まさに今の日本人が読むと心に重い岩を抱えたような内容でした。
この本の序文のような形でパウゼヴァンクさんが引用されているのは、1986年5月23日(チェルノブイル原発事故の4週間後)の新聞投稿記事です。この記事は、原発事故に関して無責任で無能な政府に対する批判でしたが、チェルノブイルを福島と言い換えるだけで、全て当てはまってしまいます。日本人の今の心境が表現されています。
映画は、見ていませんが、ドイツの映画批評を読んだ限りでは、パニック映画というカテゴリーに入っていたのが気にいりません。
原作でも、原発事故の後の人間のパニック状態の描写がかなりリアルでしたが。とにかく、日本でも多くの人がこの作品を手にして原発の怖さを知って欲しいと願っています。

投稿: Harusugite | 2011/05/02 8:31:05

Harusugite さん、コメントありがとうございました。

遠くにいると、不安をかきたてるような話ばかりが伝わってきて、日本の家族、知り合いのかたがたのこと、ご心配のことと思います。

安心材料(になるか分かりませんが)を提供しますと、私は京都在住なのですが、先週、喉の精密検査を受けました。その際、甲状腺も調べてくれたそうで、「異常なし」と言われました。関西(西日本)で普通に暮らしていて(通勤の一部に自転車も用いています)、急な雨に打たれたりしても、大丈夫だということだと思います。

政府もあてになりませんが、たぶん、他の党が政権を担い、他の人が首相を務めていたとしても、たいして変わらなかっただろうと、多くの人が思っていると思います。

現在以上に緊迫することを免れれば、日本では、今回の事故は脱原発の分水嶺にはならないような気がします。日本から見ると、ドイツは明らかに脱原発に向けて舵を取りましたよね。いったい何が違うのでしょう。

投稿: うに | 2011/05/02 22:57:21

恩姫さんへ

戦後のドイツは、ナチス時代のトラウマを未だに引きずっているために、政治家の宣伝することは、全て一旦は批判的に見てみるという癖がついているようです。

昨年秋に、9歳だった息子が「ルートヴィッヒ君が土曜日にハノーファーへデモへ一緒に行かないかって言うんだけど、行ってもいい?」と訊いてきました。ちなみに、私達の住んでいるところからハノーファーは350キロほど離れています。息子は、デモということの意味も知らなかったのですが、その友達からは以前に「原発反対」のシールをもらったこともあり、原発反対に行くということはわかっていました。その子のご両親は普通の方々ですが、家庭の普通の会話に原発反対も含まれているのでしょう。

その週末は都合がつかなくて息子は行けなかったのですが、このエピソードでもわかるように、既に小学生のうちから、ドイツでは社会問題を批判的に見ていく習慣を学んでいくようです。

福島の原発は、まだまだ油断ならぬ状況のようですが、私は、今回の事故が日本人の意識を大きく変えることになるよう祈っています。

投稿: Harusugite | 2011/05/04 6:08:09

Harusugite さん、

両国での戦争責任への向き合い方が、日常の政治への眼差しにも、そして教育のありかたにも現れているということでしょうか。だとすると、かなり大きな力がかからないと変革は難しそうですね。今回の事故が、せめて人々にもう一度「考え直す、見直す」機会になればいいのですが。

明日は、事故後、初めて人間が原子炉建屋に入る(空気の浄化装置を設置する)のだそうです。それは危機を乗り越える一里塚とされるのでしょうが、その一方で、燃料棒の温度は循環的ではない放水によって保たれています。人間の打つ手が間に合うことを祈りつつ、すべてが間一髪のところで起こったということから有意義な教訓が学ばれることを願う。私の望むのは Harusugite さんと同じだと思いますが、とても複雑な思いです。

投稿: うに | 2011/05/04 22:51:22

「見えない雲」を読みました

訳者の高田ゆみ子さんを検索したらここにたどり着きました

本当に物語に書かれたことが、今現実に日本で起こっていると感じます

投稿: 風の秋桜 | 2011/08/05 13:14:41

風の秋桜さん、

被曝で亡くなる人が出ていないことが不幸中の幸いですが、農作物のことなどを考えると、まだまだ心配ですね。少数だとは思いますが、福島の人たちに冷たい視線を投げ掛ける人もいます。

今回の事故でしっかり学ばないと、次はこんなでは済まない、それが怖いです。

投稿: うに | 2011/08/09 8:08:19

 高田さんの翻訳される本は著者もしっかりしたものです。そして高田さんの日本語も優れており、自分や戦後日本の歩んできた道を何度も考えさせれております。
私はマスメディアの報道に従事してきた身で、今退職後小さなインターネット・メディアに投稿したり1時間のインターネット番組をしています。
 G・パイゼバングさんの一言、"Fuer die letzten Jahre braucht man viel Tapferkeit" が胸に焼きつき、彼女の言葉を少しでも実現出来ればと思っています。
 この欄をお借りしての ぶしつけな御願いで恐縮ですが、
もし良ければ、南青山1丁目のスタジオにきてパウゼバングさんのことを語って頂けませんか。

投稿: 大貫 康雄 | 2014/02/24 18:21:13

コメントを書く