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2010.12.01

眠れなかった夜の後には、難しい仕事が待っている

ふだんは、夜、家に帰って来てからネットを見て回って、いろいろと考えさせられるような話があれば、0時ちょっと前までに記事を書くのを日課にしているのですが、昨日から今日にかけては、仕事がどうしても終わらず、もう明け方近くになってしまいました。

ネットから見つけた話ではないのですが、書きたい話はあるのです。どう書いていいものか、分からないのですが。

留学生向けの日本語の授業のはじめに、私はよく、歴史上、その日に何が起こったかについて、ちょっと話します。例えば、先週の水曜日は、Queen の Freddie Mercury が死んだことについて話しました。実は、今学期に入ってから、Deep Purple の Smoke on the Water を聴いたことがないというアメリカ人の学生がいたので、ちょっと心配だったのですが、Queen はちゃんと認知されていました。来週の水曜日は、もちろん、ちょうど30年前に John Lennon が死んだことを話すつもりです。

the bus that started the civil rights movement by contemplative imagingで、今日は何を話すのがいいかと考えると、おそらく、ローザ・パークスさんがアラバマ州のモンゴメリーで、バスに乗っている時、白人に席を譲らなかったことで、一年以上にわたるアフリカ系アメリカ人によるバスのボイコットが始まったことを話すべきだろうと思います。

Rosa Parks さんは、5年ほど前に亡くなりました。私も追悼の記事を書きました

以前の私なら、何の躊躇もなく、この話をしていたのですが、最近の私には迷いがあります。

最近、村崎太郎さんと栗原美和子さんが書いた『橋はかかる』という本を読んだのです。村崎さんは、猿の次郎が「反省」ってやる猿回しの人です。彼は被差別部落の出身で、住井すゑさんの『橋のない川』をだれにも連想させる題を持つこの本の中で、彼は子どものころの差別体験や、大人になり、出自を隠して生きてきたこと、そして栗原さんとの出会いを通じて、自分がどのように変化したかを綴っています。

その中で(pp. 33-8)、中学のころに受けた同和教育の授業についての記述があります。私が下手に要約するより、ぜひ元の文を読んでいただきたいのですが、村崎さんは、「二人しか当事者がいない教室内で、『部落の人たちを差別してはいけません』と発言していること事態が、差別行為のように私には感じられた」と言います。よかれと思って「差別はいけない」などと言っても、かえって傷つけてしまうことがあるということです。村崎さんは、雰囲気を暗くしないためにわざと明るく話すのはやめてほしいとか、テーゼとして「差別はいけない」と教えるのではなく、教師の実体験から話すとか、過去の暗い面ばかりを取り上げるのではなく、前向きに未来を見据えて授業をしてほしいとか、「部落差別」だけに話を留めず、世にあるさまざまな差別や不条理な扱いに言及し、一人ひとりが少しでも身近な話として聞けるようにしてほしい、といった提案をしています。

さて、今日、私が教える日本語のクラスは、欧米系の学生ばかりで、白人たちの中にたった一人、黒人がいます。今日は日本人のボランティアの人たちに来てもらって、会話のパートナー役をやってもらいます。今、「日本人の」と書いたところですでに問題が発生しているのですが、来てくれる人の一人は在日韓国人のようです。その他にも、もしかしたら、被差別部落出身者もいるかもしれません。

さあ、そんな中で、私はだれの心も傷つけずに、黒人公民権運動の始まった日のことを話すことができるでしょうか。正直言って、自信がありません。だからと言って、Rosa Parks さんの話を避ける勇気も私にはありません。どうしたらいいのでしょうね。

55年前の今日、ローザ・パークスさんが乗っていたバスの写真は contemplative imaging さんが CC-by-nc-sa で公開しているものです。

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2010年 12月 1日 午前 05:47 | | この月のアーカイブへ

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コメント

バスが博物館に展示されているんですね。知りませんでした。

投稿: ten | 2010/12/01 10:49:53

今日は、CNNのRosa Parks' legacy endures decades later記事しか目につきませんでしたが、どこかほかでも特集をくんでいるでしょうか? さがしてみましょう

投稿: ten | 2010/12/01 18:42:07

お久しぶりです。暫らく、あることに向けて忙しくしていたので、なかなかコメントもできずにいました。ちょっとした事なのですが、いずれ軌道に乗りましたらお知らせできると思います。さて。
Rosa Parks さんのことに関しては、『Long walk home』というタイトルで、ウーピー・ゴールドバーグとシシー・スペイセクによって20年ほど前に映画化されたのを観たことがあります。

投稿: argon | 2010/12/01 21:30:58

ten さん、

彼女がバスの席に座っている有名な写真がありますよね、あれが白黒だったものだから、バスが色付きだったことに私はびっくりしました。

アトランタの新聞の記事が、讃えられるべきなのはローザ・パークスさんだけでなく、無数の抵抗者たちが当時いたのだということを書いています。
http://www.ajc.com/opinion/it-wasnt-just-rosa-760412.html


argon さん、

これですね:
http://www.imdb.com/title/tt0100046/

私は見ていないなあ。上にコメントを書いている ten さんは映画狂なので、見ているかもしれません。

投稿: うに | 2010/12/01 23:58:19

『Long walk home』は、残念ながら私も見ていません。
ローザ・パークスさんが、バスの席を譲らなかったのは、1955年でしたよね。映画では黒人のシドニー・ポワチエの初期のころですね。彼を有名にしたのは、60年代ですね。。60年代半ばの「野のユリ」で、彼にアカデミー賞が輝きます。そして公民権運動とともに彼に関しては、さまざまな評価があります。が、私は、好きです。「野のユリ」のホーマー(ポワチエ)が、黒人霊歌“Amen”の歌声を歌いながらスクリーンから去っていく、その歌声は私の心にいつまでも残っています。

投稿: ten | 2010/12/02 16:08:57

リリアン・テュラム著 「我が黒人スターたち」
という本を以前の記事
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1936.html
で紹介したことがありますが、その本にローザ・パークスについて書かれた一章がありました。機会をみつけて紹介できればいいなと思っています。

投稿: 村野瀬玲奈 | 2010/12/03 0:24:41

ten さん、

ten さんでも観ていない映画があるんですか。で、強引に自分の領域に話を持って行こうという、非常に ten さんらしいコメント、ありがとうございます。


村野瀬さん、

こんにちは。いい意味で「ローザ・パークスって、だれ?」とだれもが言うほど、差別のないのが当たり前になるといいのでしょうけど、それまでは、何人ものヒーロー、ヒロインたちについて語らなければならないと思います。ぜひ、機会を見つけてご紹介ください。

ところで、ここ数か月の間、何回か村野瀬さんのところにトラックバックを送ったのですが、全然通らないみたいです。私たち、相性は悪いのでしょうか。

投稿: うに | 2010/12/03 22:05:31

さっき私から送ったトラックバック
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-2142.html
は届いていますが、私からのトラックバック、こちらに通らないことも確かに多いですね。このもどかしさこそが人付き合いの醍醐味かと。笑
これを乗り越えて人間関係は深まっていくのです。^^

投稿: 村野瀬玲奈 | 2010/12/03 23:58:07

うにさん
>ten さんでも観ていない映画があるんですか。

はい、数限りなくあります。AGさんやIMAGACOさんに比べたら私などは、ひよっこです。

>で、強引に自分の領域に話を持って行こうという、非常に ten さんらしいコメント、ありがとうございます。

いえいえ、こちらこそ。お褒めいただいてありがとうございます。(爆)
・・・という話とは別に「野のユリ」をぜひご覧ください。あの映画をどう観るかは、それぞれ個人ですから。・・とまた自分の座標軸で話をしてみる・・・

投稿: ten | 2010/12/04 10:26:41

村野瀬さん、

でも、トラックバックの受信って、本当に不安定ですよね。デジタル・ネイティブではない私には、従来からの人間関係の構築を難しくする情報技術というのは受け入れがたいなあ。


ten さん、

"Lilies of the Field" ですね。了解。ネットで探してみます。もとい、店で探してみます。

Ralph Nelson 監督ですか。私、彼の "Soldier Blue" は大々々好きです。

投稿: うに | 2010/12/05 1:03:32

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