社会的統合の手本
In Spain, Gypsies Find Easier Path to Integration - 「ジプシーたちは、多くの国ではロマと呼ばれることが多いが、スペインは違う。ここでは、ジプシーにあたる「ヒタノ」(gitano)というスペイン語の単語は誇りをもって使われる」と記事のはじめのほうに書かれていました。
スペインでは、軍国主義から民主主義に体制が移行して以来、ヒタノを社会に溶けこませる施策が30年間続けられてきており、他のヨーロッパ諸国に比べ、ヒタノの人たちの生活は格段に安定しているようです。ヒタノの3分の1が電気やお湯の設備のないあばら屋に居住するような国も多い中で、スペインでは92%が一般的なアパートや一軒家に暮らしているそうです。小学校への就学率はほぼ100%。大人は50%が正式に雇用されています。
それは、ヨーロッパのどの国よりも多くの政府予算をヒタノのために使ってきたためでもありますが、もう一つ、他の国々が「偏見をなくす」といった漠然とした目標を掲げていたのに対し、スペインではもっと具体的な就職支援や住環境整備に集中してきたことが大きく影響しているそうです。
もちろん、差別がなくなったわけではなく、今でもヒタノの人たちがタクシーの乗車拒否にあうことなどを記事は紹介しています。また、中高の退学率は極めて高いようです。しかし、軍国主義の政権下で、武装警察などに怯えながら暮らしていた日々とは全く違う生活が可能になったことは事実のようです。何しろ、軍政下では、ヒタノの人たちは市民権を与えられていなかったのだそうですから。
振り返って自分の国を見ると、部落差別に関しては、もう同和対策は終わらせるべきだという意見がある一方で、私の住む市の被差別部落では所得はかなり低いままみたいです。何世代もこの国に住んでいるのに、過去に与えられていた日本国籍を奪われたままの人たちもたくさんいます。また、最近になって日本にやって来た人たちが、広い社会にとけ込めずに集住しているという実態もあります。さらには、国に帰したら迫害に遭うことが分かっているのに難民の人たちを追い出したりということも。
私たちがスペインに学べることは、たくさんあるのかもしれません。
絵は、ヒタノたちが伝えたスペインの伝統舞踊フラメンコ。 Pat McDonald (away for a few days) さんが CC-by-nc で公開しているものです。
2010年 12月 7日 午前 12:38 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
「ジプシー・キャラバン」という映画にスペインのフラメンコに携わる「ヒタノ」一家が出ていました。ロマの音楽のルーツがよくわかる構成で、発祥地のインドからマケドニア・ルーマニア・スペインとその土地で花ひらく音楽の多様性がすばらしっかったです。アメリカでのツアーの様子と普段の生活を交差させたつくりでした。彼らにとって音楽は生活そのものなんですね。
投稿: tae | 2010/12/08 0:34:17
tae さん、
まだ観ていないのですが、「ジプシー・キャラバン」、入手しました。ご紹介ありがとうございます。
http://www.gypsycaravanmovie.com/ というのが公式サイトだと思います。ここからリンクのあるブログも、なかなか気になります。
投稿: うに | 2010/12/09 19:55:26
うにさん、良いニュース記事の紹介をありがとうございます。こういう勇気づけられるニュースはうにさんのところでしか読めませんね。
こういう記事をほかの人に先がけて見つけるコツってあるんでしょうか。
投稿: 村野瀬玲奈 | 2010/12/09 22:15:08
村野瀬さん、
ほめてくださり、ありがとうございます。そういうコツがあったら、私も知りたいです。「世の中には希望の種が蒔かれているはずだ」と信じ続けることしかないんじゃないでしょうか。
投稿: うに | 2010/12/10 0:09:43