建国の歴史の視点
Education Ministry bans textbook that offers Palestinian narrative - 1週間ほど前に最初に報道されたことですが、イスラエル南部のスデロットの高校で、国の認定を受けていない歴史教科書を使って授業をしたとして、校長が教育省に呼び出されたそうです。
その教科書では、イスラエルの建国、つまりパレスチナの人々にとってのナクバが、ユダヤ人側、アラブ人側の双方の視点で語られていて、その真ん中に生徒自身が考えたことを書き込む欄があるとのこと。上記ハアレツの記事の後に出た AP 電 "Principal faces hearing over textbook" によれば、この本は5年前に検定で不合格になったものらしいです。
Sha'ar Hanegev 高校では、この本を高校2年生向けの選択科目「他者によって語られる歴史を学ぶ」の授業で使っているとのこと。近隣の大学の教員なども参加した先駆的な授業のようです。
どの国の歴史にも汚点は数多くあるもので、それから学んで、自分たちの社会をよくしていこうという気持ちを育むことこそ大切だと思うのですが。
パレスチナの子どもたちを描いた壁画の写真は PPCC Antifa さんが CC-by-nc-sa で公開しているものです。壁画は北アイルランドのベルファスト、 Falls Road にあるそうです。
2010年 10月 4日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
この高校について検索したら、どうもカッサムロケットが落ちたことがあるらしいですね。そのような学校で、『戦時下』で、パレスチナの視点からも見るとどう見えるか、自分はどう考えるのかという科目を行うのは、非常にラディカルで凄いし、素晴らしい。だからこそ政府は許さないのでしょう。
翻って、この国では『尖閣諸島はわが国固有の領土であることは明らか』キリッ!という複眼思考のかけらも無い戦前並みの論説が反歴史修正主義リンクの意外なブロガーにさえ見られ、頭がガンガンしました。彼らの多くは70年代すら知らない若い人たちというのも効いているのかもしれませんが。
投稿: L | 2010/10/05 23:03:20
Lさん、いつも、私の表現できないところまで見通してくださり、ありがとうございます。
イスラエル社会の全体の状況を考えると、この学校の先生がたがやろうとしたことは、「認定されていない教科書を使う」という以上に、すごいことなのだと、私も思います。
日本と中国の領土争いについては、私も、かなり硬直した意見を、思わぬ人の文章でも目の当たりにし、戸惑いました。もちろん、そういう曲げがたい立場に立っていない人もいるし、それは中国側でも同じことなので(何人かの中国人留学生と話すことができました。想像以上に柔軟でした。わずか5、6年ほど前は、もっと縛られた意見が多かったのですが)、なんとかなるのだろうと信じています。
投稿: うに | 2010/10/05 23:26:45