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2010.06.03

ドイツが大幅な防衛費削減へ

German budget cuts could include troop reductions - ドイツでは、国家財政の健全化のため、防衛費の大幅削減が行なわれることになりそうです。今週末あたりに方向性が定まるようですが、出されている案は二つあって、一つは現在は義務的に課されている兵役をやめるか徴兵期間を短くすることによって節約を図ろうというもの。もう一つは、日本の自衛隊にあたる Bundeswehr (連邦衛隊)の兵員を半分ないし5分の3ぐらいにまで削減しようというものだそうです。

15.04.2010, Frankenberg, Afghanistan-Heimkehrer by dielinke_sachsenドイツは日本と同様、第二次世界大戦を引き起こした反省から、国防予算は経済規模のわりにかなり低めに抑えられてきました。また、これも日本と同様、近年、既に国防予算は縮小される傾向にありました。近くに軍事的に強大で必ずしも親密とは言えない国がある(ドイツの場合はロシア、日本の場合は中国)ことや、アメリカ軍の駐留を許し軍事的に緊密な関係にあるところも似ています。同じく赤字財政に悩む日本も、ドイツにならって、大胆に防衛費を減らすことを考えるといいと思います。

写真は今年4月にフランケンベルクという街で撮影されたもの。非常に不評なアフガニスタン派兵から部隊が帰ってきたところのようです。こっち側で敬礼している人は軍人だと思います(軍服とかに詳しいかた、間違っていたら指摘してください)。向こう側にいるのは、アフガン派兵に反対している左翼党(Die Linke)の人たちです。 Dielinke_sachsen (左翼党ザクセン州支部だと思います)が CC-by で公開しています。

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2010年 6月 3日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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受信: 2010/06/06 11:09:44

コメント

へー!びっくりです。すごいですね。やっぱりドイツも不十分な点がいろいろあると分かっていながらも、こういうニュースを見るとすごいと感じます。しかも左翼党って政党まであるなんて、名前がおもしろいですね。

投稿: ぅきき | 2010/06/03 3:05:17

ぅききさん、コメントありがとうございます。

政治は経済の上部構造ですから、“外敵の脅威”に偏執狂的な人たちが政権を握っているのでなければ、どこの国でも、財政状態が深刻になれば、こういう流れになるんじゃないかなあ。恐怖で市民の目を逸らそうとする人たちもいるので、安心はできませんが。

でも、反対に「今は経済がいいから、軍拡しましょ」みたいになっても困りますね。やっぱり、明確な平和への意思が必要なのかな。

「左翼党」は、旧東独の共産党系の流れも入っているので、評価が難しいかもしれません。

名前のおもしろさでは、「みんなの党」とか「たちあがれ日本」も負けていませんよ! (しらけ笑い)

投稿: うに | 2010/06/03 8:32:38

>>近くに軍事的に強大で必ずしも親密とは言えない国がある(ドイツの場合はロシア、日本の場合は中国)

ドイツの場合はポーランドとベラルーシを挟んでるじゃないか・・・・。この差はデカイと思うが?
更に言って、バルト海はデンマーク方面以外は抜け道の無い内海なため、バルト海のロシア軍の封鎖は割合簡単に行える。
北海を通れば、確実にイギリスとブチ当たる。
ロシアがドイツに侵攻するのはまず不可能と言って良い。

翻って日本の場合、障壁は海だけとなるが、人民解放軍は陸から海に軍事力をシフトさせている。
また、東シナ海は内海であるが、沖縄諸島は一続きの陸地ではないため、抜け道が沢山あり、中国の海軍を封鎖するのがとても大変である。九州や本州ならともかく、沖縄ならば簡単に攻められる。

これでも、同じと言える?

投稿: El-Fire | 2010/06/03 16:18:02

「日本とドイツが軍事的に似た情勢にあるので、日本もドイツ同様に防衛費を減らせ」と言うのは大きな間違いです。

まず、ドイツの主な仮想敵国はロシアぐらいなもので、日本はロシア・中国・北朝鮮と3つの仮想敵国に囲まれています。
次に、ドイツはNATOに加盟しており、ロシアがドイツに宣戦布告するということは自動的にNATOに戦争をしかけるということになります。
NATO加盟国は軍事的にも地理的にも経済的にも密接な関わりを持つので、対ドイツの動きは日米同盟のそれより速いと思われます。
さらに、ロシアとドイツの間にはポーランドがあります。ロシアがドイツに宣戦布告し、その前段階としてポーランドに侵攻したとしてもロシア軍がポーランドを通過するのに時間がかかるのでその間にドイツは対策を練ることが出来ます(これを軍事的には地理的縦深があると言います)
これに対し日本は周囲を海に囲まれており、本土に敵軍の侵攻を許したことはないですがそれは過去の話です。
現代の技術(ホバークラフトなどを用いる)を用いれば以前よりは容易に上陸することが可能です。

日本のある極東、さらに言えば東南アジア諸国は日本を除いて軒並み軍事費を増強しています。
ここで日本だけが軍事費を減らし軍事的に弱体化したらどうなるか考えてみて下さい。
『自分たちの軍隊は強くなった。占領すれば経済的にうまみのある大国がそばにある。しかもその国は今、軍事的に弱体化している。攻めるなら今だ!』ということになりかねません。
歴史的に戦争が起こった原因を考えてみると、こういった軍事的バランスが崩れたときに起こることが非常に多いのです。

つまり、日本とドイツは軍事的に似た情勢にないのです。

最後にドイツの徴兵制についても説明させて頂きます。
ドイツの徴兵制度には良心的兵役拒否という制度があって、この制度は兵役と同期間、福祉などの奉仕活動をすることで兵役を果たしたと認められます。
ドイツが今も徴兵制をやめられないのはこの奉仕活動の労働力が非常に大きいからです。
兵役に就いている人数が約4万人、それとほぼ同等の人数が奉仕活動をしているのです。この4万人分労働力を生み出すのは難しいと思えます。
ドイツの世論調査でも徴兵制の是非はほぼ拮抗しています。
よって徴兵制を簡単に廃止することは出来ないと考えます。

投稿: nxu | 2010/06/03 16:48:49

軍需産業で儲ける人間と、そこに群がる利権集団の為に、軍隊は存在するんですよね。
確かに、中国との付き合いは困難を感じるかも知れませんが、日本の文化は中国で生まれた文明の、亜種であるという事実、 歴史を見れば、さほど難しいとは思えません。
段階的に軍事力を削減し、遠からず自衛隊は廃止すると、そういう道筋をつけるべきです。

アジアの経済活動の要である日本を攻撃し破壊して、得する人間は居ないと思いますよ。

投稿: aiu | 2010/06/03 20:39:21

ドイツと日本はこんなに違うという趣旨のコメントをくれた二人には興味のない類のことなのかもしれませんが、ドイツと日本の違いをあげるとすれば、私なら、

・ドイツはEUという地域統合共同体に属す、ある意味「これからの国家」がとるであろう形をしているが、日本はできるだけ主権を保持しようとする「これまでの国家」の形をしている。さらに、ドイツはユーロという地域通貨で動いており、財政もその枠内で行なわれる。
・日本の近隣には、中国という基本的人権とか市民の自由といったものが十分に確立されていない大国がある(もちろん、ロシアにも問題があると思いますが、中国の比ではないと思います)。

をまっさきにあげると思います。そういう違いがあるのも承知の上で、似ている面もあるのだから、学べるものがないか考えてみたほうがいいんじゃないの? ということを言いたいのですが…

私には、上にあげた点のほうが軍事的にどうのこうのとか地政学的にどうのこうのという話よりも重要に思えます。というか、基本的人権とか経済の形態を抜きにして「陸続きと海は違う」みたいな軍事面の話に焦点を絞って議論する意義は私には見いだせません。二人の指摘する日独の差は理解できますが、それが国家財政に対する考えだとか自分の人道的な立ち位置だとかを変える必要をもたらすほど大きいものであるかは分かりません。


aiu さん、

「中国との付き合い」については、私にはなんとも言えない部分があるのですが、お隣りの韓国に関して考えると、軍事政権に終止符を打ち、文民政権に移行し、それを継続させていくにあたっては、日本が平和国家を名乗っていたことは大きな安心材料だっただろうと思います。そして、文民政権になってから、人々がずっと親日的になったことも注目していいと思います。

> アジアの経済活動の要である日本を攻撃し破壊して、得する人間は居ないと思いますよ。

これは私も思います。日本の工業力が魅力だとしたら、工場が焼け落ちてしまったり、従業員が新しい支配者に反発して働かなくなったりしたら、元も子もない。だから、これからの「戦争」は戦車やミサイルではなくて、札束で戦われるのかなと思ったりします。これからって言うより、今、既にそうですね、きっと。

投稿: うに | 2010/06/03 21:20:45

 フジテレビで、中国の海軍力増強について、髯を生やした名前の知らない軍事評論家という人が、「中国は経済成長で沿岸部に膨大な富を持っている。それを防衛するために海軍力を持とうとするのは自然なこと」と言っていました。
 別に、日本やアメリカが上海を攻撃したからって、中国の富が手に入るわけではないのですが、やっかいなことに軍事とはそういうものかもしれません。
 ですが、中国の軍事力は他国を攻めるもので、日本やアメリカは、他国を攻撃しないで防御的だ、と言い張ったら、東南アジアの国からみたら、「中国も、日本やアメリカもどっちもどっち」といって笑い転げられるような気がします。

投稿: kuroneko | 2010/06/04 0:09:37

kuroneko さん、コメントありがとうございます。

話がちょっとずれてしまうのですが…

中国と言えば、今日、授業中に天然ガスの話になり、中国から来ている留学生が中国と日本の間で海底ガス田をめぐって対立が起きていることに言及しました。

で、話はメキシコ湾の海底油田からの重油流出事故の話になり、中国が掘るにしても日本が掘るにしても、そこにガスだの石油だのがあるからと言って、むやみに掘り進むのが本当にいいことなのかねえ、という疑問というか不安というかを共有して終わりました。

投稿: うに | 2010/06/04 0:25:27

>段階的に軍事力を削減し、遠からず自衛隊は廃止すると、そういう道筋をつけるべきです。(aiuさん)
全世界、少なくとも周辺地域が等しく軍縮するなら平和を維持できますが、日本が単独で軍縮するのは危険とすでに書きました。

>日本の近隣には、中国という基本的人権とか市民の自由といったものが十分に確立されていない大国がある(もちろん、ロシアにも問題があると思いますが、中国の比ではないと思います)。(うにさん)
なぜロシアと北朝鮮のことを無視するのでしょうか。
ロシアは近年の経済復興による軍事費の増大、そして冷戦末期に弱体化した極東方面の軍事力の回復を目指しています。
北朝鮮が核兵器の開発、弾道弾の実験をしていることを知らないのでしょうか。

>日本の工業力が魅力だとしたら、工場が焼け落ちてしまったり、従業員が新しい支配者に反発して働かなくなったりしたら、元も子もない。(うにさん)
日本を占領することが出来なくても日本が弱体化すれば相対的に自国の国力が大きくなりますよね。
今の中国は一党独裁国家ですが、中国で従業員が(大規模に)反発するなんて聞いたこと無いですよね。
指導者に反発しても独裁国家ならいくらでも国民を虐げることが出来る。

>ドイツはEUという地域統合共同体に属す、ある意味「これからの国家」がとるであろう形をしているが、日本はできるだけ主権を保持しようとする「これまでの国家」の形をしている。さらに、ドイツはユーロという地域通貨で動いており、財政もその枠内で行なわれる。
意味がよくわからないので詳しく説明して頂けないのでしょうか。
主権国家が主権を維持する行動に出ることがおかしいのでしょうか。

>私には、上にあげた点のほうが軍事的にどうのこうのとか地政学的にどうのこうのという話よりも重要に思えます。(うにさん)
軍事費の削減という軍事のことを話題にしているのに、軍事より重要なことなんてあるのでしょうか。
たしかに外交と軍事は車輪の両輪でありそれぞれを欠かすことの出来ない重要な分野です。それぞれが重要なのに軍事より○○が重要などと言うのはおかしくないでしょうか。

>フジテレビで、中国の海軍力増強について、髯を生やした名前の知らない軍事評論家という人が、「中国は経済成長で沿岸部に膨大な富を持っている。それを防衛するために海軍力を持とうとするのは自然なこと」と言っていました。(kuronekoさん)
中国海軍の増強は単に軍艦や人を増やす、新しい装備を開発するといったこととは、意味合いが違います。
簡単に言えば、これまでは他国に攻める能力を持っていなかった中国海軍が、他国に侵攻できる能力を持とうとしているのです。
中国は広大な領土とそれに伴う長大な国境を守るために陸軍に力を入れてきましたが、近年はその方針をあらため海軍、空軍、さらに宇宙方面(人工衛星など)に力を入れています。
特に海軍は大きく転換しています。これまでの中国海軍は沿岸防御(せめて来た他国の海軍を自国の近海で防ぐ)ぐらいの能力しか持っていませんでした。
しかし近年は外洋型海軍(近海だけでなく遠くの海に出ても戦力を維持できて攻撃することが出来る)を目指しています。空母を建造する計画を発表していますし、先日10隻からなる艦隊が沖縄のすぐ近くの公海を抜けて演習を行ったことからもわかります。

>中国の軍事力は他国を攻めるもので、日本やアメリカは、他国を攻撃しないで防御的(kuronekoさん)
アメリカ軍は他国を攻める能力を持っていますが、自衛隊にはそんな能力はありません。
例を挙げると、海上自衛隊の護衛艦には対艦ミサイルはありますが、対地ミサイルありません。なぜなら対地ミサイルは敵国を攻めるときに用いるだろうということで、自衛のための存在である自衛隊には必要ないということになっているのです。
なので、仮に北朝鮮が弾道ミサイルの発射準備に入ったことを事前に察知しても自衛隊には、それを止める手段がないのです。

そもそも中国の軍事力は危険だが、日米の軍事力は安全だ。などと言っていません。

投稿: nxu | 2010/06/04 1:19:53

 私が軍事的意味を重要視するのは、それの趨勢如何によって人権的状況が大幅に変わるからです。
簡単に言って、戦争は大量殺人であり、戦争は引き起こしてはならないものであります。
 しかし、軍縮をすればいいかと言うとそうではありません。為政者は 『開戦による利益>開戦による被害(これは外交的なこと、政治生命的なものなどを含む。) 』 と判断したときに戦争を開始します。
 よって、国家は、攻め込まれない程度に大きな軍事力を、攻め込めない程度に小さな軍事力を持つことになり、ある意味これは国際的な義務でもあります。
(無論、適切な規模というのはその国の外交や経済の状況に大きく依存します)
 つまるところ、外交的・軍事的考察無しに軍縮し、適切な軍事力を下回りすぎれば戦争を誘発します。

また、日本を占領しても利益が出ない、という議論ですが、別に占領する必要は無いのです。
ただ今世界は生産過剰、市場の取り合い合戦が続いております。
なので、沖縄周辺の商船を邪魔するだけで世界市場から日本製品を排除し、中国製品のシェアを伸ばす余地が生まれます。
日本が経済活動の要であるからこそ、それを破壊したときの利益は大きいものとなります。
今はまだ、中国の技術レベルが低いため、そのような行為からそれほど利益は出ませんが、中国の産業が発達し、日本と競合するようになれば、『日本を破壊すればシェアが奪える』という魅力から逃れるのは不可能になるのではないのでしょうか?

無論、今の自衛隊の規模が適切であるとは必ずしも言えません。未だ削れる余地があるかもしれません。
しかし、削った結果、戦争が発生する確率がどう変わるのか、少し、そのことについて想いを馳せて欲しかっただけです。

投稿: El-fire | 2010/06/04 2:24:58

> ただ今世界は生産過剰、市場の取り合い合戦が続いております。
なので、沖縄周辺の商船を邪魔するだけで世界市場から日本製品を排除し、中国製品のシェアを伸ばす余地が生まれます。

 これを言い換えた
 「ただ今世界は生産過剰、市場の取り合い合戦が続いております。
なので、福建省周辺の商船を邪魔するだけで世界市場から中国製品を排除し、日本製品のシェアを伸ばす余地が生まれます。」
 という趣意を、中国の「先軍主義ブロガー」がネットで主張して、軍備増強の根拠にしているのかなあ。

 また、中国にとってがロシアが、ロシアにとっては中国がそれぞれかなりな脅威(軍事衝突もしているし)でしょうから、どの国も軍事費を伸ばすのはそれぞれの国にとって合理的な選択だ、という結論が出るのですかね。
 それならば、在日米軍はアフガンなど中東で作戦行動をすることに、日本や東南アジア諸国は反対して、「米軍はアジアを留守にすべきではない」と主張すべきじゃないのかなあ。

投稿: kuroneko | 2010/06/04 11:06:16

nxu さん、

> 軍事費の削減という軍事のことを話題にしているのに、軍事より重要なことなんてあるのでしょうか。
> たしかに外交と軍事は車輪の両輪でありそれぞれを欠かすことの出来ない重要な分野です。それぞれが重要なのに軍事より○○が重要などと言うのはおかしくないでしょうか。

たぶん、ここから答えるのがいいですね。

軍事的な脅威を説く人と違って、私は、私たちの国が直面している一番大きな脅威は経済的なものだと考えています。中国はアフリカとかラテンアメリカに多額な投資をし、技術援助をし、開発支援を行なっています。世界各地で中国語教育のための学校を作っています。先日のクリントン米国務長官の訪中時には、アメリカから中国に4年間で10万人の留学生を派遣することが合意されました。これらは、まさに現在進行形で日本の「国力」の相対的低下を引き起こしています。第二次世界大戦後、開発途上国への支援などを通じて築いてきた日本の国際的な地歩を守るために必要なのは強大な軍隊ではありません。

国の予算は限られています。私は財政全体を考えて、軍事予算を見直すべきだと思ってこの記事を書きました。その論議の中では、国を動かしていくにあたって優先順位が高いのは何かを考えることのほうが、軍事的な詳細よりもはるかに重要です。

楽観的すぎると言われるのかもしれませんが、既に始まっている経済的な弱体化に比べて、日本が軍事的に攻撃を受けるというのは単なる「可能性」のレベルの話です。それも、かなり小さな可能性だと思います。中国だけでなくロシアと北朝鮮についても考えろということですが、ロシアは、コーカサス地方の少数民族問題を燃え上がらせないことや旧ソ連の国々への影響力の保持で手一杯だと思います。北朝鮮に関しては、私が4年あまり前に書いた「消える大陸」という記事と、その最後の部分にリンクが貼ってある日本周辺の写真を見てもらうのがいいかもしれません。もし私の意図が伝わらなければ、また別の機会に説明します。
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_7818.html
中国が一番心配な気がしますが、やはり、戦争とかを始めたら、チベットやウイグルの問題がどう動き出すか分からないので、あまり荒っぽいことには手を出せないだろうと思います。それに、これも素人考えだと言われるかもしれませんが、中国が台湾を「統合」しようとするより先に日本に攻撃をしてくるなんてこと、ありえるでしょうか。繰り返しになりますが、それらは「可能性」としては存在し、そのために何らかの防衛策を考えておこうというのが悪いことだとは思いませんが、今、ちゃくちゃくと進められている中国の経済的影響力の強大化とは別の話です。そして、私たちがまず取り組まなければならないのは、経済面や文化面で日本の「影が薄くなる」のをいかに食い止めるかです。もちろんそれは、中国の邪魔をすることではなく、日本が積極的に世界に貢献していくことでなされなければなりません。

> 今の中国は一党独裁国家ですが、中国で従業員が(大規模に)反発するなんて聞いたこと無いですよね。

この部分は驚きをもって読みました。ホンダの工場の話が報じられたばかりですよ! 数年前から、特に広東省などで争議が多発していると思います。

> 意味がよくわからないので詳しく説明して頂けないのでしょうか。
> 主権国家が主権を維持する行動に出ることがおかしいのでしょうか。

私が書いたのは「主権を維持する行動に出る」(=軍事行動?)かどうかではありません。従来、国家主権とされていたものの一部を地域共同体に移管するということです。

通貨の発行は通常、国家に委ねられていますが、EU加盟国の多くでは、これを地域通貨のユーロを採用することによって、主権の一部を譲り渡しています。もしギリシャが独自通貨のドラクマを使い続けていたら、経済は完全に崩壊していたでしょう。しかし、ユーロを採用していたことによって、時宜にかなった資金供給を得ました。これがうまくいくかどうかはまだ分かりませんし、どんな地域共同体でも実現可能であるかは分かりませんが、主権の一部を明け渡すことによって、経済の安定がもたらされることがあるわけです。

法律の制定も国家主権の範疇に入るものですが、EUでは、加盟国でどのような法律が許されるかの枠組みを定めています。例えば、国が全く自由に法律を作ることができる場合、多数決による民主主義では、少数民族など少数者の権利が十分に守られる保証はありません。しかし、地域全体で人権憲章が定められていて、少数民族の差別が禁止されていれば、そのような法律は作れなくなり、少数者の権利がよりよく保護されることにつながります。

世界のどこでもそういう地域共同体が可能であるかは分かりませんが、これから、そのような道を希求する国は増えていくと思います。アフリカ連合では、毎年「アフリカ合州国」の設立に向けた方策が討議されていますし、今年、南米のいくつかの国が貿易用に共通通貨を確立しました。以下の記事に書いたことがありますので、見てみてください。
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_aa2d.html
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-b35b.html
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-c9af.html


El-fire さん、

> 簡単に言って、戦争は大量殺人であり、戦争は引き起こしてはならないものであります。

私も、とても共感できる言葉です。

> しかし、軍縮をすればいいかと言うとそうではありません。

記事の中では、私は「軍縮」という言葉を避けました。たぶん専門家の使い方とは違うのだと思いますが、私の中では、「軍縮」というのは明確な平和構築のための一歩と予め位置づけられた軍備の縮小に限られているんです。だから、予算が足りないから自衛隊員を減らしましたというのでは、わたし的には「軍縮」とは呼ばないのですよ。別の言い方をすれば、私は、単に防衛費を減らしたからと言って、それが必ず平和に貢献するとは思っていません。

> 別に占領する必要は無いのです。

それも分かります。でも、徹底的に破壊したり占領したりしなくても、軍事攻撃をした段階で、国際社会から厳しい批判を受け、制裁措置が発動されると思います。だから、実際に攻撃が行なわれる可能性は非常に小さいと思います。

> 削った結果、戦争が発生する確率がどう変わるのか

これはどういうふうに計量化するのでしょう。削るか削らないかで確率が上下すると言われても、もともとの確率をどのように把握すればいいのかがピンと来ないので、評価のしかたが分かりません。「今後20年以内に東海地震と東南海地震が起こる確率はx%」「今後5年以内に原子力発電所で事故が起こり、人命が失われる確率はy%」みたいなのと比べればいいのかな。そういう数字なら、どこかにありそうですね。


kuroneko さん、

中国は、最近はインドとの間がかなり緊迫してるみたいですよ。ジャンムー・カシミール地方の実行支配線近辺ではいざこざは日常的なものみたいだし、大統領が訪中したりしているので、戦争にはならないと思いますけど。


みなさん、

これだけ書いたら、疲れてしまいました。反論とかあるだろうと思いますが、基本的に「議論はしない」を方針としていますので(プロフィールのページをご覧ください)、ご理解をお願いします。

投稿: うに | 2010/06/04 19:21:40

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