1984年12月、インドのボパールで米ユニオンカーバイド社(その後ダウ・ケミカル社が買収)の工場から有毒ガスが漏れ出し、近隣の住民が多数、中毒死した事件を覚えていらっしゃるでしょうか。あの事件で初の判決申し渡しが7日、行なわれました。8人の被告(7人が存命)が有罪となりました。しかし、最長で2年の刑と数十万円程度の罰金が命じられただけです。四半世紀を経てたどり着く正義としては、非常に物足りないものだと言えるでしょう。
これを書いている時点で、日本の新聞での報道は共同通信の配信する「印地裁、米化学大手幹部に禁固刑 ガス事故、26年ぶり判決」だけのようです。当時、日本でも多くの人に衝撃を与えた事件ですから、ぜひとも朝刊には報道を載せてほしいと思います。
亡くなったかたがたには謹んでご冥福をお祈りし、今もなお後遺症に苦しむかたがたに何か支援をしていくことを心に決めながら、事件の本質ではない部分で少しばかりメモを取らせていただこうと思います。
共同通信の記事は、第1段落で「住民ら約2500人が死亡したとされる」と述べた上で、後ろから2つ目の段落で「事故を調査している非政府組織(NGO)は、約2500人とするインド政府の死者数の推計は過少と主張。死者は最大3万人で、何らかの身体的被害を受けた人は10万人以上としている」と補足説明しています。また、被告が控訴するだろうと伝えています。
タイムズ・オブ・インディア紙 "Bhopal gas tragedy: Bail granted to 7 convicts" は死者は「数千」とだけ述べ、事故の被害による死者は現在も増え続けていると書いています。こちらは、被害者や遺族が控訴する構えだとしています。また、有罪となった被告らが既に保釈金を払って保釈されたことを伝えています。
ニューヨーク・タイムズ紙 "Indian Court Convicts 7 in Bhopal Disaster" は、3,000人が即死、それに加え2,000人が死んだと思われるとし、被害を受けた人は578,000人にのぼるとしています。「世界最悪の事故が交通事故なみに扱われてしまった」という被害者側の弁護士の発言が引用されています。
AFP電 "Guilty verdicts 25 years after India's gas disaster" は、インド政府発表の事故後3日間の死者数が3,500であるのに対し、国営の保健機関が同じ時期の死者数を8,000ないし10,000、1994年までの累計死者数を25,000と見積もっていることを紹介しています。ロイター電 "Indian court convicts 8 in Bhopal gas disaster" も3,500と25,000という数字を紹介しています。
AP電 "Indian court convicts 7 in Bhopal gas tragedy" は、4,000人が即死し、合計15,000人が死んだとされる、と書いています。
私は5年前、アムネスティ・インターナショナルの挙げた数字を引用して、2万人が亡くなったと書きました。こうして見ると、具体的な数字を挙げるのは、ちょっと不用意だったかもしれません。率直なところ、死者を数えることがこんなに難しいのだというのは、私にとっても驚きでした。
ボパールの話とは関係ないので、あえて名指しはしませんが、「犠牲者数があてにならない」とか言って、自分たちの歴史に免罪符を与えている人たちも、この驚きを共有してくれればいいのですが。
ボパールの少女の写真は Ascanio さんが CC-by-nc-sa で公開しているものです。