占領と大学
ISRAEL: Controversy over upgrading college to university - イスラエルによって占領されているパレスチナのヨルダン川西岸地区で、ユダヤ人入植地にある単科大学が総合大学に格上げされることになり、抗議の声が上がっている。
場所は西岸地区の北西部にあるアリエル入植地。パレスチナの土地の中に隔離壁のルートが大きく食い込んでいるところだ(地図)。入植地のうち、4番目に大きいとされている。ここにある Ariel University Centre (2007年からの名前。かつては Ariel College と呼ばれていた)を正式な university にすることを、先週、バラク防衛大臣が承認した。占領地にあるので、イスラエル軍が統括する機関であり、教育相ではなく防衛相の承認によるわけだ。実はイスラエル国内の高等教育機関を統括する高等教育審議会は、アリエル大学の格上げに反対していた。右翼のわが家イスラエル党がかけた圧力に労働党のバラク防衛相が屈した形のようだ。
アリエル大学では、現在約11,000人の学生が学んでいる。計画では、学生数を2倍にし、施設を3倍に拡大する予定だ。アリエルの入植者は18,000人程度なので、ここに大きな大学が必要というわけではない。必要だから作るのではなくて、入植地の恒久化、いずれ来るパレスチナ独立に向けて、ここはイスラエルの領土として残すのだと主張するための既成事実作りであることは明らかだ。イスラエル国内の大学関係者などからも、「占領を学問の領域に持ち込むものだ」などといった批判が出されている。ここらへんの事情は、今回の決定に先立ってラマラ・オンラインなどに掲載された Jonathan Cook さんの記事 "Israel creates first ‘army-owned’ university" に詳しい。
「占領を学問の領域に持ち込む」といった観念的な理解以前に、検索していたら、最近、アリエル大学に通うアラブ系のイスラエル人が通学バスの中でアラビア語で話していたら、バスを降りるように命じられたというニュースを見つけ("Ariel College student says taken off bus for speaking Arabic")、その時点で十分に悲しくなった。入植地ってどんなところなのだろう。町全体が在特会みたいな感じなのかな。
入植地の写真は andydr さんが CC-by で公開しているもの。アリエルのものが見つけられなかったので、これはヘブロン近郊の写真。
2010年 2月 9日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
>町全体が在特会みたいな感じなのかな
こ、怖すぎる…。
投稿: kuroneko | 2010/02/09 8:33:23
今、ビルマで迫害されている「ロヒンギャ」という人びとの
存在について考えています。
彼らは、イスラームを信奉する人びと=ムスリムですが、
彼らはムスリム人とは呼ばれずに、「ロヒンギャ族」と
呼ばれたりしています。
今日のエントリーを読んで、ふと、気づきました。
もしかしたら、ユダヤ教を信奉する「ユダヤ人」や
国家としてのイスラエルやそこに住むイスラエル人など
がロヒンギャを考える上でのヒントになるのではないか、と。
投稿: ウダ | 2010/02/09 20:28:24
kuroneko さん、
だめですよ、ひるんじゃ(笑)。体を張ってでも闘うんです!
ウダさん、
うーむ、他のさまざまな少数民族問題と違って顕著にロヒンギャとパレスチナが似ているかどうかは分かりませんが、イスラエルとタンシュエ政権は軍事的にもつながっているようですし、支配を貫徹する意思みたいなものは、たしかに似ている感じがしますねえ。
また近々、どこかに行かれるのだと思いますが、お気をつけて。
投稿: うに | 2010/02/09 21:34:47