« 2009年12月 | トップページ | 2010年2月 »

2010.01.31

チベット人歌手に有罪判決

12月の初めに、Tashi Dondrup (漢字表記は扎西东知)さんというチベットの歌手が「反動的な歌曲を歌った」罪で逮捕されました(当時の英タイムズ紙の報道)。チベット亡命政府に近い Phayul の発信する記事 "Tibetan singer sentenced to over a year's imprisonment for "subversive songs"" によれば、Tashi Dondrup さんにこのほど懲役1年7か月の有罪判決が出ました。

Yangpachen Valley, by mckaysavageタシ・ドンドゥップさんは昨年「傷跡のない拷問」(没有伤痕的酷刑)というアルバムを発表し、2008年春のチベット弾圧に抗議しました。そのことが体制転覆的だとされたようです。彼は「1958-2008の恐れ」(1958-2008的恐惧)という歌も歌っているとのこと。

逮捕された時のことが「チベット式」という日本語のブログで取り上げられていて、その中に「傷跡のない拷問」がネット上で聞けると書いてあるのですが、残念ながら私のところでは聞けませんでした。

YouTube で検索したら、いくつかビデオがありました。なんか北島三郎みたいな節回しで、「これで体制転覆的?」といった感じでした(英語報道で subversive という語だったもので。中国語報道で見た「反動的」という形容詞のほうは、音の感じからすると、良かれ悪しかれ分からないでもありません)。たぶん、歌詞がすごいのでしょう。

中国における芸術家の表現の自由の狭隘さを危惧するとともに、チベットに対してより高度な自治が与えられるよう求めたいと思います。

賛同者があまり集まっていないみたいですが、彼の釈放を求めるウェブ署名もあります。

写真はチベットの雄大なヤンパチェン渓谷。Mckaysavage さんが CC-by で公開しているものです。真ん中に見えるのは遊牧民の住居だそうです。行ってみたいなあ。

このブログで

2010年 1月 31日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2010.01.30

時間的余裕

Five-day limit for post-sex pill - イギリスでの調査によると、イギリスで昨年認可された緊急避妊薬 ulipristal acetate は、セックス後5日以内に服用すれば、十分効き目があることが分かったそうです。

PlanB, by °Florian緊急避妊薬(ECP)としては levonorgestrel を成分とするものが一般的ですが、ulipristal のほうが若干よく効くようです。被験者1,600人ほどの調査で、セックスの後3日以内に服用した場合、levonorgestrel の場合は妊娠に至ってしまった確率が2.6%、ulipristal の場合は1.8%でした。セックスの後4日ないし5日後に服用した場合は、対象数がはるかに少ないので確定的なことは言えないものの、levonorgestrel では3件の妊娠が起こりました。ulipristal ではゼロ。副作用はどちらの薬でも同じような程度だったとのことです。

イギリスでは、levonorgestrel は16歳以上なら処方箋なしで購入でき、ulipristal は必ず処方箋が必要だそうです。また、後者は他の緊急避妊薬に比べかなり割高だと書いてあります。

以前、緊急避妊薬のことを書いた時には、日本では ECP は認可されておらず、通常のピルで代用しているという話だったのですが、その後、状況は改善されたのでしょうか。

道端に落ちていた緊急避妊薬の包装。°Florian さんが CC-by-sa で公開している写真です。

このブログで

2010年 1月 30日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.29

アウシュビッツの教訓

去る1月27日はアウシュビッツ強制収容所が連合軍によって解放されてから65周年の日でした。地元ポーランドのカチンスキ大統領やイスラエルのネタニヤフ首相らが参列して追悼式典が営まれました。

Auschwitz - Birkenau - Gates of Hell - barbed wire, by harshilshah100Arab MP to attend Holocaust memorial - この式典にイスラエル議会(クネセト)の議員代表団の一員としてアラブ系の議員が参加したことが論議を呼んでいます。アウシュビッツに赴いたのはイスラエル共産党(アラブ系市民とユダヤ系市民の両方からなる唯一の政党だとのことです)委員長の Mohammed Barakeh さん。アラブ系議員が参加することによって、ホロコーストを政治利用しようとするシオニストたちのやっていることに正当性を与えてしまうことを危惧して、彼の出席を批判する声が強いようです。

バラケ議員は「いかなるレイシズムやジェノサイドにも反対であるという私の極めて明確な立場を示すためには、行けるところにならどこにでも行くのが私の責務だ。ホロコーストという人類の、とりわけユダヤ人の被った大きな悲劇の教訓とは、そのような犯罪が許される余地はないということでなければならない」と述べ、現在イスラエルがパレスチナの人々に対して行なっていることの犯罪性、欺瞞性と抗うためにもアウシュヴィッツに行くことは正しいのだという決意を語っています。

彼の信念がパレスチナの地の正義と平和となって実を結ぶことを祈る、としか言いようがありません。

話が非常に卑近になるのですが、中国の人権問題、とりわけチベットとかウイグルの問題をめぐる言説が私たちの国では国粋主義者たちの独壇場となっていて、民族的な偏見を嫌う者には入りづらいという状況を思い出しました。バラケ議員なら、迷いもなく発言していくだろうな、と思います。私はそういうふうになれるでしょうか。

アウシュビッツの写真は harshilshah100 さんが CC-by-sa で公開しているもの。建物ではなく、前景の鉄条網に焦点が合っていることに私は戦慄しました。

このブログで

2010年 1月 29日 午前 12:00 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2010.01.28

平和活動家に定年はない

For war protester Eve Tetaz, 78 is hardly the time to retire - ワシントン・ポスト紙の記事です。ワシントン DC で長年、反戦平和のための活動をしているイブ・ティータズさんを紹介しています。ティータズさんは78歳。過去5年ほどの間に、デモや抗議行動に参加して、21回逮捕されました。

Eve Graveyard, by Lori Perdue年寄りなので、大概は無罪になったり、罰金刑になったり、禁固刑でも1日とか2日とかになりましたが、今回の逮捕では、禁固25日になりました。一年半の間に逮捕が繰り返されれば、あと50日が加算されます。昨年、議会上院の外交委員会の傍聴席で抗議行動を行なったことに対する罰です。

ベトナム戦争のころから反戦運動に関わってきたティータズさん。現在は Witness Against Torture というグループの一員として、イラクとアフガニスタンでの戦争、グアンタナモ収容所での拷問などに抗議の声をあげています。夫は既に亡くし、子どももおらず、しがらみが少ないので、ティータズさんは自分のことを「理想的な活動家」だと自認しています。以前は教師をしていました。戦争では、前に自分が教えていたような貧しく恵まれない家庭の子どもたちが多く犠牲になるとの思いが、彼女を平和運動に向かわせているようです。

日本の市民運動でも、かなりお歳を召したかたが頑張っていらっしゃいますよね。老いも若きも頑張りましょう! お腹が出っ張ってきた私も頑張ります!

ティータズさんの写真は Lori Perdue さんが Copyleft ライセンスで公開しているもの。Free Art License に従って自由な使用が認められています。撮影は2007年3月。

このブログで

2010年 1月 28日 午前 12:00 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2010.01.27

アースアワーまであと2か月

World climate event set for March 27 - 今年もアース・アワー(Earth Hour)がやって来ます。今日からちょうど2か月後、3月27日の土曜日。世界各地で現地時刻の午後8時半から60分間、電気を消して、地球環境について考えるイベントです。

Earth Hour 2010オーストラリアでアースアワーが始まった2007年には、そんなものがあったなどとは知らずに過ごし、2年目は直前に知り(地球のための一時間この国を地球の時間の流れに載せよう)、昨年は3月の初めに知りました。そして今年は1月中にこうやって紹介記事を書くことができました。昨年は日本のテレビのニュースでも見たし、記事にコメントやトラックバックをいただくこともできました。だんだん定着してきている感じです。

残念ながら、今年も今のところ、日本でのイベントはリストに載っていません(公式サイト、まだほとんど何もありません)。一人ひとりの家で電気を消して、ひっそりとするのもいいけど、やっぱり、高層ビル街などで次々と電気が消されるのを目の当たりにして、たくさんの人といっしょに「おおーっ」とか、どよめきたいです。

ロゴは Earth Hour Australia のサイトから。自由にブログ等に貼り付けていいそうです。

今日のボイントをもう一度。今年のアースアワーは3月27日(土)午後8時30分です。

このブログで

2010年 1月 27日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.26

美ら海に基地はいらない

一昨日の名護市長選挙で稲嶺進候補が当選し、米軍普天間飛行場の移転受け入れをよしとしない名護市民の意思が明確に示されました。投票終了直後に当選確実が出される鮮やかな勝利でした。

辺野古の街, by @としゆき名護の人たち、辺野古の海への基地移転阻止のために闘っている沖縄の人たちに、私からもお祝いと感謝の言葉を伝えたいと思います。おめでとう。そして、言うべきことを言うきっぱりとした態度を世界の私たちみんなに見せてくれて、ありがとう!

選挙結果を受けて、鳩山内閣では、平野官房長官が「結果は民意のひとつであるだろうが、これで辺野古が選択肢から消えたとは考えない」といった趣旨の発言をしました。それを考えると、まだ喜んではいけないように思えます。

日米合意が遵守されなければ普天間基地のグアムへの移転自体がなくなるとする米政府筋からと称するニュースも聞きました。それならば、「そうですか、では日米安保自体を白紙にして考えましょう」と鳩山首相には言ってほしいです。憲法の理念に忠実でありつつ安保を解消するというのなら、私も力の限り応援します!

辺野古の街の写真は、@としゆきさんが CC-by-nc-nd で公開しているもの。昨年の11月撮影。

このブログで

2010年 1月 26日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (3)

2010.01.25

監獄からポッドキャスト

Podcast project shows reality of life behind bars - ドイツ西部、北ライン・ウェストファーレン州の刑務所では、服役中の囚人たちがビデオのポッドキャストを発信している。刑務所内部で送る生活の本当の姿を壁の向こうに見せるのが目的だ。彼らの作ったビデオは Podknast: Wie es wirklich ist (本当の姿)というサイトで見ることができる。

Kayla Softly behind bars, by tibchrisボランティアでこの企画に参加しているのは、交通違反のような軽微な罪の人から殺人のような重い罪に問われた人まで、多様。彼らにとって、牢獄での生活は、想像以上につらいものだった。そのことを世の人に知らせれば、犯罪の抑止に効果があるかもしれない。作り手も当局の人も、そう望んでいる。また、ビデオ撮影やインターネットの技術を身につけることで、社会復帰への備えにもなる。チームを作って作成するので、協調心も育成される。

刑務所にいる人にこんなことをさせるなんて、税金の無駄遣いだという声もあるにはあるらしい。しかし彼らの出所後のことまで考えれば、全体的にはいいお金の使い方だろうという見方が優っているようだ。

写真は tibchris さんが CC-by で公開しているもの。芸術点でこの写真を選んだのだが、「刑務所なんか来るところじゃない」というメッセージの面からは、こちらの写真のほうがよかったかもしれない。差し替えようか。

このブログで

2010年 1月 25日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.24

戦争と数

"New study argues war deaths are often overestimated" (前半後半) - カナダのサイモンフレーザー大学が発表した The Human Security Report 2009 という報告書によると、戦時の犠牲者数は誇張して伝えられる傾向があり、例えばコンゴ民主共和国の内戦による死者は、一般的に言われる540万人ではなく、おそらくその半分ぐらいだろうとのことだと伝えるクリスチャン・サイエンス・モニター紙の記事。同様に、ダルフールやイラクでの犠牲者数についても精査が必要だと報告書は述べているようです。

Soldier's wife, by Julien Harneis犠牲者数は人道支援を行なうための政治的な言説の中で膨れ上がってしまう他、そもそも有時の状況下で正確な把握が難しいこと、戦乱がなかった場合の統計も満足に得られない場合が多いことなどによる、とのことです。まあ、どれも当たり前みたいな気もします。

報告書はまた、千人以上が犠牲になるような大きな戦乱が減り、戦争や内戦で犠牲になる人の数も減少していると結論づけているようです。犠牲者の減少には、平時の支援により衛生状態が改善したことが貢献しているのではないかという分析が提案されているとのこと。

もちろん、人道に関する国際法が根付いてきて、昔のような残虐なことは許されなくなってきたこともあるのだと思います。そして何よりも、平和を望み、戦争を悪だと考える人々が増えたことによるのでしょう。

コンゴ東部の国内避難民の写真は Julien Harneis さんが CC-by-sa で公開しているものです。

このブログで

2010年 1月 24日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.23

いい親

Same-sex couples can be effective parents, researchers find - 同性婚のカップルに育てられた子どもは、男女のカップルに育てられた子どもと比べて、自尊心や社会への適合の面でも学校の成績の面でも全く遜色がないという調査結果を紹介する USA Today の記事。子どもを育てるには女親と男親の両方いたほうがいいという伝統的な考え方には根拠がないことが示されたとしています。

Family Picture, by LizaWasHere調査は直接行なったのではなく、さまざまな形の親子に関する81の研究をまとめたものだそうです。Judith Stacey さんと Timothy Biblarz さんによる "How Does the Gender of Parents Matter?" という Journal of Marriage and Family (私の職場の図書館では購読していないらしく、読めませんでした。お金を払えば読めるらしいんだけど、どうせ読んでも分からないし)最新号に掲載された論文。この号はジェンダーと子育ての特集号のようです。この論文に対する反論もいっしょに載っているとのこと。

性的な指向を問わず、子どもに対して素敵な態度を取る人もいるし、親をやるのには向いていないなあと思うような人もいますからね。

同性婚カップルとその子どもたちの写真は LizaWasHere さんが CC-by-sa で公開しているもの。Flickr の 2 mommies / 2 daddies の写真集からたどって行って見つけました。

このブログで

2010年 1月 23日 午前 12:47 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.22

カーブル発電所

Report slams U.S. for building power plant Afghans can't run - アフガニスタンのカーブルにアメリカの援助で発電所が建てられ、完成間近になっているが、アフガニスタン政府にはその発電所を動かすのに必要なディーゼル燃料を買うお金がなく、発電所建設は大きな無駄に終わりそうだというマクラチー新聞社の報道です。

Kabul winter streets, by TKnoxBカーブル発電所の建設はアメリカ政府の国際開発庁(USAID)のもとで、アメリカの建設会社2社に委託されて行なわれたもの。工事自体がかなり予算超過になっているようです。国際開発庁は、当分の間、ディーゼル燃料の購入を肩代わりする方針のようです。発電所建設を任された2社は、この他にもアフガニスタンの送電線整備事業にも携わっていますが、それも遅れぎみかつ予算超過。政府の監視の甘さが指摘されています。

地元ではこの発電所は「カルザイの外套」と呼ばれているそうです。カルザイ大統領の懐は暖かく保つが、市民たちには恩恵がない。現在、アフガニスタンでは10%の人にしか電気は来ていないと記事は書いています。アメリカのブッシュ前大統領はアフガン支援の成功例としてこの発電所のことを挙げていたそうです。結局は、ここでも、お金持ちの国の企業が私腹をこやすだけだったというお話でした。

私たちにとっても、決して他人事ではありません。国際支援、特に大規模な建設プロジェクトみたいなものには注意したいですね。今回の無駄は政府の監査によって明らかになったとのことで(その報告書へのリンクも記事中にあります)、まあ、こういうことが分かるようになっただけでも、政権を変える価値があったのかもしれません。

冬のカーブルの美しい写真は TKnoxB さんが CC-by で公開しているもの。ちょうど5年前、2005年1月21日の撮影。きっと、今日のアフガニスタンも厳しい寒さの中にあるのでしょう。行く手に見えるのはダルラマン(Darul-Aman)宮殿址ですね。

このブログで

2010年 1月 22日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.21

ベトナムで人権活動家に有罪判決

Vietnam Convicts Democracy Activists of Subversion - ベトナムのホーチミン市人民裁判所で20日、人権派弁護士レ・コン・デイン(Le Cong Dinh、ベトナム語表記は Lê Công Định)さんらに国家転覆を図った罪(ベトナム刑法79条)で有罪判決が下されました。レ・コン・デインさんの刑期は5年。極刑の可能性もあるとされていただけに、有罪という判断は不当だとは思うものの、ひとまずは、よかったと言えるでしょう。

Le Cong Dinh言論の自由をめぐる裁判などで弁護にあたってきたレ・コン・デインさんが罪に問われたのは、一党独裁の撤廃を求めて、民主党を結成して活動したこと。海外に拠点を持ち、ベトナム政府が「テロ組織」だとする Viet Tan (ベトナム改革党)などとの関係も問題視されたようです。

判決言い渡し前に出た AP 電 "Western ideas 'led to attempt to overthrow Vietnam government'" によれば、デインさんは公判で、「私は留学中に民主主義や自由、人権に対する西側の姿勢に影響を受けた」と語ったとされています。Western という言葉を、私は最初、アジアと対をなす「西洋の」という意味で理解したのですが、考えてみれば、ベトナムが採用している共産主義というのも西洋から来た概念ですよね。東西冷戦などと言う時の「西」なのかな。

私と同じ奨学金をもらって留学していた人だということなので、これから、応援していきたいと思います。

Le Cong Dinh さんの写真は人権擁護団体 Font Line のサイトから。ページの下に CC-by-nc-sa である旨、記されています。

このブログで

2010年 1月 21日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2010.01.20

ガザの心はハイチに向かう

一年前、パレスチナのガザ地区はイスラエルによる大規模攻撃を受けました。武力攻撃がおおむね終息した後も、イスラエルによる厳重な封鎖が続いており、ガザでは食料や衣料品は全く足りていません。建築資材の搬入が認められていないので、建物や道路の復興も進んでいません。市民のほぼ半数が失業している状態です。

Kids, Gaza, by Marius Arnesen Gazans Collect Donations To Haiti - そんなガザでも、大地震に見舞われたハイチの人々への募金活動が始まっています。貧しく、打ちひしがれた境遇にはあるが、平和と生命を尊ぶ民として、人道支援の一端を担いたい。「別の種類の地震」を経験したばかりであるから、ハイチの被災者の気持ちがよく分かる。助けになりたい。記事にはそんな言葉が並んでいます。

優しすぎるよ、あなたたち。

瓦礫の中のガザの子どもたちの写真は Marius Arnesen さんが CC-by-sa で公開しているもの。イスラエルのガザ侵攻から3か月経った昨年4月の撮影。

このブログで

2010年 1月 20日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.19

今日は政治ブログ

国連人道問題調整部(OCHA)が運営する Relief Web のサイトに、ハイチ地震への各国の支援状況がまとめられています。英ガーディアン紙の Data Blog からのリンクで知りました。1月18日夜の表から上位の部分をコピーしておきます。

支援者支援額(米ドル)割合
アメリカ54,599,57232.8 %
国連中央緊急対応基金(CERF)25,000,00015.0 %
民間 (個人、団体)20,125,17112.1 %
オーストラリア8,992,8075.4 %
日本5,327,1543.2 %
ノルウェー4,939,3413.0 %
国連諸機関の用途不指定金から割り当て4,654,2052.8 %
中国4,405,2862.6 %
スペイン4,329,0042.6 %
欧州委員会(人道援助局、ECHO)4,329,0002.6 %
スウェーデン3,955,9192.4 %
デンマーク3,493,0482.1 %
ドイツ3,463,2042.1 %

というわけで、日本はアメリカ、国連、民間からの寄付、オーストラリアに次ぐ5位、国だけで見れば3位のようです。わりと健闘していると言えるのかもしれません。地震直後は出足がにぶくて、中国の半分ぐらいしか支援を表明しておらず、10位にも入っていなかったので、はらはらしたのですが、だいぶ盛り返してきたということでしょう。まあ、順位がどうこうという問題じゃないんですけど。

テレビの報道とかを見ていても、こういう面にはあまり触れていないような感じがするので、取り上げてみました。前はもっと災害時に支援額とか話題になっていた気がするんだけどな。政権が代わって、広報が下手になったのかも。

Sunday morning 005, by DrGulasでも、530万ドルって、4億数千万円ですよねぇ。小沢さん一人で出せそうな、あるいは鳩山さんだったら痛くも痒くもない金額かも。友愛の精神で、もっと支援してほしいです。自民党も、「疑惑だ、政局だ」などと騒ぐより、「何万人も亡くなっているのに、世田谷にちっぽけな土地が買える程度の額を出すだけで、失礼だとは思わないのか」とか「阪神淡路大震災を経験した国として、恥ずかしくはないのか」とか言ったらどうでしょうか。

フランスイタリアが表明している債権の放棄を、日本もやってほしいです。

あと、最初の湾岸戦争のころだったか、アメリカから「日本は金は出すが兵隊は出さない」と言われたとかいうのがトラウマになっているらしく、今回も自衛隊を派遣するようなことを防衛大臣が言っていますが、もうちょっとよく考えてから判断してほしいです。

現地では緊急に医療が必要とされているので、自衛隊の医師が一番早く送れるというのなら、それはそれでいいのだと思いますが、兵隊のかっこうをした人たちを送って、いつも喜ばれるとは限りません。今日もアメリカ軍が「仕切って」いるようですが、それへの反発は強いはずです。また、地震前のハイチでは、国連の治安維持部隊に対しての評価は非常に低いと聞いていました。地震後、現地から Twitter で情報を送り続けてきた人が、こう書いています。

「空に飛行機やヘリコプターがたくさんいるのを見ると、二度の侵略の時を思い出す。今回は違うけど。」(@RAMhaiti

どういう支援が望ましいのか、私たち一人ひとりが考えると同時に、始まった国会でも早急に知恵を絞ってもらいたいと思います。

写真はハイチ在住の DrGulas さんが CC-by で公開しているもの。一週間ほど前までは、田舎で見た動物など、のどかな写真が並んでいるのですが、ここ数日は病院の写真などばかりです。“ある日を境に…” それは、いろいろな時代に、いろいろな国で、人々が共有してきた普遍的な経験のような気がします。

このブログで

2010年 1月 19日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.18

ギャングの街を行く

旅慣れた友人たちに比べれば、私などひよっこのようなものですが、このブログにも書いてきたように、私もよく旅に出ます。旅先では名所旧跡だけでなく、普通に人が住んでいるところを歩くようにしています。南アフリカインドでスラム街のツアーにも行きました。

ガイド付きのツアーでスラムを見て面白いのかと言われそうです。たしかに自分の力で行ったほうがずっといい経験になると思うのですが、私は一人でそういうところに出かけて行って、ひったくりに遭ったこともあるので、ある程度の妥協をしなければと考えています。

Los Angeles graffiti, by lavocado@sbcglobal.netこの都市のスラムは危なそうだから行きにくいなあと思っていた場所があります。アメリカのロサンゼルスです。ところが、"For $65, tourists get peek at Los Angeles gangland" という AP 電によると、ロサンゼルスの危険そうなギャング街をバスでめぐるツアーができたようです。

ギャング街と言っても、アル・カポーネとかそういうのではなくて、Crips とか Bloods とかの gangsta のいる街。いわゆる 'hood ですね。南 LA (悪名高い "South Central")の Florence-Firestone と呼ばれる地域などに行くようです。この地域は、最近ではラティーノ系の Florencia 13 というグループの縄張りになっているとのこと。

もちろん、このツアーについては賛否両論あるようです。ただ、ツアーを企画している元ギャングの人は、これは覗き趣味でやっているのではなく、ガイドの雇用を生み出したり、参加費をマイクロファイナンスなどの形で地域に還元したりするためのものなのだと主張しています。「『右手をご覧ください、クリップスのメンバーがいます。左手をご覧ください、クラックコカインを吸っている人が見えます』などといったことはやらない」という言葉が紹介されています。

今のところ、ツアーの開催は月1回ぐらいの見込み。予約、問い合わせ等は LA Gang Tours のサイトから。

Los Angeles の街の落書きの写真は lavocado@sbcglobal.net さんが CC-by で公開しているものです。

このブログで

2010年 1月 18日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.17

思いは神戸へ、ハイチへ

阪神淡路大震災から今日で15年。亡くなられた人たちのご冥福を祈り、生き延びて今日まで頑張って来られた人たちのご努力を讃えたいと思います。そして、ボランティア活動などで暖かく手を差し伸べた人たちに敬意を表します。

神戸市長田区 by masanao

震災後の2日目か3日目だったでしょうか、アメリカにいた友人から、「知り合いと連絡がつかないから、彼女の勤務先の電話番号を調べて、問い合わせてくれないか」とメールが来ました。電話して、そのかたの名前を告げ、「ご無事でしょうか」と聞いた途端、電話の向こうの人が息を飲んだのが分かりました。私もまた息を飲みました。

阪神淡路大震災 by 松岡明芳

1999年にあったトルコの大地震の直後に現地に入った神戸出身のフォトジャーナリスト、宇田有三さんは雑誌のインタビューに答えて、次のように語っています(Kobe G-Time 1999年10月号):「地元の新聞には、神戸のことが大きく紹介されていました。大地震の被害から、短期間でこれほどまでに立ち上がっていると。また、神戸での経験を生かした日本の救助隊の活動は、プロフェッショナリズムに徹しているとして、他国の救助隊から高く評価されていました」。「『神戸から来た』と言ったら、『おお、地震先進国の!』と言われました」とも。

このような会話がハイチでも繰り返されればいいのですけれど。残念ながら、今のところ、この目で神戸を見た私たちの視線は、なぜか、ポルトープランスには十分に届いていない気がします。

昨日のリストに追加。日本の NGO の中ではいち早く派遣を行なった AMDAクレジット・カード募金ができるようになりました

上の神戸の写真、1枚目は matanao さんが、2枚目は松岡明芳さんが CC-by-sa で公開しているものです。

このブログで

2010年 1月 17日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.16

ハイチ地震―写真とクレジットカード

カリブ海のハイチをマグニチュード7の地震が襲って、もう3日になります。日を追って首都ポルトープランスからの報道も増え、その壊滅的な状況が明らかになってきました。

国連(United Nations Development Programme)が CC-by ライセンスで現地からの写真の配布を始めました。

Haiti Earthquake, by Logan Abassi / The United Nations

Haiti Earthquake, by Marco Dormino / The United Nations

Haiti Earthquake / The United Nations

さまざまな団体で募金の受け付けも始まっています。ハイチ救援として用途を指定できて、クレジットカードで決済できる日本の団体としては、

などがあります。少しずつですが募金しました。国境なき医師団もクレジットカードでの募金を受け付けています(ここには毎月引き落としで送金しているので、今回は遠慮しました。ケチな私)。

郵便振替などでもよければ、選択肢はさらに広がると思います。このブログの左欄に、Twitter で教えてもらった主な募金先をまとめたページへのリンクをはっておきます。

ふだん、災害への義捐金の振り込みは、国内、海外を問わずにやっているのですが、今回は、私を含め日本の対応が遅くなったことを埋め合わせる意味で、日本の団体に託そうと考えています(いえいえ、愛国者なんて呼んでくれなくていいです)。

カリブ海の最貧国ハイチ。その危機に際して、世界有数の経済を誇る私たちの国がやれることはたくさんあるはずです。一人ひとりの市民だけでなく、企業からの惜しみない支援に期待したいと思います。

このブログで

2010年 1月 16日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2010.01.15

モンゴルが死刑執行停止

Mongolia leader calls for end to death penalty - モンゴルの Tsakhia Elbegdorj 大統領が死刑執行のモラトリアムを宣言。国会に向けて死刑制度の撤廃を呼びかけているそうです。国会は野党が多数派を占める「ねじれ」状態になっており、野党議員の多くは死刑存続派であるため、死刑廃止の法整備は難しいことが予想されるとのこと。ただ、大統領には減刑の権限があるため、死刑執行自体は今後しばらく行なわれない見込み。

Lone Tree - Mongolia Landscape, by tiarescottエルベグドルジ大統領は、「死刑制度はモンゴルの品位を貶めている」と語っていると記事は伝えています。同じように死刑制度を存続させている国の市民として、私も彼と同じように苦々しさを感じます。

記事は、「広くアジアでは、死刑はいまだに法制度の重要な一部分をなしている」という言葉で結ばれています。死をもって罪を贖わせるというのはアジア的な価値観なのでしょうか(うーん、そんなことないよね。昔はどこの国にもあったのだと思う)。

モンゴル西部の広野に立つ一本の木。Tiarescott さんが CC-by で公開している写真です。話の内容に合う写真がなかなか見つけられなかったのですが、生命の象徴としての木ならこの記事にふさわしいと思って選びました。

このブログで

2010年 1月 15日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.14

国際捕鯨委のようす

一部の国が捕鯨の継続に固執しているため、2007年以来、国際捕鯨委員会(IWC)は断続的に緊急会議を開催しています。会議は政府代表のみで開かれ、NGO などが参加していないため、話し合いのようすはあまり会議室の外には伝わってきません。

2 of 3 Humpback Whale 30 August 2008 six miles off-shore from Morro Bay, CA, by mikebairdWhaling delegates 'fed up' with Japanese - 最近までブラジルの政府代表だった Jose Truda Palazzo さんが、オーストラリアのエイジ紙のインタビューに応じ、IWC の話し合いがほとんど行き詰まりの状態であることを明かしています。

多くの国の代表が日本の「非協力的な姿勢」に業を煮やしている、というのがパラッツォさんの主張です。「日本の代表は何も言わずに座っているだけで、だれかが具体的な提案をすると、『それは我々には受け入れられない』とだけ言って、また黙りこんでしまう。二年間もこんな調子なので、みんな飽き飽きしてきている」とのことです。

「IWC の代表の多くが、オーストラリアが日本を国際司法裁判所に提訴することを強く望んでいる」とも指摘しています。

これはこれでちょっと一方的な見方のような気もしますが、外交としてうまくいっていないことは確実なのでしょう。鯨を獲りたい人たちの望むようには事態は動かないということなのだろうなあと思ってしまいます。

クジラの尾びれの写真は mikebaird さんが CC-by で公開しているもの。カリフォルニア沖のザトウクジラだそうです。

記事の内容とは関係ありませんが、大きな地震のあったハイチの人々のことを思います。関西に暮らす私にとっては、15年前の出来事を思い出す時期ですから、なおさらのこと。私も何かしなくては。

このブログで

2010年 1月 14日 午前 12:00 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2010.01.13

復讐と偏見

Sudan protests over Darfur film shoot in Kenya - ダルフールでのジェノサイドを描いた映画の撮影がケニアで行なわれているのだけれど、「真実とは全く違う」として、スーダン政府がケニア政府に抗議したという話。「ケニアで撮影しておきながらダルフールで起こったと称するのはおかしい」とも言ったようです。そんなこと言ったら、映画というものが成り立たない気もしますが。

Darfur refugees Sam Ouandja 35, by HDPTCAR撮影中の映画は、デンマークの Susanne Bier 監督による Hævnen (復讐)。難民キャンプからデンマークの田舎町に移り住んだ二つの家族の間の数奇で危険な友情を描く映画だそうです。今年の夏に公開予定です。

スーダン政府は、この映画が反イスラム的だと主張しています。描かれている「アラブ系」スーダン人による「アフリカ系」スーダン人のジェノサイドという図式が反イスラム的だということだと思いますが、詳しいことは分かりません。

国際司法裁判所が大統領に逮捕状を出しているスーダン。かたや、預言者ムハンマドを冒涜するまんがを新聞に掲載したデンマーク。なかなか国際政治はどろどろと汚い感じがします。そういう私も、半世紀以上経っても戦争犯罪を清算できない国の市民です。

上の写真は中央アフリカ共和国(CAR)の難民キャンプで撮影されたダルフール難民の人。同国の人道開発連携チーム(HDPTCAR)が CC-by-sa で 公開しているものです。

このブログで

2010年 1月 13日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.12

コカコーリャ

私、B級飲料が大好きです。新しい飲み物とか、季節限定と書いてあるものとか、とりあえず飲んでみます。これはと思うものは少ないですが。そんな私が楽しみにしているものがあります。

Selling Coca, by relapsed nunBolivia banks on 'Coca Colla,' fizzy coca-leaf drink - コカの葉の栽培が盛んなボリビアで企画が進んでいる「コカ・コーリャ」(コカコーラの英語の綴り Coca Cola と違って、L の文字が二つです。コージャかなと思って、ちょっと調べたら、ボリビアではコーリャと発音するみたい)。 Coca Colla は有数のコカ葉産地である Chapare の農業団体が提案し、コカ及び総合開発省で商品化が検討されています。国営になるか民営になるかはまだ決まっていませんが、4か月後ぐらいを目処に市場に出るようです。

コカの葉は国外に持ち出されてコカインの原料として用いられることもあるので、アメリカなどがコカの栽培の禁止を求めています。それに対し、ボリビアでは、コカはお茶として飲んだり、高山病の対策として噛んで食べたり、日常的に用いられており、憲法に「コカは文化的な遺産であり、生物多様性の自然かつ再生可能な資源であり、社会のつながりの一要素である」と規定されているほどです。

ある国が伝統的な食文化を守ろうとすると、ほかの国が怒るというのは、ちょっと捕鯨に似ているかもしれません。捕鯨は生物多様性を逓減させる資源濫用なので、分が悪いですが。

市場で売られるコカの葉の写真は relapsed nun さんが CC-by で公開しているもの。昨年私が訪れたお隣のペルーでも、どこの市場に行ってもコカの葉を売っていました。アンデスの山地のコカは、鯨食とは比べものにならないほど身近なものなのだと思います。

ラテンアメリカのニュースを広く日本語で紹介していらっしゃる「アンデスからはじめよう」ブログ(コカコーリャについても、いち早く紹介していらっしゃいました)、護憲派アマゾネスの一員でボリビアに行っていらっしゃる、えぼりさんの「漂流生活的看護記録」ブログ、痛烈な風刺で有名で、ごく最近、毒飲み物について書かれた「謙遜と謙譲の音楽」ブログにトラックバックをお送りします。…と言って、トラックバックがうまく送れないことがけっこう多いのですが、大丈夫かな。

このブログで

2010年 1月 12日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2010.01.11

沈められた病院船

Japanese 'should apologise for Centaur' - 先月、オーストラリアの Moreton Island の近海で、第二次世界大戦時に日本軍によって撃沈されたオーストラリアの病院船 Centaur (セントー号)の残骸が見つかりました。このほど、遠隔操作のカメラによる撮影が行なわれ、この残骸が Centaur 号のものであることが確認されました。それに伴い、国際法に違反して病院船を攻撃した日本は謝罪すべきであるとクイーンズランド州知事が語ったことを記事は伝えています。

Moreton Island, by [mapu]「日本が第二次世界大戦の間にとった行動について謝罪を行なってきたことは確かだが、(セントー号に関しても)関係者が謝罪を表明することが妥当だろう。この野蛮な行為によって、人々の命が奪われた。兵士、水兵、看護師、医師、看護兵。全く非常識で残忍な行為だ。戦争ではひどいことが起こるものだが、これは最悪の部類と言ってよい。彼らが自分たちのやったことに対する責任を認める分別のある大人であるといいのだが。」

日本の海軍のイ-177潜水艦がセントー号を違法に撃沈したのは1943年5月14日。332人の乗員のうち268人が死んだそうです。今回の撮影("First photos of hospital ship Centaur")では、船体に大きく記されていた赤い十字(当時の写真)も確認されました(写真)。

先月23日の報道によれば、日本政府はセントー号撃沈に関する責任を取ることを拒否したそうです("Japan refuses to accept responsibility for sinking of Centaur")。

写真は残骸が見つかったモートン島の海辺。[mapu] さんが CC-by で公開しているものです。この美しい海のどこかに、亡くなったかたがたが眠っているのでしょう。

このブログで

2010年 1月 11日 午前 12:00 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2010.01.10

トウモロコシに入った毒

Three Approved GMO's Linked to Organ Damage という8日付けの truthout の論説記事を読んで気がついたのですが、一か月ほど前にモンサント社の遺伝子組換えトウモロコシが哺乳類の臓器、特に腎臓と肝臓にダメージを与えるという調査結果が公表されていたようです。そのような因果関係が証明されたのははじめてのことらしいです。

Genetically Modified Food, by Peter Blanchard問題となっている品種は Mon 810、Mon 863、NK 603 の三つ。ヨーロッパ、アメリカなどで認可されているもので、日本でも流通しているものです。フランスの研究者による "A Comparison of the Effects of Three GM Corn Varieties on Mammalian Health" と題された論文は International Journal of Biological Science のサイトで全文を読むことができます。報道としては、ルモンド紙 "Une étude prouve la nocivité pour l'organisme de trois maïs Monsanto" (英訳)があり、日本では農業情報研究所というサイトが「モンサントの主要GMトウモロコシ3品種 腎臓・肝臓の機能に明確な悪影響 フランスの研究」として報じています。

モンサントは90日間のラットを用いた実験をもとに認可申請を行なっていましたが、2年間という長い期間にわたって観察を続けたこと、性別を分けて調査したこと、統制群に与えられる食餌をモンサント社の実験よりもしっかりと管理したことなどによって、有意な結果が得られたようです。

遺伝子組換えトウモロコシなどの GMO の臓器に対する毒性は環境団体のグリーンピースなどが以前から主張してきたことですが、学会でもその主張が認められてきたということかもしれません。残念ながら私には論文を読み解く力がありません。

遺伝子組換えトウモロコシが栽培されているところの写真は Peter Blanchard さんが CC-by-sa で公開しているもの。カナダのオタワ州にある実験農場での撮影。

このブログで

2010年 1月 10日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.09

屋根の下に住むために

Eliminating Slums - 南米のチリは、来週、OECD に加盟する。いわゆる「先進国」入りを果たすわけだ。一人当たりの所得水準が上昇しているだけでなく、チリでは貧困の撲滅についても果敢な取り組みが行なわれている。

1990年には38%だった貧困率が2007年には13%にまで下がった。1,800万人ほどの人口を持つチリで、スラムに住む家庭は20,000世帯ほどだ。1997年には126,000世帯、2007年には29,000あったことを考えれば、いかに急速に貧困対策が行なわれているかが分かる。チリでは、今、今年9月18日の独立200周年を目標に、劣悪な住環境の構造的な根絶が図られている。

Trabajos Solidarios Excelsior 2007 / Lampa, by ★ Eɳcɑɳto 記事は、スラムでの家作りに取り組んでいる Un Techo para Chile (チリに屋根を)という団体を紹介している。木材を提供し、ボランティアの若者とスラムの住民がいっしょに家を作るのだ。この NPO を作ったベリオス神父は「気を緩めるわけにはいかないが、チリはスラムのない南米最初の国になるだろう」と語る。

Un Techo para Chile とユニセフがまとめて今週公開した "Vivir en campamentos: la voz de los niños" (ウェブでは見つけられなかった)は、スラムに住む千人以上の子どもたちへのインタビューを含む報告書だ。全国的には、小学校で学校に来なくなる児童は0.98%、中学校で6.8%。スラムに住む子どもたちの調査では、13.3%が学校に行かなくなっている。スラムに住む子どもたちの30%は一人用のベッドに寝ることができない。多くはきょうだいといっしょに寝るわけだが、20%は家族以外の人とベッドを共有している。

日本では、劣悪な住環境のもとに暮らす人はもっと少ないかもしれない。しかし、チリとは逆に、増えていっているのかもしれない。

Un Techo para Chile の家作りの写真は★ Eɳcɑɳto さんが CC-by で公開しているもの。

このブログで

2010年 1月 9日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.08

神の独占

マレーシアは憲法でイスラムを国教と定めているが、同時に、他の宗教の信者が信仰を持つことも認めているし、すべての国民に言論の自由を認めている。だから、ムスリム以外の者がその信じる神について「アラー」という単語をあてることは権利として保証されている。したがって、カトリックの新聞「ヘラルド」は「アラー」という言葉を使っても差し支えない。そういう判決がクアラルンプールの高等裁判所で昨年12月31日に出された:ニュー・ストレート・タイムズ "NST Online Court rules in favour of 'Herald'"。

Let the light in, by Balaji Duttこのような判決が出されたということからも分かるように、それまで、マレーシアではムスリム以外の者が「アラー」という言葉で自分たちの神のことを語ることは禁じられていたのだ(もちろん、おそらく書いたものを布教目的で配布することなどが禁止されていたのであって、その言葉を口にすることが違法であったわけではないと思う)。

しかし、マレーシア政府はこの判決を不服として上告し、裁判所は、6日、上告審の判決が出るまで高裁の判決の効力を差し止める決定をした("Court grants stay of 'Allah' ruling")。この決定はカトリック教会やヘラルド紙の「国益のための」同意のもとに下されたものだ。

ムスリムの間では、12月31日の判決に対して動揺が広がっている。今日は、金曜日のモスクでの礼拝の後、各地で抗議行動が起こるのではないかと言われており、政府は人々に冷静な対応を呼びかけている。

どの国にも偏狭な心の持ち主はいるものだ。どうか多くの人がそのような人たちの言葉に惑わされることなく、寛容でありますように。

マレーシアの教会遺跡の写真は Balaji Dutt さんが CC-by で公開しているもの。

このブログで

2010年 1月 8日 午前 12:00 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2010.01.07

進化の翻訳と受容

Origin of a Translation - Egypt Today の記事。最近エジプトで刊行されたダーウィンの『種の起源』のアラビア語版の話から、アラブ文化圏で進化論がほとんど受け入れられていない現状を論じている。

The Origin of Species by Means of Natural Selection, by Cradle of Humankind『種の起源」を訳したのは Magdi Meligui さん。10年近くかかった。「祖先」という単語は、アラビア語では畏敬をもってとらえられる言葉なので、「猿と人間は祖先を共有する」といった簡単な文を訳すにも注意が必要だった。「類人猿」(great apes)は「尾のない猿」と訳した。550ページほどの本が、訳注などで1,000ページ近くまで膨らんでしまった。

進化論が正しいと考えるエジプト人は1割にも満たない。中学の生物の教科書には進化論のことも載っているが、「信じなくてもいい」と伝える教師もいるようだ。Zaghloul El-Naggar などの神学者や、Harun Yahya などの影響が強い(後者については、「反証されたダーウィニズム」という文章が日本語でも読める)。

コーランがどのように書いているかということだけでなく、アラブ文化圏では恐竜の化石が見られ(進化論の理解ができ)るような博物館が少ないことなどが影響しているようだ。

昨年には、アルジャジーラが「猿は人間の祖先ではないことが証明された」という報道を行なった(アラビア語のページはここ。英語版は見つからなかった)。

アメリカの保守派から、創造論をイスラム世界に輸出するような動きもあるようだ(ワシントン・ポスト紙 "In Turkey, fertile ground for creationism")。

『種の起源』の写真は Cradle of Humankind さんが CC-by で公開しているもの。100年ほど前の本だとのこと。

このブログで

2010年 1月 7日 午前 12:28 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2010.01.06

地図を描く

Mapping An African Slum - ケニアの首都ナイロビの南西に広がるスラム地区キベラで、地図の作成が進められている。OpenStreetMap というウィキのような地図データ作成プロジェクトが JumpStart International という NGO と共同で行なっているもの。公式サイトは mapkibera.org。GPS を手にした10代の子どもたちが地域を歩き回って情報を収集している。

Two young girls carry water on the train tracks that run through the Kibera Slum, by a member of the St. Aloysius Gonzaga High School Journalism Clubキベラは無計画に造成され、今ある地図の上でも空白になっている。そこに住んでいる人たちでさえ、近くに病院などの施設があることを知らない場合も多いのではないかと記事は伝えている。いろいろな NGO や企業が入り込んでいるが、目に見える生活の向上には結びついていない。地図ができれば、説明責任を問うこともできるようになるだろう。もちろん、NGO などが、何が必要とされているかをより正確に把握することにも資するだろう。

おそらく美しすぎるキベラの写真St. Aloysius Gonzaga High School Journalism Club の生徒が撮影したもの。同校で写真撮影を教えている Colin Crowley さんが CC-by で公開している。

このブログで

2010年 1月 6日 午前 12:00 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.05

音楽は世界を救う、らしい

Positive lyrics can hit home with grumpy teenagers, study says - 社会のためになるような内容の歌を聞いた人は、社会に関係がない歌詞の歌を聞いた人よりも優しくなるという心理学の実験結果が報じられています。これまで、暴力的なゲームをする人は寄付額が少ないとか、ラップやヘビーメタルを好む人は人種差別や女性差別を許容する割合が高いなど、否定的な面ばかりが実験によって明らかにされてきましたが、音楽の肯定的な影響が解明されたのは初めてのようです。

Take me Back - Summer of Love, by Jill Clardyイギリスのサセックス大学の Tobias Greitemeyer さんによって行なわれ、Personality and Social Psychology Bulletin という学会誌に掲載された "Effects of Songs With Prosocial Lyrics on Prosocial Behavior: Further Evidence and a Mediating Mechanism" という実験です(大学などで購読していれば、ここで全文が読めます)。

使われた音楽のリストだけ引用しておきます。実験はドイツの大学で行なわれたそうです。

社会的に肯定的な音楽

  • “Heal the World” (Michael Jackson)
  • “Ein bißchen Frieden” (Nicole)
  • “We Are the World” (Liveaid)
  • “Help” (Beatles)

社会的に中立的な音楽

  • “On the Line” (Michael Jackson)
  • “Spiel um deine Seele” (Peter Maffay)
  • “An Englishman in New York” (Sting)
  • “Octopus’s Garden” (Beatles)

これらの歌を聞かせた後で、えんぴつなどを落としたふりをして、拾ってくれるかどうかを調べたようです。

さて、今夜は何を聞きながら夢路につきましょうか。

写真は Jill Clardy さんが CC-by-sa で公開しているもの。サンフランシスコでの野外コンサートの風景だそうです。

このブログで

2010年 1月 5日 午前 12:06 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2010.01.04

本当の犠牲者のための葬送

Extremist Islamic group defends Wootton Bassett parade - イングランド南西部にあるウットン・バセットという町で、イスラム教徒の団体(記事によれば、いわゆる原理主義組織と関連があるらしい)がアフガン戦争で死んだアフガニスタン人たちを追悼するために、空の棺を挽いて葬送を計画している。

A roll call opposite Downing Street, by Steve Punterウットン・バセットは、アフガニスタンで戦死したイギリス兵のために同様のパレードを行なうことで知られた町だそうで、問題になっているムスリム団体(Islam for the UK)のパレードは、まさにその場所で行なうことで、アフガン戦争の本当の犠牲者がだれなのかを象徴的に示そうという試みらしい。

町では反対の声があがっている。おそらく保守的で国の方針に忠実な人の多い町であろうから、当然と言えば当然だ。葬送の計画が論議を呼ぶことを承知の上で、そのことが戦争をやめさせる力になることを望んで、この町を選んだようだ。

イギリスで行なわれたアフガン戦争反対集会の写真は Steve Punter さんが CC-by-sa で公開しているもの。

このブログで

2010年 1月 4日 午後 08:34 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.01.03

さよなら、インド

さよなら、インド

効率の悪い乗り継ぎを経て、今夜、帰宅します。

…無事、帰宅しました。

さあ、ふだんのリズムに戻らなくては。

2010年 1月 3日 午前 02:54 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2010.01.02

マドラス高裁

マドラス高裁

ここにもアンベドカル。

裁判所の中で、ダリット権利運動の指導者アンベドカルの肖像画を見つけました。彼は独立インドの初代司法大臣だったので、絶対どこかにあるに違いないと思って、探し回りました(笑)。建物には自由に入れるのですが、テロ対策とか大丈夫なのでしょうか。

それにしても、銅像だのポスターだのを見つけて、「アンベドカルだ、アンベドカルだ」と喜んでいる旅行客も珍しいだろうな。

本当は、新聞で読んだダリットの人たちがやっているパン屋さんの写真を載せたかったのですが、下調べが不十分だったため、一時間以上、付近をうろうろしたのだけど、見つけることができませんでした。

怪しい旅行客だ。

2010年 1月 2日 午後 07:11 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2010.01.01

初詣

初詣

すごい人出です。

チェンナイのパラタサラティ寺院の境内です。人の流れに乗って歩いているうちに、知らぬ間に、旅行者お断りの領域に入ってしまいました。だれも気にしていないみたいでしたけど。

「ジャイ・ビーム!(アンベドカル万歳!)」とか叫んで、騒ぎを起こしたら面白かったかもと、後で思いつきました。

2010年 1月 1日 午後 05:22 | | コメント (4) | トラックバック (1)

« 2009年12月 | トップページ | 2010年2月 »