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2009.12.22

語られない言語

Unspoken language close to extinction - マレーシアのニュー・ストレート・タイムズ紙の記事。ペナンのジョージタウンで開かれた「マレーシアの絶滅言語」と題されたセミナーに出席したオランダの言語学者の話。

Rumah Adat Los Palos, Dili, East Timor, by yeowatzupライデン大学で言語学を教える Aone Van Engelenhoven さんは東チモール人の血を引いていて、チモール島東端近くの言語であるマクヴァ語(Makuva, Maku'a)を話す。マクヴァ語は、ユネスコの絶滅が心配される言語の調査では、母語話者が50名以下で「危機的な状態」に分類されている言語だ。

おそらくいいニュースということになると思うのだが、Van Engelenhoven さんの最近の現地調査で、マクヴァ語を話す約2千人のコミュニティーが新たに発見された。絶滅が危ぶまれることには変わりはないだろうが、50人と2千人では、消滅までに一世代以上の差があるだろう。

記事の書き方が悪いのか、私の異文化理解が至らないためか、この後の部分が今ひとつ分からない。彼がその村に行き、マクヴァ語を話したら、村の人たちはものすごく驚いたのだそうだ。よそ者が自分たちの言葉を話したからではなく、彼らにとっては、マクヴァ語は「話してはいけない」言葉だったからだ。村の人たちは、マクヴァ語で話すと不幸が訪れると信じていて、マクヴァ語を口にすることはない。だれもがファタルク(Fataluku)語との二言語併用話者で、みんなは必ずファタルク語で会話するのであった。

だれも口にしないのであれば、言語として伝承されるわけがないので、たぶん、「家の外で話してはいけない」とか「大人どうしで話してはいけない」とかいう場面条件が付いた禁忌があるのだろう。

セミナーでも、バンエンゲレンホーベンさんはマクヴァ語を一言も口にしなかった。村の人たちと「むやみにマクヴァ語を口にしない」という約束をしたからだと言う。

東ティモールの写真は yeowatzup さんが CC-by で公開しているもの。"Fataluku" でクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの写真の検索をして見つけたのだけれど、見当外れだったらすみません。ディリで撮影されたようだが、ロスパロスという村の伝統的な小屋らしい。Fataluku 語のサイトのロゴが似たような形をしている。このサイトの写真集の女の子のTシャツが必見。

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2009年 12月 22日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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コメント

いろんな意味で実に興味深い記事でした。話してはいけないのに伝承されてきた言語、もし本当であればぜひその仕組みを知りたいものです。
また、ユネスコが絶滅が心配される言語を指定しているというもの初めて知りました。言語というのは時代と共に変化していくものだと思えばこれも仕方のないことなのでしょうが、私の住む大阪でも、子供の頃に話されていた大阪弁は、現在ではまるで別ものになった感があります。
でも、絶滅が心配される民家というものをユネスコは指定していないのでしょうか。というより、そんなものを指定しようとすれば、おそらく世界中で何万という例が出てくるのでしょうが。

投稿: argon | 2009/12/22 0:27:40

語ることを禁じられた秘密の言語ってロマンティックというか・・・。(ハートマークのロマンティックではなく)

伝承は、一対一の時だけ話すことが許される、としているのかな。母から子へは語りかけるの。でも第三者がいると、たとえ兄弟でも家族でも、絶対に「秘密の言語」はしゃべらない。そういうタブーだったら、話者は引き継がれるけど、社会的な局面では決して語られない言語ができそうです。
そのときに、語彙はどうなるのか、興味は尽きませんね。

投稿: kuroneko | 2009/12/22 14:44:24

argon さん、

世界遺産には民家は含まれていないのでしょうか。集落単位でなら指定されていたりしていそうな気がします。「伝統的」ではないけれど、「昭和の街並み」みたいなものも、既に懐かしい存在になってしまいましたね。


kuroneko さん、

ああ、なるほど、「大勢の人の前では話してはいけない」みたいなのはありそうですね。言語ではないけれど、セックスなんかも1対1限定みたいなタブー意識がありますものね。

投稿: うに | 2009/12/23 1:27:38

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