睡蓮さんの手記
今回の旅行の飛行機の乗り継ぎはシンガポールでした。空港の書店で Tears of a Teen-Age Comfort Woman という本を見つけ、購入しました。先月出版されたもののようです。著者は Swee Lian (睡蓮)、編者は Ralph Modder、出版社はシンガポールの Horizon Books、ISBNは978-981-08-0595-1です。
日本軍によって慰安婦にされた睡蓮さん(筆名)の回想録です。睡蓮さんはボルネオ(現在のカリマンタン島)北部の Jesselton (現在のコナキタバル)に生まれ育った中国系のマレー人で、16歳の時、反日活動の容疑で両親とともに憲兵隊に拘束されます。憲兵隊長にレイプされた後、慰安所に移され、慰安婦として働かされます。逃亡に成功し、逃走を助けた幼なじみと結婚して、1981年に移住先のオーストラリアで亡くなりました。
私はこの手記が本当の証言だと思って読みましたが、猜疑心の強い人はいくらでも疑問を差し挟めるでしょう。たとえば、日本人とのやり取りで聞いた日本語などは、覚えていたわけではなく、執筆の過程で調べながら再構築したものだと思います。ところどころ不自然です。世の中には否定論者もいるのですから、揚げ足を取られないよう、もう少し慎重に編集してほしかった気もします。
日本軍によって人生を狂わされてしまったにも関わらず、睡蓮さんが日本人全体に憎悪の感情を持っておらず、何人かの日本人と心を通わせていることには、救われる思いがしました。日本に暮す者として、睡蓮さんの冥福を祈らずにはいられません。
睡蓮さんの話の中で、進駐してきた日本軍の兵士たちは現地の人がお辞儀をしなかったことに怒り、殴る蹴るの暴行を加え、人々は日本人を恐れるようになっていきます。一方、日本人たちは自分たちが東南アジアを欧米の植民地支配から解放するために来たのだ、だから歓迎されるべきだと主張します。この傲慢さと説得力のなさは、半世紀以上経った今も変わらず、歴史から何も学ばなかった人たちの言動に残っていますね。
2009年 1月 10日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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