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2008.10.19

先住民とウィンドウズ

ちょうど2年ほど前のニュースだが、今ごろになって聞き及んだ。

南米のチリとアルゼンチンの国境付近にマプチェ(Mapuche)という先住民が住んでいる。人口は二十数万人から四十万人ぐらいみたいだ。チリ国内では全人口の約4%にあたるらしい。Mapudungun (あるいは Mapuzugun)と呼ばれる言語(いわばマプチェ語)を話している。

2006年10月に Windows XP のマプチェ語版言語パックが発表された。チリ政府とマイクロソフト社の協定に基づいて、Universidad de la Frontera という大学の先住民研究所(Instituto de Estudios Indígenas)とマイクロソフト社が共同開発したものだ。

これに対し、マプチェの人々は、マプチェ語はマプチェ人民の財産であり、その同意、許可や協力なしに電子化を行なうのは知的剽窃であるとし、マイクロソフト社を告訴した(当時のロイター電 "Mapuche Indians row with Microsoft over software")。マプチェの人々はその一年前にマイクロソフトに対して開発を止めるよう求める手紙を送っている。

「言語はだれの持ち物でもないよ」と言うのも容易いし、反対に「言語はその中で育ってきた人たちのアイデンティティそのものであり、話者は絶対的な権威(オーソリティー)を持っている」と言い切ってしまうのも簡単だ。しかし、現実には、もっと繊細な思考が必要とされていることを、この事件は教えてくれる。また、国家という仕組みが完全に合法的であるような幻想を私たちは持っているが、先住民にとってみれば政府というのは数百年前の征服者たちとまったく変わらぬ不条理な存在に過ぎないことを、私たちはここから知る(先ほどの記事によれば、マプチェの人々はスペインによる植民地化以前には、インカ帝国による侵略を阻んでいたのだそうだ)。

「なんの儲けにもあずかることができなかったボスたちが嫌がらせをしているだけ。よくあることさ」と、怠惰な人なら思うだろう。しかし、私は現地の新聞(El Diario Austral)が記事の結びで書いているように「新たな歴史が始まろうとしている」のだと思う。

この件については、17日づけの国連 IRIN の記事 "The global village is slowly going digital" で知った。こちらの本題は、南アフリカでズールー語(isiZulu)を話す人たちが母語でパソコンが使えるようになったのを喜んでいるという話。

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2008年 10月 19日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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