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2008.07.29

隠れた山の民

The last untouchable in Europe - 28日づけ、英インディペンデント紙の記事。フランスの被差別不可触民 Cagot(Agote とも言う)の歴史を紹介している。

Cagots はフランス南西部、ピレネー山脈地帯などに居住していた人々で、Cagots 以外の人たちといっしょに食事をしてはいけないとか、決められた場所にしか住んではいけないとか、特定の職業にしか就けないとか、教会でミサにあずかる時、専用の出入り口を通らねばならないとか、さまざまな形で差別を受けていた。フランス革命によってその賤民身分は解消され、徐々に一般人口の中に同化されていった。もともとは捕虜として連れてこられた人たちであったとか、伝染病患者であったとか、競争相手から迫害されていた職人集団であったとか、諸説あって定かではない。

記事には、家系図を調べているうちに自分が Cagot であることを知った女性の写真が載っている。彼女は、自分の写真が使われることには同意したが、自分の子どもたちの写真は、その出自ゆえに差別を受けることがあるかもしれないと言って、見せてはくれなかったらしい。

人々の目からはほとんど姿を消してしまった不可触民。記事は、その女性の「憎しみは今もなお続いている」という言葉で終わっている。フランス革命から2世紀余り。差別と闘う道が長いものであるのは、私も、身の回りを見て、思い当たることだ。

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2008年 7月 29日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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勉強が一向に捗らない。 もしかすると走り高跳びでいうと5メートルぐらいの高さのバーを越えようとしているのかもしれない。それなら勉強するだけ無駄だと思い、妙に安心してもっとさぼってしまう。 ピレネー北麓は、3ヶ月にわたる旅でも、最も美しく、最も印象に残る地域... 続きを読む

受信: 2008/07/30 23:31:08

コメント

昨年、フランスからピレネーを越えてスペインの西端のサンティアーゴまで歩いてきたのですが、ピレネー北麓は、地上の楽園かと思うくらい素晴らしいところでした。
あのような場所に被差別不可触民される人たちが住んでいるとはとても信じられません。
ただ、このようなことを書くのは少し憚られるところもあるのですが、オロロン・サント・マリーという実に落ち着いた美しい街の郊外に、何台ものキャンピングカーが並んだ村があり、といっても明らかに彼らはそこに定住していて、あの場所にしてはいかにも不自然に思ったことがあります。その村の入り口の大木の下で雨宿りをしたのですが、村から出てきた3人の子供たちと、フランス語はできないので、会話にならない会話を交わしました。

投稿: argon | 2008/08/01 1:16:13

argonさん、トラックバックとコメントありがとうございました。きれいな写真の数々、楽しませていただきました。

世の中、どこで、だれが、どんな理由で、差別されてきたか分かりませんからね。どんなに素敵な場所でも、悲しい歴史とかあるのかもしれません。

投稿: うに | 2008/08/01 22:38:42

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