2008.07.31
House formally apologizes for slavery and Jim Crow - アメリカの連邦議会下院が過去の奴隷制や奴隷解放後に南部諸州でとられた人種差別政策について謝罪した。今年初めのニュージャージー州のように州レベルでの謝罪は今までもあったが、国レベルでの奴隷制に関する謝罪は初めてとのこと。補償や具体的な是正の義務については触れていない。
決議案 H. RES. 194 "Apologizing for the enslavement and racial segregation of African-Americans" は、奴隷制によってアフリカ系住民が動物のように売り買いされ、暴力によって人間性を奪われたことだけでなく、南北戦争後の人種隔離制度(いわゆる Jim Crow)が1960年代まで続いたこと、そしてさらには今もまだその傷跡が残っていることを確認した後、謝罪は人種間の和解に必要であるが、謝罪によって過去が帳消しになるわけではないと述べている。
歴史上の汚点を自らの過ちとして引き受ける潔さが感じられる文章だと思う。歴史を糊塗することによって国の誇りが得られると考えている人たちに、ぜひ一読をお勧めしたい。
写真は Creativity+ Timothy K Hamilton さんが CC-by-nc-nd で公開しているもの。「夢は健在だ。しかし、まだ夢のままだ」と題されている。
Tags: アメリカ, 人種差別, 歴史認識, 謝罪
2008年 7月 31日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.30
Call for Chicago students to skip 1st school day - シカゴとその近隣地域では、黒人やラティーノの貧しい市民が多く住む都市中心部と白人の富裕層の住む郊外との間で教育行政の不均衡が際立っているとして、9月2日の新学期初日に都市部の生徒がバスで郊外の学区に行き、転校手続きをとるという抗議行動が計画されている。
記事によれば、郊外の学校では一年間に生徒一人あたり17,000ドル(約183万円)の予算配分があるのに対し、都市中心部の Chicago Public Schools 学区ではその6割弱にあたる10,000ドル(約107万円)しか配分されない。このような不平等は正義にも道徳にも反する二層構造だとして、州議会議員の James Meeks さんらが月曜日に行動を提起した。何千人もの生徒の参加を期待しているという。
遠くから見ると、小さいパイの分け前を取り合うのではなく、より大きなパイを獲得することにつながる運動になればいいのにと思うが、人種がからんだ局面では、それは難しいのかもしれない。
Tags: アメリカ, シカゴ, 学校, 教育
2008年 7月 30日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.29
The last untouchable in Europe - 28日づけ、英インディペンデント紙の記事。フランスの被差別不可触民 Cagot(Agote とも言う)の歴史を紹介している。
Cagots はフランス南西部、ピレネー山脈地帯などに居住していた人々で、Cagots 以外の人たちといっしょに食事をしてはいけないとか、決められた場所にしか住んではいけないとか、特定の職業にしか就けないとか、教会でミサにあずかる時、専用の出入り口を通らねばならないとか、さまざまな形で差別を受けていた。フランス革命によってその賤民身分は解消され、徐々に一般人口の中に同化されていった。もともとは捕虜として連れてこられた人たちであったとか、伝染病患者であったとか、競争相手から迫害されていた職人集団であったとか、諸説あって定かではない。
記事には、家系図を調べているうちに自分が Cagot であることを知った女性の写真が載っている。彼女は、自分の写真が使われることには同意したが、自分の子どもたちの写真は、その出自ゆえに差別を受けることがあるかもしれないと言って、見せてはくれなかったらしい。
人々の目からはほとんど姿を消してしまった不可触民。記事は、その女性の「憎しみは今もなお続いている」という言葉で終わっている。フランス革命から2世紀余り。差別と闘う道が長いものであるのは、私も、身の回りを見て、思い当たることだ。
Tags: フランス, 差別
2008年 7月 29日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.28
CSNY Déjà Vu - この週末にアメリカで劇場公開された Neil Young の映画の公式サイト。ニール・ヤングが2006年に Living with War のアルバムを世に出した後、往年の Crosby, Stills, Nash and Young が再結成し、コンサートツアーを行なった。映画はそのドキュメンタリーだ。
コンサートツアーは、CSNY が現役だったころ、つまりベトナム戦争のころの音楽ではなく、Living with War の曲を中心としたものだったらしい。イラク戦争に強く異議を唱えるこのアルバムの曲に抗議して会場を去っていく観客もいたという。
Déjà Vu (既視感)。クロスビー・スティルズ・ナッシュ&ヤングのアルバムのタイトルでもあるが、もちろん、再び間違った戦争に突き進んだアメリカ社会のことを指している。「ここに来たことがあるのなら、何をすればいいか分かるはずだよね。なんか、来たことがあるような気がするんだ。私たちはみんなここに来たことがあるんだ」と曲は歌う。
Tags: 音楽, 映画, 平和
2008年 7月 28日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.27
アメリカ政府のイラク戦争(2003-)への支出はベトナム戦争(1965-75)への支出総額と肩を並べるまでになっている。9.11以降のアフガニスタン戦争および「テロとの戦争」も合わせた額では、すでに第二次世界大戦(1941-45)に次ぐ史上二番目にお金のかかった戦争となっている。アメリカ議会の調査部が24日に議会に提出した報告書がそう結論づけている。
報告書は Congressional Research Service の Stephen Daggett さんによる "Costs of Major U.S. Wars"。AP電 "Iraq war's total cost nearing Vietnam's price tag" で知った。2008年の物価に換算して、第二次世界大戦は4兆1千億ドル、朝鮮戦争が3,200億ドル、ベトナム戦争が6,860億ドル、湾岸戦争が960億ドル。イラク戦争が6,480億ドル、「テロとの戦争」全体で8,590億ドル。報告書では、著者自身が意義に疑問を差し挟みながらも、独立戦争に遡って比較が行なわれている。
後の世で、「意味のない大きな戦争を、だれも止めようとしなかった」とか言われると悔しいので、今日もまた反戦を叫ぶ。
Tags: イラク, 戦争
2008年 7月 27日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.26
馬の背に大きな国旗を掛け、その上に全裸でまたがった女性の写真が国旗の冒涜にあたるとして、ペルーで問題になっている。
AP電 "Peruvian model could face charges for posing nude with country's flag" に写真が載っている。もっと広角の写真。前から見たところ。
Lacey Zamudio (Leisi Suárez) さんは、「私はペルーが好きです。それを心と体で表現してみました」と語っている。
ヌードだからいけないのかとか、大人の女性だからいけないのかとか、お尻の下に敷いているからいけないのかとか、私にはよく分からない。
Tags: ペルー, 国旗, 愛国心
2008年 7月 26日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.25
Celebrated condors face threats across S. America - マクラチー系新聞の記事。南アメリカのコンドルが絶滅の危機に瀕している。大陸北部のベネズエラでは既に絶滅したと考えられており、コロンビアとエクアドルとあわせての生息数は150羽ぐらいだと考えられている。大陸中部のペルー、ボリビアでも絶滅が危惧される状態となっており、南部のチリ、アルゼンチンで2,000羽程度残っているのが最後の望みの綱となっている。
コンドルはシカや guanaco という「リャマのような動物」(よく分かったという気になれない説明だ。写真)の死骸を食べて生きるが、アンデス山脈の酪農地化が進み、食物連鎖が途絶えてしまったことが衰退の原因だ。人工的に繁殖させる試みもあまりうまくいっていない。最近では、日本のカラスのように、ゴミ捨て場でゴミを漁っている姿も見られるという。
大空を飛ぶペルーのコンドルの写真は gudi&cris さんが Flickr で CC-by-nd で公開しているもの。
Tags: 南アメリカ, 生物多様性
2008年 7月 25日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.24
Mayor Orders New York to Expand Language Help - ニューヨークのブルームバーグ市長が22日、市のすべてのサービスを英語以外の言語でも受けられるようにすることを義務付ける行政命令に署名した。
これにより、パンフレット類などはすべて英語のほかにスペイン語、中国語、ロシア語、韓国語、イタリア語、(カリブ海地域で話されている)フランス語系クレオールでも提供されることになる。英語が十分に使えない移民たちにとって、市役所でのサービスを受ける敷居が少し低くなる。命令は、上に挙げた6言語だけでなく、(パキスタンの)ウルドゥ語、(インドの)ヒンディ語、アラビア語など、話者が6言語ほど多くない言語で電話での通訳サービスを提供することなどへの予算措置を含んでいるようだ。アメリカ国内では、前例を見ないほど包括的な政策だと評価されている。
同じように大きな都市として東京をすぐ思い浮かべてしまう。たぶんオリンピックを開くのの何十分の一のお金で、「国際的な都市」との評価を得る道がここにあるような気がする。
Tags: アメリカ, 移民, 言語
2008年 7月 24日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.23
土曜日、ナポリの海岸は波が高かった。二人の少女(11歳と12歳という報道と、14歳と16歳という報道がある)が高波にさらわれ、溺死した。
砂浜に引き上げられた二人の遺体には、バスタオルが掛けられた。タオルの下から、脚がにょっきりと出ている。近くでは、人々が何事もなかったかのように、日光浴を楽しんでいる。報道によれば、ビーチボールで遊んでいた人もいるらしい。
ロマの少女たちの死にあまりにも無関心な人たちの姿をとらえた写真は、衝撃をもって受けとめられたらしい。英インディペンデント紙 "The picture that shames Italy"、このての写真が得意そうだという期待を裏切らないデイリー・メール紙 "Pictured: Chilling indifference of Italians sunbathing just yards from the bodies of two drowned Roma children"、運ばれていく棺を写した La Repubblica の記事。
ナポリの大司教は「無関心というのは人間的な感情ではない。過酷な生活によって傷つけられ、子どもには重荷であったであろう偏見によって痛めつけられてきた二人を前にしては、なおのことだ」と嘆いた("Cardinal Crescenzio Sepe: Prejudice in life, indifference in death")。
知らず知らず、私も、だれかの苦しみが見えずにいるのかもしれない。
Tags: イタリア, ロマ, 差別, 人権
2008年 7月 23日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.22
21日の読売新聞「アジア・太平洋地域で単位互換、5年で5千人の留学・交流目指す」およびデイリー・ヨミウリ "Govt wants 5,000 students, lecturers enrolled in 5 yrs in 'Asian ERASMUS" によれば、政府は2009年秋の運用開始を目指して、中国、韓国、ASEAN諸国との間で大学間の大規模な交流スキームを立ち上げる模様。
ヨーロッパの ERASMUS (European Region Action Scheme for the Mobility of University Students) のような単位互換制度および教員交流制度。5年間で5千人の行き来を目指す。英文記事によれば、5月に「福田ドクトリン」として提示された政策の中に入っていたようだ。
大学の中での受け入れ態勢の問題もさることながら、地域として留学生が受容されやすい社会が実現されるまでにも道のりは長い。大学の近所の不動産屋でアパートを紹介されて行ったら、「外国人おことわり」と言われた、という話を先日、留学生から聞いた。本人がそれ以上関わりたくなかったからとはいえ、そのままそれをやり過ごしてしまった私は悪い人。
Tags: 大学, 教育, 留学
2008年 7月 22日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.21
Backers of rape accuser wanted Japan to prosecute - 米軍の Stars and Stripes 紙の記事。2月に起きたアメリカ兵によるフィリピン人女性の暴行致傷事件の調査のため、フィリピンの国会議員が沖縄を訪れていることを伝えている。
来日したのはガブリエラ女性党の Liza Maza 議員。「日本は裁判権を委譲するべきではなかったと思います。最近のアメリカ兵の関与するレイプ事件を見ると、(日本の検察は)起訴をせず、アメリカ軍に任せてしまうことが多いようです。司法管轄の義務を果たしていないわけです」と語っている。
加害者側のメディアで、被害者側の人からこういうふうに言われて、私たちはどのように弁解したらいいのだろう。
事件発生からの新聞報道を振り返る。
関係者によると、男女は17日午後10時ごろ、本島中部の宿泊施設にチェックインした。事件はその後、18日午前9時までの間に発生した。従業員が同日午前9時すぎ、施設内のソファに1人で座っている女性が出血していることに気付き、119番通報したという。女性の知人が県警に110番した。女性は疲れた表情を浮かべ、ぼうぜんとしていたという。
琉球新報 2008年2月21日「比女性暴行米兵、PAC3部隊所属か 犯行後基地に戻る」
女性暴行事件では、ホップストック容疑者は「合意の上だった」と容疑を否認しているという。容疑者は現在、米軍の監視下にあるという。
捜査過程で明らかになった事実については、被害者のプライバシー保護を理由に明らかにしていない。
琉球新報 2008年4月26日「3米兵を書類送検 フィリピン女性暴行、タクシー強盗容疑」
伍長は同月17日から18日にかけて本島中部の宿泊施設で女性に暴行し、けがを負わせたとして、女性暴行致傷容疑で県警が逮捕、送検していた。県警幹部は、捜査は適正だったとした上で「(不起訴処分は)個人的には残念だ」と語った。
琉球新報 2008年5月16日「伍長を不起訴処分 比女性暴行で那覇地検」
女性は事件後、一週間入院し、現在、本島南部の教会で暮らす。睡眠薬を服用し、精神的につらい日々を過ごしているという。「日本では、この事件を隠そうとしている。私自身についていろいろなうわさが出ているようだが、私は悪くなかったと真実を広く知ってほしい」と訴えた。
沖縄タイムス2008年5月24日「米兵暴行に抗議デモ/フィリピン人60人連帯」
今月15日、那覇地検は「行為の場所や行為の前後の状況、両当事者の関係などの事情を考慮した」として、伍長を嫌疑不十分の不起訴処分とした。
女性は「信じられなかった。私より米兵を信じたと思い、心が痛かった」と振り返り、「何もなかったと言うのなら、なぜ今でも毎晩睡眠薬が必要なのか。なぜ不起訴なのか知りたい」と胸中を吐露した。
琉球新報 2008年5月27日「届かぬ声、痛い心 米兵暴行事件被害者インタビュー」
Tags: 沖縄, アメリカ軍, 基地, 性暴力
2008年 7月 21日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.20
2週間近く前の話だが、アメリカの民主党のバラク・オバマ大統領候補が遊説先のジョージアで「アメリカ人はもっと外国語が話せるようになったほうがいい」という話をしたところ、保守派からものすごい反発をくらったらしい。
"It's time for Americans to master a second language" という記事によれば、オバマ候補は、「私も移民の人たちは英語を学ぶべきだと思う。しかし、こうは言えないだろうか。移民の人たちが英語を学べるかどうか心配するのはやめよう。話せるようになるに決まっているのだから。それより、自分の子どももスペイン語が話せるようにしたほうがいい。どうやったら子どもはバイリンガルになれるのか? 子どもたちがみんな二言語以上話せるようになるといいと思う」と語ったという。
とてもまともな意見だと思えるのだが、「反米的(ある記事では、Ameriphobic という言葉が使われていた)」なのだそうだ。
Tags: アメリカ, 言語, 移民
2008年 7月 20日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.19
Colombia misused Red Cross emblem in hostage rescue - 南米コロンビアで、武装ゲリラ組織 FARC によって拉致された人たちを政府が今月2日に奪還した際、作戦に参加した兵士が赤十字の紋章の付いた上着を着ていたことが問題となっている。
兵士が赤十字職員の身分を騙って行動するのは、ジュネーブ条約違反である。ウリベ大統領は、紋章の着用は当初の計画には入っておらず、兵士が自分の判断で行なったものだと説明し、遺憾の意を表明している。
戦争の絶えない世界において、赤十字の果たす役割はものすごく大きい。その信頼を軍が悪用するのは許されないことだ。「ようやく奪い返したというのに、過ちだったというのか?」とか言う声に負けて、国が交わした約束を反故にすることが当たり前になったりするとよくないと思う。
Tags: コロンビア, 拉致, 赤十字
2008年 7月 19日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.18
先月の初めに救急車で病院に運ばれて、そのまま入院していた連れ合いが昨日、6週間ぶりに家に帰ってきました。さっそく、家の掃除のしかたが不十分だの料理の手際が悪いだの、文句が多いです。次に入院する時には、口の悪いのも治して来てほしいと思います。
この人は十年ほど前にも大きな手術をしたのですが、その時は費用の3割負担ぶんを一旦払って、後で高額医療費の還付を申請しました。今回は、還付で戻ってくるぶんを差し引いた額(自己負担限度額。1か月あたり、1%負担+約8万円のような計算。計算式は、たぶん、これ)だけを窓口で払えばよくなっていました。
これは昨年4月に導入された「70歳未満の者の入院に係る高額療養費の現物給付化」による変更です。厚生労働省のサイトに概要や告知文があります(十分に宣伝されていないように思えます)。病院での支払いの前に健康保険限度額適用認定証というのを自分の入っている健康保険からもらっておかなければなりません。
金持ちでなかったら、おちおち病気にもなれないと感じてしまう世の中。後で戻ってくると言っても、手術代のようなまとまったお金を用意できない人はたくさんいるはずです。限度額適用認定証の制度は、一歩前進だとは思いますが、あらかじめ申請しなくてはならないというのは、望ましい形態ではないと思います。一人暮らしで入院してしまった場合など、どうやって手続きをすればいいというのでしょう。ぜひ、もう一歩、福祉を前に進めたいものです。
Tags: 医療, 保険, 福祉
2008年 7月 18日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.17
2006年の1月にイラクで拉致され、2か月半後に解放された新聞記者 Jill Carroll さんがイラクとアフガニスタンから帰ってきたアメリカ兵の起こす犯罪について書いている: '"We're Going to Be Paying For This For a While": Soldiers Bring the War Home'。
2003年から2007年までの5年間に約4万人の帰還兵が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けている。おそらく30万人の帰還兵がPTSDを患っているだろうとのことだ。警察沙汰を起こす帰還兵が後を絶たない。家庭内暴力。酒場での乱闘。戦場での興奮を追体験するため、酒やドラッグを使った上で猛烈なスピードで車を走らせる。2004年の時点で既に、服役囚の4%がイラクとアフガニスタンの帰還兵だった。ベトナム戦争からの帰還兵が服役囚の6%を占めていることから考えれば、イラクとアフガニスタンの戦争も、長い間、社会に傷跡として残っていくだろう。
国を守るためだと言って始めた戦争が、逆に、その社会を壊しかけている。
Tags: アメリカ, 戦争
2008年 7月 17日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.16
かねてからの火種であった領有権争いが一気に緊迫化している。カンボジアとタイの国境線上にある Preah Vihear 寺院近くのカンボジア領内に15日、タイ軍の部隊が侵攻したと伝えるAP電:"Thai Troops Enter Cambodia, Official Says"。タイ軍関係者は取材に対し、部隊はタイ領内とどまっていると答えた。Preah Vihear 寺院への主権を守るための行動であるとも述べている。カンボジア軍側は「最初に発砲はしない」と述べている。
記事によれば、Preah Vihear 寺院は11世紀の建築で、アンコール・ワットなどと似た様式。1962年に国際司法裁判所がカンボジアへの帰属を認める裁定をしている。先ごろ、カンボジアの申請に基づき、ユネスコの世界遺産に指定された。それに伴い、カンボジア側が国境を封鎖していた。
Google Maps へのリンクを張る。この地図ではタイ領となっているようだ。写真は paniek さんが Flickr で CC-by-nc-nd で公開しているもの。写っているのはカンボジアの旗だろう。
遠くから見ていると、何よりもとにかく平和的に解決してほしいと願うが、この領土紛争も、当事国には、熱く、そして頑なになっている人がいるのだろう。「りゃんこ島」もしかり。
Tags: カンボジア, タイ, 領土紛争
2008年 7月 16日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.15
Students chart zigzag routes, study finds - カナダの全国紙グローブ・アンド・メールの記事。連邦政府統計局が今月下旬に発表する大学生の動態調査の概要を報じている。
調査によれば、入学した大学で卒業する学生は半数を若干上回る程度。小規模な大学(college)では、4人に1人が休学したり、5年以上かけて卒業したりする。5人に1人が中退する。大規模な大学(university)では、5年以上かけて卒業したり、途中で大学を替わったりする人が3人に1人にのぼる。中退率は約10%。
これほど多くの学生が学校を替わったり休学したりするのは、大学に来て幻滅したり、入る前に十分に情報を得ていなかったり、そもそも大学に来る準備ができていなかったりする学生が多いということではないか、と調査にあたった研究者が述べている。
うーん、たぶん日本では休学したり転学したりする人がもっと少ないが、だからと言って、満足度が高いというわけでもないような気がする。
Tags: カナダ, 大学, 教育
2008年 7月 15日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.14
Spain Wages War on Machismo Attitudes - スペインのサパテロ内閣で4月に平等大臣(スペイン語の Ministra de Igualdad をそのまま訳してみた。日本風に言えば男女共同参画担当大臣か)に任命された31歳(スペイン史上最年少)の Bibiana Aido 大臣の奮闘ぶりを伝えている。
伝統的な男尊女卑の価値観が崩れていく中、戸惑う男性たちのための電話相談窓口が設けられるらしい。家庭内暴力加害者が、暴力をふるう前に攻撃性を中和させるための窓口として企画されたものだ。「電話などでDVが解決するわけがない」という声もあるようだが、罪を犯す者にも向き合い、手を差し伸べようという姿勢は好感が持てる。
国会での演説では、「議員、メンバー」を意味する miembro が男性名詞であるのに男性女性どちらも指すことをよしとせず、女性名詞を造語して、議員たちに "miembros y miembras" と呼びかけた。もちろん、保守派からは「文法を知らないやつだ」と非難されているらしい。
社会党政権になって、スペインって、ほんとに面白い国になったなあと思う。
これまでに書いた関連記事:
Tags: スペイン, ジェンダー
2008年 7月 14日 午前 12:11 | Permalink
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2008.07.13
Jury: Black Neighborhood Was Denied Water Service - AP電。オハイオ州 Muskingum 郡の Zanesville という町には1956年に水道が引かれたが、Coal Run という一角には、2003年まで水道が供給されていなかった。Coal Run はアフリカ系住民が住んでいる地域だ。半世紀にもわたる待遇の差が人種差別によるものであったという評決が裁判で出された。
住民たちは、井戸を掘ったり、雨水を蓄えたりして暮らしていたという。67名の原告が合計1,100万ドル(約12億円)の補償金を受け取ることになる見込み。郡と町は控訴する構えを見せている。
被告側は、町に住んでいる白人の中にも水道が届いていない人がいることなどを反論としていたらしい。日本での戦後補償の裁判だったら、これに加えて、(人種差別は)「当時は違法ではなかった」とかいう論法が出てくるだろうなあ、と思った。
Tags: アメリカ, 人種差別, 水
2008年 7月 13日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.12
裁判員制度導入に向け、被告が外国人で、陳述等が通訳を介して行なわれる模擬裁判が千葉地裁で行なわれたそうだ(東京新聞、毎日新聞、読売新聞、英文の共同電)。
裁判員による裁判は、日程が集中して行なわれるため、通訳にも体力的な負担になることが心配だそうだ。この模擬裁判でも、集中力は限界に達していたという。今までの裁判とは比べものにならないぐらいの大変さが待ち受けており、最低でも二人の通訳が交替であたる態勢の確立が必要なようだ。
2007年の実績では、外国人が被告となった裁判で、今後、裁判員制度の対象となるものは、全国で210件と少ないらしい。少ないからと言って、準備がおろそかであったら、法の下の平等は保証できない。話者の多くない言語にどう対処していくかなど、課題は多い。
Tags: 裁判, 裁判員制度, 外国人, 通訳
2008年 7月 12日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.11
占領者イスラエルに対し多種多様で独創的な抵抗を続けてきた西岸地区のビリーン(Bil'in)村が、今度は海外での裁判闘争に挑む。1967年にビリーン村から奪われた土地に入植地を造成し住宅を販売しているカナダの会社2社をモントリオールの裁判所に提訴したのだ。
第四ジュネーブ条約では、占領者は民間人を占領地に移住させてはならないと定められており、その違反は国際法的に戦争犯罪とされており、またカナダの人道に対する罪および戦争犯罪法に照らしても違法であるというのがビリーン村の主張で、入植地建設の停止、既に作られた入植地の解消、そして賠償を求めている。被告はケベック州の Green Park International Inc. と Green Mount International Inc. で、西岸地区最大の入植地 Modi'in Illit に投資し、開発を行なっている。
今回の裁判については、AP電 "Village sues builders of Israeli settlement" で知った。Palestinian News Network にも記事がある。ビリーン村のこれまでの活動については、p-navi info に詳しい。
Tags: パレスチナ, イスラエル, 占領
2008年 7月 11日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.10
Teachers, students battle Chile police - チリの首都サンチアゴでは、8日、政府の教育改革案に反対する生徒と教師の大規模なデモがあり、投石と機動隊による高圧放水の混乱の中、44人が逮捕された。逮捕者の大多数は生徒らしい。
既に下院を通過し、上院に送られている改革案は、公立学校への政府の交付金の流れを変えるものだが、それに反対している生徒や教師は、この改革が実行されれば、チリの教育の民営化が更に進み、無償教育制度が崩壊し、貧しい家庭の子どもたちは教育の機会を奪われてしまうと主張している。
チリでは、ここ1、2年、高校生によるデモが繰り返し行なわれている。6月にも大きなデモがあったばかりだ。
それに比べて、日本の学校の生徒や学生たちは、なんとおとなしいのだろうと思う。おとなしいというか、自分たちの教育に何がなされようとしているか、はなはだ無関心なように思える。これは、一つには、社会が彼ら彼女たちを子ども扱いしていることの反映だろうと思う。何かが転機になって、みんなの意識が変わるのを待つしかないのだろうか。いや、そんなことはないはずだ。
Tags: チリ, ラテンアメリカ, 教育, 抵抗
2008年 7月 10日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.09
イラクのマリキ首相がアメリカとの間で地位協定ではなく短期的な覚え書きを交わしたいとし、その中にアメリカ軍の撤退時期を書き込むように求めると発言した。このことは日本時間で7日の夜に、ロイターが "Iraq says US deal could include withdrawal timetable" として速報した。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、日本時間の8日の昼ごろだと思うが、"Iraqi Favors Short Security Pact With U.S." という記事の中で、「撤退の日程という表現は使われているが、アメリカ軍がイラクを離れる詳細な日程が話し合われているようではない」と書いている。まともに取り合うべきではないという意味だろう。
ロイターは日本時間で8日の夜、"Iraq insists on U.S. withdrawal timetable: official" という記事を発信し、その中で Mowaffaq al-Rubaie 安全保障担当官から撤退時期の明確化が譲れない要求であるという言質を取っている。
イラク開戦への日々にも、ニューヨーク・タイムズはブッシュ政権の主張をそのまま鵜呑みにしたような報道が多かったらしい。今回も、そのあまりに体制寄りの報道姿勢には、かなり不信感をいだいた。
Tags: イラク, アメリカ軍, 占領
2008年 7月 9日 午前 01:01 | Permalink
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2008.07.08
East Timor police arrest 21 in luxury cars protest - 東ティモールの国会は65名の議員全員にトヨタのランドクルーザーという高級車を支給することにしたそうで、それに抗議して学生ら約千人が首都ディリでデモを行なった。催涙弾が用いられ、21人が逮捕されるなど、かなり厳しく取り締まられたらしい。
世界の最貧国の一つで人々が貧困や失業にあえいでいるのに、権力者たちがただで SUV を手に入れるというのは、抗議が起こらないほうがおかしいだろう。デモに参加したのは、学校に通うことができる、言ってみれば、ある程度恵まれた若者たちだ。うまく言い表わせないのだが、自分たちの歴史的な役割をしっかりと認識している若者たちだと言えるように思う。
デモは今週いっぱい続く。
Tags: 東ティモール, 学生運動
2008年 7月 8日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.07
おそらく多くの人が私と同じ戸惑いをもって読んだであろう、この記事:「通天閣:緑色にライトアップ エコ発電促進で11日まで」(毎日新聞)。風力発電、太陽光発電などのグリーン・エネルギー普及を呼びかけるため、緑色にライトアップさせるんですって。地球に優しくしたいなら、
なぜ消さないんですか!
消したほうがいいというのは分かっているみたいで、今日は2時間だけ消灯するそうです。また、緑色に点灯している間の電力は風力発電でまかなっているとのことで、風力発電がいいというのは分かっているみたいですが、この企画は7日間だけだそうです。やることが何もかも中途半端なような。
どこかの国で緑化推進だといってハゲ山に緑色のペンキを塗ったという笑い話のような話を聞いたことがありますが、よその国をもう笑えませんね。ああ、恥ずかしい。いや、もしかするとこの通天閣の企画は、「消せよ!」というツッコミを期待した関西ならではのボケなのかもしれません。うん。考えれば考えるほど、その確信が強まってきました。
昼間の通天閣界隈の写真は kamoda さんが Flickr で CC-by-nc-nd で公開しているものです。
今日はところどころフォントサイズを変えてみました(DoX さん風のつもり。ちょっと意見が違うと思うけど、トラックバックを送ってみます)。本当は、色も変えるとグ〜。
Tags: 大阪, 環境, 省エネ, 低炭素社会
2008年 7月 7日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.06
南米エクアドルのコレア大統領が同国内にあるマンタ米空軍基地の租借更新に応じない姿勢を明確にしたため、アメリカは中南米における代替基地の確保を目論んでいる。パナマが有力な候補地と見られていたが、パナマの Daniel Delgado 法務大臣は、このほどロイターのインタビューに応じ、パナマとアメリカの間には過去に問題が多くあり過ぎたとして、米軍基地が作られる可能性はないと語った。ロイター電 "Panama says no to U.S. military base"。
記事によれば、他の候補地はペルーとコロンビアらしい。先週、ボリビアのモラレス大統領が「ペルーが米軍基地を作ろうとしている」と非難し、ペルーのガルシア大統領が「ペルーには米軍基地はない」という、はぐらかしのような反論をして、ちょっとした舌戦になっていた(BBC "Peru leader rebukes Bolivia head")のは、こういう背景だったのか。
とにかく、きっぱりと「基地なんか嫌だ」と言える国を見習おうではないか。
Tags: ラテンアメリカ, アメリカ軍, 基地
2008年 7月 6日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.05
テレビを見たら、ウナギの産地偽装がトップニュースだった。ついこの間もやっていなかったっけ? あれは牛肉か。さて、フランスから、ほんのちょっと関連したニュース。
Bordeaux St Emilion wines stripped of top classification - AFP電。ボルドーワインの代表的な産地、サンテミリオン地方が行なってきた Grand Cru 格付けが公正に行なわれていないとフランスの行政裁判所が判断し、サンテミリオンのワインは2006年産から「グランクリュ」を名乗れなくなった。
サンテミリオンの格付けは10年ごとに見直されるが、2006年の見直しの際、不合格となった畑が審査が不公平だと申し立て、それが認められたということらしい。知らなかったのだが、メドック地方でも昨年、同様に格付けが取り消されたそうだ。
私がもう少し物知りだったら、産地や格付けといった記号の価値だとか、共同幻想としての消費主義とかについて考察して、かっこいいブログになるんだけどねえ。現実の私は、サンテミリオンの値下がりを楽しみにしているだけなのであった。上掲の記事には、格付けによってワインの価格は3割上がると書いてある。だから格付け取り消しで3割下がるはず(甘いか)。物価高のおり、うれしい話になるといいのだけど。
Tags: フランス, ワイン, 消費社会
2008年 7月 5日 午前 12:01 | Permalink
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2008.07.04
Finland mulls tougher anti-racism rules for internet - フィンランドの国営 STT 通信社の記事。フィンランド政府がインターネット上の差別的発言の取り締まりを強化する方針を決めたと伝えている。地元紙 Helsingin Sanomat によると、例えばブログのコメントに人種差別的な内容が含まれていた場合、ブロガー自身にそれを削除する義務があることなどが定められるらしい。この短い記事では事情がよく分からないが、差別的なブログ自体には既に何らかの歯止めがかけられているようだ。それだけでは十分な抑制効果が得られていないため、ルールの明確化を行なうらしい。
権力による規制はあまりいいことだとは思わないが、その半面、日本でも何か手を打ったほうがいいようにも思う。
Tags: フィンランド, レイシズム, 差別, 言論の自由
2008年 7月 4日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.03
1日付け琉球新報の「イスラエル、独、オランダ軍 北部訓練場で演習検討」という記事が気になった。ジャングル戦闘訓練施設である米軍北部訓練場でアメリカとともにドイツ、オランダ、そしてイスラエルが訓練を行なうことを検討しており、先月、これらの国々の軍と自衛隊が視察を行なったらしい。
「テロとの戦争」の掛け声のもと、「有志連合」による共同行動をもくろむアメリカの戦略に日本が大きく巻き込まれようとしているようだ。むろん、日米安保条約や日米地位協定はアメリカ軍以外の軍隊に基地の使用を認めていない。しかし、2日付けの続報によれば、外務省は将来的に他国軍による使用を「100パーセント否定はできない」と述べたそうだ。
自衛隊の平和維持活動の是非とか、集団的自衛権が認められるかの議論とかを突き抜けた次元で、福田政権は日本を軍事的な介入のできる国にしようとしているということだろう。非常に危険だ。
Tags: 安保, 沖縄, アメリカ軍, 多国籍軍, 平和
2008年 7月 3日 午前 12:20 | Permalink
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2008.07.02
Denmark world's happiest country, survey finds というロイター電。アメリカ政府の肝いりで行なわれた97か国の調査で、デンマークが「最も幸せな国」だという結果が出たと伝えています。世界中で35万人の人に「あなたは幸せですか」「最近、生活に満足していますか」と聞いて調べたそうです。
デンマークに続いて、プエルトリコ(ほう)、コロンビア(えっ?)、北アイルランド(ふむ)、アイスランド、スイス、アイルランド、オランダ、カナダ、スウェーデン、オーストリアなどが上位を占めていたようです。アメリカは16位と書いてありますが、日本への言及はありません。気になりますねえ。研究費を出した米政府の National Science Foundation の報道資料にも日本の名前は出ていません。幸福度に貢献する要因として経済的な繁栄、民主主義、平和、個人的な自由などが挙げられていますから、わりといい位置にいるだろうとは思うのですが(多様性への寛容も挙げられています。このへんはちょっと心配)。これを書いている時点では、論文が発表された Perspectives on Psychological Science 誌も、目次がまだ古い号のままなのですが、あと数時間待てば、ここから論文全体か要旨が読めるようになると思います。楽しみですね。
私にとっては、ここが一番幸せな国です。あなたに会えるから。…という口説き文句を考えてみました。いかがでしょう。
Tags: 幸せ, デンマーク
2008年 7月 2日 午前 12:00 | Permalink
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2008.07.01
インドのダラムサラで3月10日に始められたチベット難民による行進は、6月27日の金曜日、チベット国境から10kmほどの町で終わった。Phayul の記事 "March to Tibet concludes as jailed marchers released"。
行進が国境に近づくにつれ、参加者の逮捕拘束が多くなっていった。「インド政府を危険にさらさない」という誓約のもとに逮捕者が釈放されるのを待って、この日、解散式が行なわれた。
Tags: チベット, 占領
2008年 7月 1日 午前 12:11 | Permalink
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