2008.02.29
半世紀ほど前、サリドマイド(thalidomide)という化合物を主成分とする薬が西ドイツの Grünenthal という製薬会社から世に出た。サリドマイドは日本でも、つわりの緩和に効果があるとされて販売された。この薬を服用した女性から、腕や脚などに異常を持つ赤ちゃんが生まれてきた。サリドマイドには重大な副作用があったのだ。
Support for Thalidomide Victims to Double - 今、障がいを持って生まれてきた子どもたちは人生の半ばを折り返し、支えてきてくれた親を失いつつある。障がいゆえに生活も安定しない。このたび、ドイツでは連立与党(社会民主党とキリスト教民主同盟)間の合意が成立し、サリドマイド被害者への支援予算を年間1,500万ユーロ(約24億円)増額することが決定した。グリュネンタール社も支援に加わるように政府からの働きかけも続いている。
現在、ドイツでは2,870人の被害者が障がいの程度に応じて、政府とグリュネンタール社が設立した基金から月額で最高545ユーロ(約8万7千円)の支援を受けている(グリュネンタール社は基金設立後には全く出資をしていない)。今回の与党合意は、この給付額をほぼ倍増するものとなるようだ。
日本では、309人の被害者がいて、国と製薬会社に対しておこされた裁判では、1974年に和解が成立したようだ(例えば、薬害資料館サイトのサリドマイド事件のページを参照)。
現在、日本の被害者のかたがたがどのような状況にあり、どのようなことが課題になっているのか、今の私には分からない。ドイツと同じように新たな取り組みが必要となってきていることも十分考えられる。サリドマイド被害者のような弱者(強い精神で負けずに生きてきたかたがたを「弱者」と呼ぶことは適当ではないかもしれないが)に手を差し延べるために国家という仕組みはあり、往時には思いも寄らなかったことに対処するために私たちは絶えず衆議するのだ。サリドマイド被害者たちのことをもう一度思い出そう。
Tags: サリドマイド, 薬害, 福祉
2008年 2月 29日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.28
Erdoğan's counter offensive against Armenian genocide claims (エルドアンが大虐殺に関するアルメニアの主張に反撃)という Turkish Daily News の記事がトルコの Recep Tayyip Erdoğan 首相が最近行なった演説の内容を伝えています。ここで言う「大虐殺」「ジェノサイド」とは、1915年前後に当時のオスマン・トルコ帝国が数十万人のアルメニア人の命を奪ったとされるものを指します。
まず、記事の背景の現代史についてまとめます。1990年代のはじめにソ連が解体し、トルコの東隣にあるアルメニアと、そのさらに東隣のアゼルバイジャンも独立しました。アゼルバイジャンにはアルメニア系の住民が多く住むナゴルノ・カラバフ(Nagorno-Karabakh)という地方があり、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンからの独立を宣言しました。これをめぐり、アルメニアとアゼルバイジャンは戦争状態となりました。ナゴルノ・カラバフの中部にホジャリ(Khojaly、トルコでは Hocali と記すらしいです)という町があります。1992年2月25日、アゼルバイジャン系住民の飛び地になっているこのホジャリの町で数百人もの住民が殺される事件が起こりました。虐殺はアルメニア系武装集団によって行なわれたと考えられています。1994年に停戦が発効しましたが、現在もアゼルバイジャンの一部地域はアルメニアの占領下にあります。
トルコのエルドアン首相はホジャリ事件の記念日にあたり、与党AKPの会合で演説し、アルメニアはトルコにものを言う時(つまり、1915年のアルメニア大虐殺を糾弾しようとする時)、この事件のことを思い出してから言えと語りました。エルドアンはトルコ人がアルメニア人を虐殺したという主張に反駁(詳細は書かれていません)した上で、以下のように述べました。世界に向けて大虐殺をでっち上げて情報戦を行なうなら、まず鏡を見ろ。もし鏡の中にジェノサイドが見えるなら、それはお前がやったものだ。そもそも大虐殺を行なうなどというのはトルコ的ではない。わが民族の特質は、そのような犯罪を起こすはずがない…
自己を客体化する(自分たちのやっていることを他の人が見るとこう見えるのだと認識できるようになる)のにいいかな、と思ってこの記事を書き出したのですが、なかなか難しいですね。こんな歪んだ意識を持った人を首相に選んでしまう人が多数派である国に暮す人々は大変だろうなあ、と感情移入してしまいます。
Tags: トルコ, アルメニア, ジェノサイド, 歴史認識, 歴史修正主義
2008年 2月 28日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.27
中米のコスタリカがパレスチナを国家として承認し、国交を結んだ。今月5日のことだ。コスタリカの新聞だけでなく、英語でも報道があったようだが、全く気がつかなかった。昨日になってイスラエルの報道で知った。
折しも、イスラエルのオルメルト首相が来日中だ。日本の外務省が推進している「平和と繁栄の回廊」構想について話し合うのだろう。イスラエルによるパレスチナの不法な占領を固定化し、イスラエルの利権を恒久化しかねない危険な計画である。
日本の政府もコスタリカの政府も、パレスチナとイスラエルが対話の席に着くことを望んでいると語る。その席を公正で対等なものにするためには、たぶん、コスタリカの選んだ道筋のほうが正しいだろう。
Tags: パレスチナ, コスタリカ, イスラエル, 占領
2008年 2月 27日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.26
Why We'll Play Pyongyang - 20日にウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されたニューヨーク・フィルの指揮者 Lorin Maazel さんの文章。音楽は非政治的な姿勢に徹しつつも、「諸国民とその文化を共通の場所に導き、気がつかぬうちに、しかし後戻りを許さぬような力強さで平和的なやり取りを根付かせる」ことができるという信念を語るとともに、冷戦下で、人権を尊重する国アメリカから来たオーケストラがソ連や東欧諸国の人たちに勇気を与えたことに触れ、今回の北朝鮮公演への期待を述べている。
ピョンヤンでのコンサートは今日の午後6時開演。演目にはワグナーの「ローエングリン」第3幕序曲、ドボルザークの交響曲第9番、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」が並べられている。北朝鮮国内でラジオで中継されるほか、韓国はMBCがテレビで生中継するらしい。アメリカでは、一部の地域で中継され、木曜日に公共放送のPBSが全国で放映する。PBSのサイトには、ウェブでライブ・ストリーミングすると書いてある。中国、ドイツなどでも放映されるらしい。
ネットのテレビ番組表を見る限り、残念ながら日本での放映の予定はまだないようだ。「拉致問題があるのに北朝鮮からの中継なんて、もってのほか」みたいな圧力があるのかなあ。第二次世界大戦のころに「英語は敵性語だ。けしからん」と言う人たちがいたというのと変わらない気がする。
写真はコンサートが行なわれる東平壌大劇場。Pricey さんが Flickr で CC-by-nc-nd で公開しているもの。昨年4月の撮影。韓国の聯合通信の記事に建物の内側の写真がある。
Tags: 北朝鮮, 音楽
2008年 2月 26日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.25
For the homeless, keys to a home - ボストン・グローブ紙の記事。アメリカでは、ホームレスの問題に対する解決策として、家やアパートを与えるという手段が普及しつつあることを伝えている。記事は、この対策の評価すべき点、期待はずれな点の両方に触れている。
ニューヨーク市などで試験的に行なわれた住居供与では、医療、麻薬依存症対策、犯罪による収監などにかかる費用が減少するという肯定的な結果が出たが、マサチューセッツ州での取り組みでは今のところあまり効果が見られないケースも多いようである。
長年の路上生活の後で、ベッドで寝る、トイレを使うといった家の中の生活習慣になじめない人もいるし、何よりも一人暮らしがさびしいという訴えが多い。
すべてがバラ色ではないのは間違いないが、住居供与の予算規模も一つの州だけで11億円程度のものが計上されており、「何とかしよう」という意志が強く見える。
Tags: アメリカ, ホームレス
2008年 2月 25日 午前 12:28 | Permalink
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2008.02.24
Soldier gets 6-month sentence for refusing to deploy to Iraq - 海外に駐留している兵士やその家族向けにアメリカ軍が発行している新聞 Stars and Stripes で読んだ記事。イラク派兵を拒否した兵士が軍法会議で6か月の禁固刑と降格、不品行による除隊の処分を受けたことを伝えている。
Benjamin Stewart さんは2004年から2005年にイラクのモスルに派兵された。「母親と子どもが銃撃戦に巻き込まれて殺されるのを見た。子どもたちが爆発で手足を失うのを見た」「私は平和主義者でもなく、イラクの戦争に反対もしていない。この戦争は正当なものだと考えてきた。しかし、もし自分がもう一人でも人を殺したら、私は生きていけなくなる」という発言が紹介されている。
彼の妻は、イラクから帰ってきた彼がまるで人が変わったように「高速道路の真ん中で車を止めて、他の車に向かって大声で訳の分からないことを叫んだりしていました。でも、ある日を境に彼は…イラクに行く前の彼に戻っていったのです」と証言している。
どんなことが彼の心をよぎったのかは分からないが、今、彼は再びイラクに行かなくて済んだことを、静かな心で、本当に喜んでいるのだろうと思う。
Tags: 戦争, イラク
2008年 2月 24日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.23
German intellectuals: Israel's creation made Palestinians victims of Holocaust - イスラエルのハアレツ紙が19日に掲載した記事。ホロコーストへの責任ゆえにドイツの外交が無条件にイスラエル支持となっていることが中東問題の解決を妨げているとイスラエルで開かれた討論会で4人のドイツ人学者が発言したことを伝えている。彼らの主張を別の言葉で言い換えるならば、ホロコーストこそがパレスチナの人々への人権侵害を作り出したと言える、ということになるだろう。
この主張を行なったのは Reiner Steinweg (平和学・紛争研究、リンツ)、 Gert Krell (政治学、フランクフルト)、 Georg Meggle (哲学、ライプチヒ)、 Joerg Becker (政治学、マルブルク)の4人で、彼らの主張は「友情と批判」(Freundschaft und Kritik)というマニフェストにまとめられている。
討論会では、イスラエル側からの反論として、「戦後ドイツのイスラエル支援は、ドイツを国際社会に復帰させる役割を果たしたわけであり、ドイツ自身のためのものであった」「ホロコーストが中東問題の原因だと主張するのは、ホロコーストへの罪の意識をパレスチナ人に投影しているだけなのではないか」といった意見が出たとも報じられている。
「戦後責任」の取りかたと現在の人権状況という点では、私たちにも大いに関係のある問題だ。日本と中国の関わり、そしてチベットやウイグルの状況に置き換えて考えてみると、今の状況にまで責任を感じるというのは、なかなか言い出しにくい(あるいは、広汎な共鳴を得にくい)ことのように思われる。厚顔な否定論者と一線を画しながら、彼らが揶揄するのと同じ状況に関与していこうとすることの難しさがそこにはある。
Tags: イスラエル, ドイツ, ホロコースト, パレスチナ
2008年 2月 23日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.22
北海道洞爺湖サミットに先駆け、6月13日と14日に大阪で財務大臣会合が、そして26日と27日に京都で外務大臣会合が開かれます。京都に住む身としては、グローバリゼーションに対抗する声をあげて世界の人々の耳に届けたいものです。
体制側の準備は着々と進んでいます。京都新聞によると、このほど京都、滋賀、奈良の3府県警合同の警備訓練が行なわれました。「外国人を対象にしたデモ規制の訓練も盛り込まれ、隊員が英語や韓国語で違法行為を警告するなどして本番に備えた」、「訓練では、蛇行や渦巻き状に行進したり、座り込むなどの違法な行為を続けるデモ隊に、機動隊員が盾で動きを規制したり、公務執行妨害で現行犯逮捕するなどした」、「反グローバリズムなどを訴える外国人のデモ参加を想定して、大型画面付きの車両を走らせ、英語の警告文を掲示して違法行為を戒めるなどした」そうです。
うーむ。反語的に「家でブログなんか書いていないで、街に出ろ」と言われているような気もします。
Tags: 洞爺湖サミット, G8, 京都, もう一つの世界は可能だ
2008年 2月 22日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.21

猫は気楽そうです。写真は、今年11歳になる恩姫ちゃんです。おかげさまで元気にしています。
それにひきかえ、私は、最近の出来事にすっかり動揺してしまって、自分が憤っているのか、悲しんでいるのか、悔しがっているのか、何も分かりません。
体の自由を無理矢理奪われた沖縄の少女。一千倍もある大きな船によって小さな漁船から冷たい海に投げ出された親子。どちらも、小さき者の日常が圧倒的な力と交差したところで起こった痛ましい事件です。
これらと同じくらい鮮烈なことが、イラクやパレスチナで、スーダンやコンゴで、毎日のように起きているのだと思うと、息をすることすら辛くなります。
疲れてしまいました。
力によって倒された人たち、それを嘆く人たちのために働こうという意志と希望を、明日はまた取り戻せますように。
Tags: 恩姫, 猫
2008年 2月 21日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.20
キューバのグランマ紙に19日に掲載された記事 "Mensaje del Comandante en Jefe" およびその英訳から:
「私たちの革命の運命に関して非常に重要な合意を採択する場である議会に、何日か前、私を議員として選んでくれた親愛なる同胞たちにお伝えする。私は国家評議会議長および最高司令官としての職を望みもせず引き受けるつもりもない―繰り返そう、望みもせず引き受けるつもりもないのだ。」
「打ち負かすべき敵は非常に強い。しかし、私たちは半世紀もの間、その敵が手を出せない状態にすることができた。」
「これはみなさんへのお別れではない。思想の闘いの中で一人の兵隊として戦い続けるのが私の唯一の望みである。」
「ありがとう」
「フィデル・カストロ・ルス 2008年2月18日 午後5時30分」
彼が「思想の闘い」を続けることができるようになることを私は心から望む。しかし、私は、帝国主義者たちが機関銃や戦車や爆弾による戦いをしようという誘惑に負けるに違いないという考えを頭の中から締め出すことができない。後になって、「あの時は心配のし過ぎだったね」と笑えるようになったら、私はどんなに幸せだろう。
Tags: キューバ, アメリカ
2008年 2月 20日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.19
This is Kroo Bay - Save the Children というイギリスの団体が18日に公開したシオラレオネの首都フリータウンにあるスラム街の仮想ツアーサイト。左ボタンを押しながらマウスを動かして、見る方向を変える。「?」のアイコンをクリックするとその場所や人に関する動画やスライドショーを見ることができる。場面は川のほとり、サッカーグラウンド、病院、家の四つで、「↑」アイコンをクリックして移動することができる。
30歳の母親の話を聞くリンクには、「注意。とても悲しい」と書き添えてある。よい医療を受けるためには高いお金が必要であり、彼女は子どもに診察を受けさせることができなかった。スラム街の病院はただで診てくれるが、薬が足りていない。この Kroo Bay のスラムでも、シエラレオネ全体でも、幼児の死亡率は非常に高い。
画面右上の Save a life のリンク先でクレジットカードで寄付ができる(.jpのメールアドレスは受け付けてもらえないようだった)。このサイトを知るきっかけになったロイター電 "Child campaign brings Freetown slum to Internet" によると、5ポンド(約1,000円)の寄付でマラリア予防用の蚊帳が1枚贈れるらしい。
Tags: アフリカ, シエラレオネ, 貧困
2008年 2月 19日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.18
Canada sends ex-SS guard to Italy - ナチス・ドイツの兵隊だった Michael Seifert がこのたびカナダから送還処分となり、イタリアで収監された。「ボルツァノの処刑人」と呼ばれたザイフェルトは、1944年から45年にかけてイタリア北部 Bolzano の収容所で多くの拷問やレイプ、殺害などを行なったとして、2000年にイタリアの軍法会議で終身刑を言い渡された。現在83歳。年齢を考慮して、刑務所ではなく家屋への拘束による刑の執行が予想されている。イタリアでの報道は、La Repubblica の "Estradato in Italia il boia di Bolzano Nel lager era il 'Micha' del terrore" (15日)、"In Italia il boia di Bolzano Michel Seifert in carcere" (16日)など。
こういう戦争犯罪は犯罪の行なわれた場所(この場合、イタリア)で裁かれるのだとか、軍法会議で裁かれるのだとか、(おそらくイタリアの外にずっと住んでいたため)時効にはならなかったのだとか、話の要素一つひとつに驚きを感じた。
よく考えてみれば当たり前のことなのだが、最大の驚きは、「30万人という数字は大きすぎるから、全部まぼろし」といった幼稚かつ大雑把な言説が繰り広げられているのと同じ世界の中で、戦時における一人の人間の罪をきめ細かに明らかにする営みが続けられているということだ。
60年以上が経っても個人の責任が問われるという現実をしっかりと把握しよう。総理大臣が口先だけのお詫びを述べたからといって「もういいだろう、いつまで謝らせるんだ」などと開き直ることが許されないのが現実なのだ。仲間内だけで通用する甘い妄想の中に引きこもっている人たちに対して、このことを強く訴えたい。
Tags: イタリア, ナチス, 戦争犯罪
2008年 2月 18日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.17
今日、コソボが独立を宣言すると報道されています。AFP電 "Kosovo PM confirms independence to be declared on Sunday" によれば、Hashim Thaci 首相がその予定に言及したとのこと。現地の午後3時(日本時間午後11時)ごろ宣言が行なわれるという報道もあるようです。セルビアの独立系放送局B92の "Priština set to announce secession tomorrow" には、プリシュティナ市内に「独立の塔」が建てられる予定と書いてあります。街にはアルバニア、アメリカ、西欧諸国の旗がたなびいているとのこと。
これに対し、セルビア政府は、コソボ内のいくつかのセルビア人居住地域に閣僚を派遣して独立宣言に備えています。こちらは午後1時に記者会見を開き、独立を認めない立場を明らかにする段取りです。"Cabinet ministers travel to Kosovo tomorrow"。記者会見の席上、「コソボ行動計画」を発表すると見られますが、今のところ、その計画が軍事的な要素を含むかどうかは分かりません。
平和な日になることを切に祈ります。
Tags: コソボ, セルビア, ナショナリズム
2008年 2月 17日 午前 02:06 | Permalink
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2008.02.16
Burning pride - 韓国のハンギョレ新聞英語版12日付けの社説。元の韓国語はこれ。崇礼門(南大門)の焼失にあたり、文化財の防災対策の不足を論じている。
冒頭、日本の植民地となっていた1922年に日本政府が光化門の取り壊しを計画した際、美術家の柳宗悦が「失はれんとする一朝鮮建築の為に」を著し、その文章の呼んだ感動が日本政府を動かし、光化門が救われたことに言及している。
侵略者側の体制内知識人ゆえの限界はあっただろうと思うが、植民地だった側の人たちが柳の言葉を「胸を突く叫び」として、自分たちの文化のためにあげられた声として、優しく記憶していることには、いろいろと考えさせられる。
Tags: 韓国, 歴史
2008年 2月 16日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.15
最近お誘いを受け、「護憲派アマゾネス軍団」というはてなリングに参加しました。リングに加わっているブログをRSSリーダーに一括登録するためのopmlファイルを作ったので公開します。定期的に自動更新しています。
規格書を読んだわけではなく、適当に見よう見まねかつ手抜きで作ってあります。叱らないでください。一応、以下のウェブベースのRSSリーダー(日本語インターフェースで使える、主なものをおさえたつもり)で動作を確認しました。それぞれのリーダーでの登録手順を簡単に示しておきます。「はてなリング - 護憲派アマゾネス軍団」というフォルダができて、その中にフィードが登録されます。
- Google Reader (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面左下「登録フィードの管理」から「インポート/エクスポート」)
- Bloglines (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面左下「登録リスト取り込み(OPML) 」)
- Livedoor Reader (opmlファイルのURLを指定できる。リーダーの画面右上「設定変更」、「データのインポート/エクスポート」)
- はてなRSSリーダー (opmlファイルのURLを指定できる。リーダーの画面右上「設定」、「OPMLのインポート」)
- goo RSS リーダー (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面上部「設定」、「インポート/エクスポート」)
- infoseek RSS リーダー (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面左「管理・インポート」、「OPML取り込み」)
- Windows Live (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面左上「コンテンツの追加」、「詳細設定」、「OPML ファイルをインポート」。「コンテンツの追加」、「自分のコンテンツリスト」の中に作られたフォルダを開き、フィードを一つひとつタブに移動する)
- netvibes (opmlファイルを保存しておく必要あり。リーダーの画面左上「コンテンツを追加する」、「フィードを追加する」、「フィード全てを新タブに追加する」)
My Yahoo! ではopmlによる一括登録のしかたが見つけられませんでした。
私はずっと単体のアプリケーション型のRSSリーダーを使ってきたのですが、登録したフィードの数が増えたら動作が遅くなってしまったので、最近、オフラインでも使うことのできる Google Reader に乗り換えました。みなさんは、どんなふうにRSSをお使いになっていますか? ネット以外の友だちに聞くと、そもそもRSSなんて知らないという人がかなり多いのですが、どうなのでしょう(遠回しにコメントのおねだりをしています)。
平和を大切にするあなたのことが好き、というわけで、このopmlファイルが私からあなたへの一日遅れのバレンタインデーのプレゼントです。リングの副題がなぜか「セクシー系美女のサロン」なので、お遊びで今日の記事のタイトルは「美女たちからのプレゼント」にしましたが、残念ながら私は美女ではありません。
Tags: 憲法, RSS, OPML
2008年 2月 15日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.14
オーストラリア国会で行われた「盗まれた世代」へのケビン・ラッド首相の謝罪はすばらしかった。真実なる歴史をみんなが共有し、和解への道をともに歩み出す日にふさわしいものだった(通信社による全文、ビデオ。国会のビデオ)。
なぜ謝罪が必要かという問いについて、彼はいくつかの答えを用意していたが、そのうちの二つに私はとても心を動かされた。
一つは、「自分の身に起こったらどうだったかと考えてください。そうすれば、どんなに赦すことがむずかしいか分かるでしょう」という言葉。
もう一つは、世代を超えた責任についての話で、「私たちは先達たちから多くの恵みを受け継いでいます。だから私たちは先達たちの重荷も受け継がなくてはならないのです」という言葉だ。
どちらも、当たり前のことをごく普通の言葉で表現したものだ。これらの考えが当たり前になっておらず、これらの言葉を聞くことができない国に自分が生きていることを悲しく思った。
これらが少しでも当たり前の考えになること、少しでも聞かれる言葉になることを、願い望むだけでなく、自分の責任として引き受けたい。
Tags: オーストラリア, 先住民, 歴史
2008年 2月 14日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.13
18日の総選挙を前にしたパキスタンの情勢を伝えるAP電 "Pakistan Lawyers Boycotting Courts" (前半、後半)。11日から総選挙終了までの1週間余り、パキスタン最大の弁護士会 Pakistan Bar Council が全国的に裁判のボイコットを行なっている。要求は一点のみで、11月3日の非常事態宣言発令時に解任された最高裁判所判事などを復帰させること。非常事態宣言が解除された今も、最高裁主任判事の Iftikhar Mohammed Chaudhry さんは自宅軟禁されたままである。
私はこのブログで何回も、パキスタン軍の艦船に対して海上給油を行なうのは独裁政権の軍事的支援にあたると訴えてきた。残念ながら新テロ特措法は成立し、パキスタンもあいかわらず給油対象となったままだ(東京新聞「海自給油『転用禁止』明記できず」)。独裁政権への軍事支援をわざわざ法律まで作ってまで行なおうとするこの国の政治には落胆を禁じ得ない。
AP電の後半は、Terror Free Tomorrow というアメリカの団体(無党派と称しているが、共和党寄りだと思う。マケイン上院議員が顧問になっている)が実施したパキスタン国内の世論調査の結果を伝えている。故ブット元首相のPPPが36.7%、シャリフ元首相のPML-Nが25.3%の支持を集めているのに対し、ムシャラフ大統領のPML-Qへの支持は12%にとどまっている。公正に選挙が行なわれるならば、国会でムシャラフ大統領が罷免される公算が強い。
頭がパキスタンと日本を行ったり来たりするのだが、日本では選挙が公正に行われていると信じていていいんだよな。ちょっと心配。先日の1,782票差の選挙。投票総数の2%にも満たない僅差だった。無効票その他は446。数え直してもらいたい気持ち。
Tags: パキスタン, 新テロ特措法, 選挙
2008年 2月 13日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.12
Spanish town to pay kids to read - スペイン中央部、アランフエスの近くにあるノブレハス(Noblejas)という人口4千人ほどの町が世界的なニュースになっています。先月末に町長が町の教育政策の一環として「子どもが図書館に行って本を読んだら、1時間あたり1ユーロ(約155円)あげる」という提案をしたのです。
この部分だけ読むと「金で釣るのか」といった反応を狙った感じの面白ニュースなのですが、町長の提案にはこの他に、町出身の大学生のアパート代補助、成績の振るわない子どもへの個別授業、親へのカウンセリングなどが含まれていて、教育をとても真剣に考えているのが分かります(そういった部分をことごとく削り、提案を「奇策」と決めつけ、しかも誤訳までして配信する CNN.co.jp の記事は、いったい何ですか)。ちなみに町長の Agustin Jimenez Crespo さんは社会党(この記事に写真があります。ちょっと志村けんさんに似ていると思うのですが、どうでしょう)。
就任早々、35人学級の見直しや学力別クラス編成の推進など、あからさまな新自由主義路線の教育政策を打ち出す大阪の橋下知事と比べてしまいます。
簡単に移り住めるわけではないけど、どっちのほうが魅力があるかと言われたら、ノブレハスですね。
Tags: スペイン, 教育, 大阪
2008年 2月 12日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.11
明後日の2月13日、オーストラリアではラッド首相が国会で盗まれた世代(stolen generations)の先住民(アボリジニ)に対する公式謝罪を行なう。盗まれた世代とは、19世紀の終わりごろから1960年代にかけて親元から強制的に引き離され、白人家庭で同化を強いられた先住民の子どもたちのことだ。
昨年、労働党が政権交代を果たすまで政権についていた自由党のハワード首相は、かたくなに謝罪を拒み、「未来志向」を唱えていた。現在の世代は過去の世代の過ちについて責任を負わないという考えからだ。今も自由党はラッド首相による謝罪に反対はしないものの、強制移送には子どもたちによりよい教育の機会を与えるなど「いい面もあった」という主張を取り下げてはいない。
"'We need to act'" - まだ謝罪の言葉は決まっていない。オーストラリア人の多くは謝罪を望んでいると思うとラッド首相は語る(日本に来る留学生たちを見る限り、確かにその通りだと思う)。国民の心に落とされた暗い影をぬぐうような謝罪にしたいとも語っている。きっと、「不十分だ」と言う人も出れば、「謝りすぎだ」と文句を言う人も現われる、損な役だ。それでも「やらなくてはならない」と語るケビン・ラッドを、私は応援する。
謝罪を勧告した1997年のオーストラリア政府の調査報告 Bringing Them Home のサイトにリンクを張っておく。
Tags: オーストラリア, 先住民, アボリジニ, 歴史
2008年 2月 11日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.10
Pakistan is now the central front in America's war on terror - McClatchy 系列の新聞に8日に掲載された「テロとの戦争」に関する記事。パキスタン北西部部族地帯での反政府武装蜂起が日に日に力を増しており、アメリカによる「テロとの戦争」の主な戦場は今やパキスタンに移ったと言えるとしている。
イラクでも戦争を行なっているため、アメリカは戦力をこれ以上パキスタンに回すことはできない。また、おおっぴらにアメリカ軍が展開することは、すでに高まっているパキスタン国内の反米感情を刺激することになるため、できない。イラクに続く泥沼化を警戒してドイツなどNATO諸国はパキスタンでの交戦に兵力を提供する意志はない。パキスタン軍はそもそもインドを仮想敵国として整備されてきたので、対ゲリラ戦を行なう能力がない。パキスタン軍は兵員がほとんどパンジャーブ人であるのに対し、部族地帯の武装勢力はパシュトゥーン人であり、大規模な衝突が起きれば武装蜂起がパシュトゥーン人の民族運動化する危険性があるので、組織的な掃討作戦もとれない。
このように手詰まりな中、アメリカやパキスタンの艦船に対する給油活動という形で少しでも日本に軍事力の肩代わりをさせることは、ブッシュやムシャラフにとってはとても重要なことだったのだろう。
記事の中に「武装勢力は無政府状態の部族地帯から『パキスタン本土』に武装闘争を広めつつある」と書いてあって、「パキスタン本土」(Pakistan proper)という言い方にちょっと考えさせられた。日本も参戦している「テロとの戦争」って、結局は、かつての帝国主義の時代、植民地の時代の国境線を守ろうという営みなのではないだろうか。
追記: 記事にタイトルを付けるのを忘れていました。
Tags: パキスタン, テロとの戦争
2008年 2月 10日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.09
Kosovo's countdown plays out to Beethoven - セルビアからの独立宣言を前にしたコソボの首都プリシュティナからのロイター電。コソボ交響楽団は独立の日に開かれる記念コンサートで演奏するため、ベートーベンの交響曲第9番の「歓喜の歌」(ヨーロッパ連合の連合歌)を練習中。独立宣言がいつ行なわれるかはまだだれにも分からないが、指揮者の Baki Jashari さんは「15日には準備が整う」と言っている。合唱のことは書いてないので、器楽曲として演奏されるのだろう。
新しい国旗選びも始まっている。コソボ市民の90%を占めるアルバニア系住民はアルバニアの国旗と同じ図柄を望み、実際その旗を掲げているが、セルビア系住民などの少数民族との共存のため、中立的な新しい旗を選ぶのだ。
私には、NATOによる軍事介入が正しかったとは思えないし、昔のユーゴスラビアがこうやってちりぢりになっていくのが本当にいいことなのか分からない。コソボ独立が「歓喜の歌」の歌詞にある「すべての人がきょうだいになる」(Alle Menschen werden Brüder)という理想への道の上にあることを祈るばかりだ。
追記:11日の朝日新聞(朝刊)に記事が出ていました。合唱もあるそうです。
Tags: コソボ, ヨーロッパ, 独立
2008年 2月 9日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.08
私は、野生動物をテーマにしたテレビ番組を見ていても、草食動物が肉食動物に捕まりそうになったりしている場面を見ると、思わず殺されそうになっているほうを応援してしまいます。別に肉食動物を憎たらしく思うわけではないのですけどね(私も肉食ですし)。
オーストラリア政府が公開したビデオを見ても、やっぱり、銛を刺されて、逃れようともがいている鯨に「がんばれ」と声を掛けてしまいました。まあ、それが感情的な反応だと言われれば、そうなのかもしれませんが、私にとっては普通の反応で、世の中には私のような人もたくさんいると思います。それが「毒されている」とか言われると、ちょっと違うなと思ってしまいます。
ビデオは新聞のサイトでしか見つけられなかったのですが、写真はオーストラリア政府の関税局のサイトで見ることができます。
日本鯨類研究所が「オーストラリア税関船の写真は大衆を欺く」という報道資料を出していますが、この写真に写っているの二頭のクジラが親子ではないと言っているだけで、捕獲の方法が残酷であるといった中心的な批判にはなんら応えておらず、反論にはなっていません。
Tags: 捕鯨, クジラ
2008年 2月 8日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.07
フランスの通信社AFPが岩国市の市長選に関する記事を発信しています: "Japanese town defies US military"。これを書いている時点ではAFPの日本語サイトには記事が見あたりません。
記事は、市長だった井原勝介候補がアメリカ軍基地の拡張(艦載機移転)計画を止められなかったため辞任し、再び立候補したことをあげ、岩国が中央政府やアメリカに「ノーと言うことのできる日本」の象徴になったと伝えています。
井原さんは、「私は日米安保に反対ではありません。国の安全保障政策には協力しなくてはなりません。しかし、今回のはひどすぎます」と語っています。政府が態度を変えないことについて、井原さんは「英国に反対してインドで行進をしたガンディーを思い出しました。もし私が選ばれて、それでも政府が計画を撤回しなければ、私はガンディーのように東京まで歩くつもりです。私が当選したら、その結果は民主主義にとってとても重要な意味を持ちます」と語ったそうです。岩国の人たちがどのような結果を出そうとしているのか、とても興味をひかれます。仮に基地容認の人が反対の人より多かったとしても、それで「ガンディーのように」行動する意味がなくなるとも思えませんけれど。
記事は福田良彦候補にも取材しています。岩国のアメリカ軍基地の役割は「北朝鮮や中国に対する抑止力となること」であり、「この役割は岩国の人々に十分説明されていない」「日本が平和なのは日米安保のおかげだ」という発言が紹介されています。今まで接した報道からは、福田候補が基地の問題にはできるだけ触れないようにしているという印象を持っていたので、新鮮と言えばちょっと新鮮です。こんな冷戦時代の精神構造をいまだに引きずっているような人に未来を託すのはどうかと思います。
Tags: 岩国, 米軍基地, 安保, ガンディー, ガンジー
2008年 2月 7日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.06
先週の月曜(2008年1月28日)、アメリカのブッシュ大統領は一般教書演説で米軍のイラク増派(surge)は一年間でだれも期待しなかったような大きな成果を上げたと述べました。しかし、その週も終わらないうちにバグダッドでは2件の大きな自爆事件(中心部のGhazil 市場と南部の Jadida 市場)が起こり、一日で90人以上の市民が亡くなりました。
英インディペンデント紙の3日づけ記事 "A week in Iraq: 'People say things are better, but it's still terrible here'" は、現地の視点でブッシュ大統領の言う「成果」を検証しています。確かに一年前よりは平穏になったし、人々もそう言う。ただしそれは流血の惨事が毎日のように続いた2006年と比較してのことであり、状況は依然としてひどく、イラクは「世界で一番危険な国」であるとされています。バグダッドの街は、敵対しあう地区ごとにコンクリートの塀で要塞化されて「中世の都市のようだ」と書かれています。「よくなった」と言うのは、「生き延びられる確率が上がった」という意味のようです。
今、アメリカに歩み寄り、アルカイダの掃討にあたっているある民兵組織のリーダーは、「これから3か月で自分たちの部隊がイラク軍に長期的に雇用されるようにならなければ、アルカイダ鎮圧からは手を引く」と記事の中で語っています。彼は一年前にはアメリカ軍を相手に戦っていました。またそうなる可能性はとても大きいです。いろいろな面で、このまま「増派」を続けていさえすれば状況が改善していくと考えるわけにはいかないだろうと思います。
ルワンダのジェノサイドは、植民地経営者たちがフツ族とツチ族という差異化概念を先鋭化させたことによって引き起こされたと言われることがあります。イラクにおいては、スンニ派とシーア派の対立という構図をことさら拡大する言説が広く行なわれてきました(私自身、それから自由ではありません)。それを越えて行くための何かを私たちが見つけることができるといいのですが。
Tags: イラク, 占領, 平和
2008年 2月 6日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.05
笠原十九司さんの「南京事件論争史」(平凡社新書、2007年12月刊)を読み始めた。副題に「日本人は史実をどう認識してきたか」とあり、「明白な史実がなぜ問題とされるのか。否定派のトリックを衝く、『論争』の全経過。」と書かれたオビが巻いてある。
今読んでいるのは、まだ、「論争」が始まる前の東京裁判のところ。弁護側が最終弁論の際に提出した弁駁書という文章が、「現在もさかんに流布されている南京事件否定論の主要な主張がほぼふくまれている。いってみれば、現在の否定論の観点と主張、論法がすでに出そろった『否定論の原形』といえる」(p.82)という紹介とともに引用されている。これを読むと、否定派と言われる人たちが60年間、馬鹿の一つ覚えのように同じお題目を繰り返してきたのだということがよく分かる。
そんな本といっしょに読むとなかなか味わい深い話を見かけた。イギリスの大手タブロイド紙 Daily Mail の(と言った時点で既にあやしいのかもしれない。どういう姿勢で読むべきかは nofrills さんのブログを参考に) "Challenge Churchill! One in four think Winnie didn't exist (but Sherlock Holmes did)" という記事からたどって行った、UKTV というテレビ局による調査 "Is Robin real?"。このテレビ局では現在ロビン・フッドに関する番組をやっているらしく、それにちなんで実施されたもののようだ。
この調査によると、イギリス人の過半数はアーサー王、シャーロック・ホームズ、ロビン・フッドなどが実在の人物であった、あるいは、これらの人物に帰されている伝承が史実だ、と考えているらしい。逆に、ほぼ四人に一人が英国史上重要な人物であるチャーチル元首相と看護師のナイチンゲールが想像上の人物だと思っていることも分かった。
うーむ。南京事件にせよ性奴隷の問題にせよ、「なかった」と言う人たちは何らかの動機のもとに「歴史修正主義」という大仰な思想を実践しているのだと考えていたのだが、あの人たちは、もしかすると、単なる馬鹿なのだろうか。
Tags: 歴史修正主義, 歴史認識
2008年 2月 5日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.04
イギリスの the Man Booker Prize の財団の協力で、アラビア語による小説国際賞(International Prize for Arabic Fiction)が創設されたらしい。このほど、第一回受賞作選考に向けて、131の候補作の中から以下の最終候補6作が発表された。受賞作は3月10日にアラブ首長国連邦のアブダビで発表される。
- Jabbour Douaihy "June Rain" (レバノン)
- Elias Farkouh "The Land of Purgatory" (ヨルダン)
- Khaled Khalifa "In Praise of Hatred" (シリア)
- May Menassa "Walking in the Dust" (レバノン)
- Mekkaoui Said "Swan Song" (エジプト)
- Baha Taher "Sunset Oasis" (エジプト)
この件については "Six Finalists Set for $50,000 Arabic `Booker' Prize" という記事で知った。記事には、アラビア語世界では詩の伝統が強く小説はすくないこと、ほぼ一世紀前の Muhammad Husayn Haykal の "Zaynab"、ノーベル賞作家の Naguib Mahfouz などが有名であることのほか、昨年、上記の賞とは別に Sheikh Zayed Book Awards という賞が創設されたこと、2002年に Alaa Al Aswany の "The Yacoubian Building" が全世界で20万部の売り上げを記録したこと、サウジアラビアの Rajaa Alsanea による "The Girls of Riyadh" という軽い(若い女性向け、と書いてある)小説が英語に翻訳されつつあることなどが紹介されている。
アラビア語文学のトリビアをご紹介します。レバノンに Rashid Al Daif という作家がいて、"Dear Mr. Kawabata" (拝啓、川端様)という小説を書いています。ベイルートに行った時、書店で英語版を見つけました。内戦後のレバノンで見も知らぬ川端さんと言う人にあてて書かれた手紙という設定で、取り立てて日本と関わりがあるわけではありませんでした。
Tags: アラビア語, 文学
2008年 2月 4日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.03
びわ湖ホールでリヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ「ばらの騎士」(Der Rosenkavalier)を観て来ました。違うキャストで今日もう一回上演された後、3月22日、23日に神奈川県民ホールでも上演されるそうです。お勧めします。
元帥夫人の情事の相手である17歳の貴族の坊やが(第1幕)、好色な男爵と結婚させられそうになって困っている富豪の娘を救うため(第2幕)、女中さんに変装して男爵をとっちめる(第3幕)というのがあらすじです。予習のためにCDを聞いたりリブレットを読んだりしている時には気づかなかったのですが、幕の進行とともに話の中心が封建階級(貴族)からブルジョワジー(富豪)へ、そしてプロレタリアート(女中さんなど)へと移ります。そのことを観る人に強く印象づける演出でした。
音楽に関しては、富豪のファーニナル家の父娘の小川裕二さんと幸田浩子さんがとても、そして元帥夫人の岡坊久美子さんが(歌だけでなく、特に最後の場面の演技も)なかなか、よかったと思います。いいオペラを見せてくださって、ありがとうございました。
今年の秋は同じくリヒャルト・シュトラウスの「サロメ」(10月12日)、来年の春はプッチーニの「トゥーランドット」(3月14日、15日)だそうです。すごく期待しています。
Tags: オペラ, 音楽
2008年 2月 3日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.02
プラザ・デ・マヨの母たち(Las Madres de Plaza de Mayo)をご存知でしょうか。アルゼンチンでは1976年から83年にかけて、右翼軍事独裁政権が3万人にもおよぶ市民を拉致し殺害する「不潔な戦争」(Guerra Sucia)を行ないました。消息不明となった家族に関する情報を求め、右翼による粛清を糾弾するためブエノスアイレスの広場に毎週木曜日に集まった女性たちがこの「五月広場のお母さんたち」です。彼女たちの毎週の行動は30年経った今も続いています。
このほど、軍部による拉致拘束、拷問による取り調べの拠点となっていた海軍の建物が彼女たちの管理のもとに置かれ、「記憶館」(Centro de la Memoria)とされることになりました。1月31日の木曜日にフェルナンデス大統領から正式に管理運営権を委譲された彼女たちは、広場での抗議行動の後、さっそく建物に入りました。代表の Hebe de Bonafini さんが「私たちは死に打ち勝ったのです。建物をいのちの色に塗りましょう」と述べ、集まったマヨ広場の母親たちが壁に明るい太陽と花を描きました。AP電 "Argentine activists take torture center" と同時に写真が4枚配信されています。ぜひご覧ください。肉親を連れ去られた悲しみや苛立ちが癒されたわけではないでしょうが、お母さんたちの強さや明るさがすごく感じられます。スペイン語ではアルゼンチンの Clarin 紙にもう少し詳しい記事 "Las Madres de Plaza de Mayo tomaron posesión del ex Liceo Naval" があります(分からないながらも念のため目を通してよかったです。APの記事を読んだ時点では、私、お母さんたちが軍の建物を占拠したのだと勘違いしていました)。
Tags: アルゼンチン, 人権, 市民運動
2008年 2月 2日 午前 12:00 | Permalink
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2008.02.01
Gender Equality Law Triumphs over Rightwing Opposition - スペインで平等法(Ley de Igualdad)が制定された。この法律の要は、政党の候補者名簿は男女のどちらか一方で60%を超えてはいけない、という項目である。保守の国民党(Partido Popular)がこの部分に異議を唱えて提訴したため憲法裁判所で審議されていたが、1月30日に、合憲とする判事10名、違憲とする判事2名という圧倒的多数で合憲の判断が下された。
スペインの立法手続きの詳細が不明だが、平等法は昨年(2007年)3月に国会を通過し、5月の地方選はそれに則って行なわれた。しかし、施行されるのは憲法裁判所の決定が今日(2008年2月1日)までに官報で告示された時点で、とのことである(ここに掲載されるのだと思う。これを書いている時点ではまだ見あたらない)。スペインでは3月9日に総選挙が予定されており、それにかろうじて間に合ったようだ。
候補者名簿に関する規定の他、従業員250人以上の企業では男女平等について労使交渉を行なわなければならないことが定められている。
国民党は、候補者の男女比を押しつけるのは、政党の活動の自由を制約し思想の自由の侵犯にあたるといった主張で平等法を批判してきたらしい。また、社会の半数が女性だということを候補者名簿に反映させなければならないと言うなら、老人、若者、障碍者なども割合に従って代表を送ることを要求できることになってしまうと言って反対していたようだ。うーむ、日本なら、こういう主張や論法で与党になれるんだがな。
Tags: スペイン, ジェンダー, 性差別
2008年 2月 1日 午前 12:00 | Permalink
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