スハルトを赦す
Forgive Suharto: E Timor president - 危篤に近い状態が続いているインドネシアのスハルト元大統領について、東ティモールのラモス・ホルタ大統領(1996年のノーベル平和賞受賞者)が「私たちは過去を忘れることはできない。しかし東ティモールは彼が死ぬ前に彼を赦すべきだ」と語ったことを伝えている。
スハルトのインドネシアは1975年に、ポルトガルから独立したばかりの東ティモールに侵攻し、占領した。1998年にスハルトが退陣に追い込まれた翌年、東ティモールは住民投票で圧倒的な多数で独立を選択した。その後のインドネシア軍や民兵による破壊行為によって多くの死者が出たことは記憶に新しい。
東ティモールでは、四半世紀近く続いたインドネシアによる占領のもと、住民の4分の1を超える約20万人が死んだと言われている。ラモス・ホルタ大統領自身、きょうだい4人を失っている。もちろん、スハルトをはじめとする政治家や軍人たちに対して、より厳しい裁きを求める声も根強く存在している。
赦すこと。過去の戦争犯罪について語る時にも、死刑について語る時にも、その難しさをだれもが噛みしめる。ラモス・ホルタの「彼が死ぬ前に彼を赦すべきだ」という言葉は、あまりにもあっけない感じさえする。
こんなふうにも考えられる。「彼が死ぬ前に彼を赦すべきだ」という命題は、「死ぬ前に彼らは謝るべきだ」とか、「彼女たちが死ぬ前に真実が明らかにされるべきだ」といった命題と切り離して論じることはできない。私たちの世界は、そういう命題の集合によって構成されている。
2008年 1月 19日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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