« 続く琵琶湖の酸欠状態 | トップページ | スペインの歴史の記憶 »

2007.10.29

少年の手紙

フランスでサルコジ大統領が全国の学校で朗読を命じたという文章を読んでみた。共産党員だった Guy Môquet という17歳の少年が第二次世界大戦中、レジスタンスに身を投じ、死刑に処される前に家族にあてた手紙だ(ここにテキストのほか、手紙そのものの写真がある)。

正直言って、私にはこの手紙の価値が全く分からない。それは多分に私がフランス語を豊かな情感を持って読み取ることができないことによるのであろうが、死を前にして愛する者に別れを告げるということが一般的にもつ情意面での昂揚以外に、ギー・モケが置かれた状況だからこそ生まれるはずの価値が何ら明示的に言及されていないことに私は不満を懐く。

Paris, October 2007, by Phillippe Leroyerギー・モケは占領という圧倒的な帝国的覇権に対して闘ったのであり、ナチスドイツの民族主義的、人種差別的なイデオロギーに対して闘ったのだ。だから彼の死には価値があるわけだ。しかし書き手である彼と読み手である彼の家族にとって当然であっただろうそのような事柄について、彼は手紙の中では直接触れていない。私たち後代の読み手はそれらの背景を歴史的な知識で補って、彼の手紙を理解しなくてはならない。

フランスの現代史に詳しくない私には、彼の手紙は、日本が行なった戦争の中で特攻隊に配属されて、もうすぐ意味もなく死ぬことが決まっている兵隊が書いた手紙と何ら変わりがないように思えてしまう。

おそらく、そのことが、まさにこの手紙がサルコジ大統領に選ばれた理由でもあるのだろう。政治的色彩の薄い手紙は、愛国主義とか、民族主義とか、権力者の好みの色に染めやすいのだ。

写真は philippe leroyer さんが Flickr で CC-By-nc-nd で公開しているもの。年金制度をめぐる鉄道ストのパリで18日に撮影。男性が手にしている新聞の写真がギイ・モケ少年だ。

…と、ここまで書いてしまってから、村野瀬玲奈さんのブログ経由でレイバーネットの「サルコジ大統領の最初のつまずき」という記事を知った。私の言いたかったことが、私よりもはるかにしっかりした分析に基づき、しかも情報量豊富に書かれている。

Tags: , ,

2007年 10月 29日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12988/16899715

この記事へのトラックバック一覧です: 少年の手紙:

» 「学力低下、学力不足」という言葉からこぼれ落ちる問題点もあると思う。(追記2まであり) トラックバック 村野瀬玲奈の秘書課広報室
(人気blogランキング参加中。) まず、東大阪市のみなさま、市長選に行きましょう。(^^)/ 今日は話があちこちに飛びますが、それらに通底するテーマはあるし、ちゃんとまた元のところに戻ってくるのでよろしく〜 数... 続きを読む

受信: 2007/10/29 3:30:23

コメント

コメントを書く