« 夏淑琴さんの話を聞く | トップページ | インドから何を学ぶか »

2007.08.16

佐藤正久発言は国会で真相究明を

新たに参議院議員となった人たちがはじめて登院した日、新聞にこう書いてあった。

自民党比例区で当選した元陸上自衛隊イラク派遣先遣隊長の佐藤正久氏(46)は正門で約10秒間、敬礼をした。3年前のこの日にイラクから帰国。「灼熱と砂嵐のイラクから、今度は逆風の吹き荒れる新たな戦場に到着した思いだ」と顔を引き締めた。

「新たな戦場」という表現に、自分がイラク特措法の定めに従って「非戦闘地域」に派遣されていたことを自覚していない、「兵隊」としての自分に酔った鼻持ちならぬ人物を私は見たのだけれど、彼にそう言わしめたのは自己憧憬ではなく、人々を欺こうとする不誠実さ、あるいはあえて法律を破ろうとする犯罪性だったらしい。

佐藤氏は、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだったといいます。
「巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況は作れませんから。」
TBS「「駆けつけ警護」認めるべきで一致」、2007年8月11日

憲法が交戦権を認めていないだけでなく、派兵の根拠法であるイラク特措法も、基本原則の一つとして「実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」ということを明確に定めている(第2条)。第17条では、

「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項 に規定する隊員をいう。)、イラク復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」

のみ武器の使用が可能であると限定しているほか、

「当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項及び次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする」

としている。国会での政府答弁でも、石破防衛庁長官(当時)が以下のように述べている。

活動を実施する自衛官は、いわゆる非戦闘地域内において活動を実施するといたしましても、不測の事態に遭遇する可能性が全く排除されるわけではございません。そのため、当該自衛官は、自己等を防衛するため、やむを得ない理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができ、そのために必要とされる武器を携行するのでございます。
これらの措置等により、派遣される自衛隊員の安全確保には特に万全を期してまいりたいと考えております。
2003年6月24日衆議院本会議

部隊を率いていた者には、オランダ軍への攻撃に「巻き込まれ」ないように最善の努力をする任務、自衛隊員の安全確保に万全を期すことこそが課されていたのであり、「巻き込まれる」ことを予測して行動すること(予測なり意図なりがあれば、事態は「不測」ではなくなってしまう)は許されていない。

問題は思い上がった暴走する一士官だったのか、それとも自衛隊ぐるみ、あるいは政府ぐるみのシナリオがあったのか。今の時点では分からない。蜥蜴の尻尾切りのような形ではなく、だれがどのように考えていたのか、何をしようとしていたのかをしっかりと解き明かしていく必要がある。秋の国会で証人を呼び、話を聞かせてもらおうではないか。

Tags: , , , , , ,

ぐうたらな普段の私に似合わず、トラックバックをたくさん送ろうと思います。

2007年 8月 16日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 佐藤正久発言は国会で真相究明を:

» ヒゲ隊長こと佐藤正久参議院議員に市民有志が公開質問状提出へ!:NPJより トラックバック 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)
     News for the People in Japan(←クリック)が、ヒゲ隊長こと佐藤正久参議院議員に対して、弁護士を中心とする市民有志が公開質問状を送付することになったことを伝えている。  [記者会見の案内]と[公開質問状案]も掲載されており、質問状の内容は一部変更されるかもしれませんが、それを前提に賛同される方は、連絡先の杉浦ひとみ弁護士へFAXをお送り下さいということだ。    [公開質問状案]では、【報道が正しければ、貴殿の言う「巻き込まれる」行為は、外形的には、正当防衛・緊... 続きを読む

受信: 2007/08/16 8:32:48

» 自衛隊法を確信犯的に逸脱しようとした指揮官が国会議員になっている トラックバック タカマサのきまぐれ時評
■『低気温のエクスタシー』『アッテンボローの雑記帳』『情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)』ほか、何人ものブロガーが記事化しているが、新聞等が一向に反応しない、不気味な情勢なので、問題整理しつつ、問題提起(意識的あおり)をする。■「自衛隊イラク...... 続きを読む

受信: 2007/08/16 19:37:28

» 佐藤発言を報道するようマスコミに圧力をかけよう!! トラックバック アッテンボローの雑記帳
 8月10日のTBSの報道で佐藤正久参議院議員(元陸上自衛一等陸佐)が自ら自衛隊 続きを読む

受信: 2007/08/16 22:06:56

» 自衛隊参議院議員、佐藤正久氏の発言は軍部独裁政治の前触れか? トラックバック 村野瀬玲奈の秘書課広報室
(人気blogランキング参加中。応援クリックお願いします。) 「遵法意識のとぼしい自衛隊員が大手を振って歩く日本がアブナイ!」で書いた、イラクに派遣された元自衛官・参議院議員佐藤正久氏に関する問題の続きです。 四つのブ... 続きを読む

受信: 2007/08/16 22:20:24

» 佐藤正久議員の公務員にあるまじき発言 トラックバック ディヴェルティメント 
(12日の天木さんのブログで読んでいたのですが、きょうまで怠けてしまいました。参照リンクのみですがupします。) 7月の参院選で当選した佐藤正久議員による発言です。 「・・・もしオランダ軍が攻撃を受ければ『情報収集の名目で現場に駆けつけて、あえて巻き込まれる』という状況をつくり出す事で、憲法に違反しない形で警護するつもりだった・・・巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況はつくれませんから・・・日本の法律で裁かれるのであれば、喜んで裁かれてやろうと・・・」 『天木直人のブログ』 “裏のメデ... 続きを読む

受信: 2007/08/17 2:55:13

» うそで始まった戦争、奉ってやるからありがたく逝ってこい トラックバック 絵ロ具。
はらわたが煮えくり返るようなクソヒゲ。 ? ?【重要】イラクで陸上自衛隊が独断で戦闘を開始する決断をしていた! ? 低気温のエクスタシーbyはなゆー 早速じぶんが仲間入りさせてもらったケツを振る相手自民党の意向を読んで「毅然と仲間を護るために戦闘するのは... 続きを読む

受信: 2007/08/17 20:10:49

» 不十分で誤った過去の総括の上に感情論で軍事的展開をすすめることの愚かさ トラックバック 村野瀬玲奈の秘書課広報室
(人気blogランキング参加中。応援クリックお願いします。) 自衛隊出身議員、佐藤正久氏の発言と、杉浦ひとみ弁護士のおこなった記者会見の模様が今日の東京新聞の朝刊に出ていました。 杉浦ひとみさんからもコメントを... 続きを読む

受信: 2007/08/17 23:12:27

» 司令官外国二対シ故ナク戦闘ヲ開始シタルトキハ トラックバック ++つぶやき手帳++
陸軍刑法 第35条  司令官外国二対シ故ナク戦闘ヲ開始シタルトキハ死刑二処ス 第37条  司令官権外ノ事二於テ已ムコトヲ得サル理由ナクシテ擅二軍隊ヲ進退シタルトキハ死刑又ハ無期若ハ7年以上ノ禁錮二処ス 第38条  命令ヲ待タス故ナク戦闘ヲ為シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ7年以上ノ禁錮二処ス 第39条  本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス この条文で有罪になった軍人はどれだけいたのか?というほどタテマエな戦前の陸軍刑法ですが、「ヒゲの隊長」議員へのあてこすりで掲げておきます。まあ昔も今も軍人とい... 続きを読む

受信: 2007/08/17 23:39:10

» ヒゲのダンス トラックバック Intersecting Voice Cafe
ご存知、カトちゃんとシムケンのおとぼけパフォーマンスですが、いま話題の「おヒゲパフォーマンス」はこの方。 TBSニュース:駆けつけ警護認めるべきで一致(8月10日 22:50) 佐藤正久発言は国会で真相究明を(壊れる前に:2006年8月16日)←関連ブログがいくつかリンクされています! ほへー、ここまで言っちゃいましたか。議論沸騰には好都合なのかもしれませんな。というわけで、ワタシも釣られてみますっ。 先日はジョブしか打っていませんでしたが今度こそは怒っておりますわよ! もし... 続きを読む

受信: 2007/08/18 14:06:42

» 「9条世界会議」の呼びかけ トラックバック JCJ神奈川支部ブログ
 9条世界会議のサイトが出来たようです。   9条世界会議    私たちは、アジアや世界の市民・NGOと交流する中で、戦争の放棄と軍隊の不保持をうたった憲法9条が日本にとって平和の礎であるのみならず、平和を願う世... 続きを読む

受信: 2007/08/19 0:57:37

» 参院は佐藤正久の議員辞職勧告を決議せよ! 〜法律に違反し憲法を蔑ろにする参議院議員・佐藤正久〜 トラックバック ザ・のじじズム
「駆け付け警護は違憲」 ひげの隊長に公開質問状(中日新聞)というニュースが流れていましたが、至極当然のことです。この「ひげの隊長」は自分のしようとしたことの重大性に気が付いていないからこそ、ポロッと話しちゃったのでしょう。我々国民は、自衛隊を....... 続きを読む

受信: 2007/08/19 14:48:55

» 9条世界会議メールマガジン トラックバック ディヴェルティメント 
きょう9条世界会議のメールマガジンのvol.2が配信されました。みなさん、登録はお済みですか? 創刊号を読めなかった方、こちらでご覧ください。 「学ぶことは心に翼を持つこと。」プロジェクト “8月6日。9条世界会議いよいよスタート” → http://blog.livedoor.jp/manabukokoro/archives/54762814.html 書き手である、おおくにさん達のブログです。 9条世界会議と合わせて応援よろしくお願いします。byディヴェルティメント 『9条世界会議』ホー... 続きを読む

受信: 2007/08/23 9:01:40

» 佐藤氏の問題発言で見えて来るもの トラックバック とりあえずガスパーチョ
『レイバーネット』の記事は「当時佐藤氏は、陸幕の教育訓練部教育訓練班長であり、隊員を教育する側の責任者だった」と指摘している。つまり彼自身が「武器使用権限の要点」を使って、駆けつけ警護に無理矢理持ち込む方法を伝授していた可能\性が非常に高い。... 続きを読む

受信: 2007/08/26 14:20:30

コメント

うにさん、トラックバックありがとうございました。法律の条文まで引き、さすがうにさんならではの冷静な分析です。
私はその他のブログ記事も引き、うにさんの分析も全部取り入れた記事にしてさらにあちこちにTBでばらまきました。
それにしても、このような無法自衛隊幹部が国会議員になったことの危険さについての理解を広めるか、知恵をしぼらなければなりませんね。逆に、「攻撃されている他国軍を自衛隊が守るのは人道的なことだ」というたぐいの認識が広まるのがこわい...。

投稿: 村野瀬玲奈 | 2007/08/16 23:32:26

はじめまして、うにさん

私はこの問題の本質は、
現行法の云々ではなく「超法規的な措置(違法ではない)」を現場の自衛官が考えざる負えない状況=現行法の矛盾だと思います。

自衛隊は「軍隊」ではありません。ゆえに航空自衛隊では僚機・友軍機が撃墜(殺され)されても自分は攻撃できません。ようするに隊員に「死ね」と言っているわけです。
「正当防衛発言」の真意はここにあります。ようするに日本国憲法下では、(正当防衛に当たらないため)なぶり殺しにされているオランダ兵を身捨てるしかないのです。
友軍がなぶり殺しにされているのを見て見ぬふり。国際社会から批判を浴びるのは当然です。

また、「法の裁きうける」発言は国内法に縛られる自衛隊の“異常”さを如実に示しています。通常、不法為を行った軍人は国際法に基づいて軍法会議で裁かれます。しかし、たとえばイラクで窃盗をした隊員がいたとします。現行法では、コイツを拘束するのに日本の裁判所の「逮捕状」がいる。隊員が殺人罪に問われる可能性もあります。バカげた話ではないでしょうか?

私はむしろ、国連平和維持活動をはじめとする海外派遣、これが法整備なしに行われていることに危機感を感じます。

いずれにせよ、改憲・護憲にかかわらず広く議論すべき問題でしょうね。

投稿: のれそれ | 2007/08/17 0:06:57

イラク侵略戦争はブッシュブレアが嘘から始めた侵略戦争。
http://www.geocities.jp/wemustnotkill/
これだけ人々を殺して、社会を破壊している罪は、とうぜん問われなければならないと思います。

侵略戦争まっさいちゅうの場所に駆けつけて、戦闘に巻き込まれて「味方」を助けるというのは、批判を免れない問題行動だと思います。

いったい誰がこの人殺しの責任をとるのかと考えるだけで空恐ろしいものがあります。

投稿: 反戦とうちゃん | 2007/08/17 11:23:37

村野瀬さん、
村野瀬さんが「こわい」と書かれたこと、まさに私も同感です。

のれそれさん、
私とは考え方が全く異なるようです。私のブログをあなたの意見を述べ立てる場にしないでください。派兵の善し悪しを棚上げにするにしても、少なくとも建前としてはイラク国民との友好のために復興支援に行ったことには言及せずに「友軍」などという表現を用いる人を私はこの場に歓迎しません。

反戦とうちゃんさん、
いただいたコメントを読んで、記事に付けているタグに、大事な「占領」が抜けていることに気がつきました。足しておこう。ありがとうございました。

投稿: うに | 2007/08/17 18:06:30

うにさんすみませんでした。
私の意見が、このブログの“やり方”と違うのでしたらもう来ません。
でも、反対意見を聞いて(論破して)こその民主主義では?

私が言いたかったのは、憲法における「解釈改憲」と同様にずさんな法体制のまま自衛隊派遣が行われたということです。

>派兵の善し悪しを棚上げにするにしても、少なくとも建前としてはイラク国民との友好のために復興支援に行ったことには言及せずに「友軍」などという表現を用いる人を私はこの場に歓迎しません。

と、うにさんはおっしゃていますが、
イラク戦争は国際社会の承認を得ていません。だから、イラク派遣(派兵ではない)は間違いです。私はイラク即時撤退すべきと考えています。

私が言いたいのは、PKOなど国際社会の承認を得た活動、これらの海外派遣における法の不備です。

国連の承認を得たPKO活動でさえ、
「撃ち殺されるまで撃つな!」
「正当防衛を“国内法”で証明できなければ殺人罪」
ではだれも「平和維持活動」に参加しません。

ときにうにさんは
①自衛隊の“イラク”派遣に反対なのですか?
②それとも海外派遣全般の反対なのですか?
③「駆けつけ警護」は現行法に違反している云々ではなく、必要であるか否かの問題では?
例えば、ルワンダ内戦において国連平和維持部隊は(自らの)軽武装・戦力不足を理由に虐殺を容認しました。

現行の海外派遣は本当にあるべきすがたなのでしょうか?

私は民主主義の力を信じています。そして、うにさんがこの問に誠実に答えてくれることも信じたいです。

投稿: のれそれ | 2007/08/17 20:49:23

> 私の意見が、このブログの“やり方”と違うのでしたらもう来ません。

ありがとうございます。感謝します。

> でも、反対意見を聞いて(論破して)こその民主主義では?

いいえ、違います。一つの意見しか正しくないと考えるのではなく、意見の多様性を認めつつ構成していくのが民主的な社会です。相手を言い負かすのが民主主義ではありません。多数決は、少数者を切り捨てることなく全体としての行動方針を決定するための手段に過ぎません。また、延々と議論するのが民主主義でもありません。ましてや、議論のための場ではないところで議論を強いるのは暴力です。私はあなたの意見を尊重しますが、ここを議論の場として提供するつもりはありません。あなたの意見を述べる場として提供するつもりもありません。そのような場は他に必ずあるはずです。

> うにさんがこの問に誠実に答えてくれることも信じたいです。

あなたは私のこの返答を不誠実だと考えるかもしれませんが、別の人(あなた)の持ち出す質問にすべて答えを持ち合わせていて、それをすらすらと述べ立てることが可能であるかのように振る舞うことのほうが、私にとっては何倍も不誠実な態度になってしまいます。人がそれぞれ、限られた時間の枠の中で生きていることを忘れないでください。人には、それぞれ、考えたいこと、やりたいことがあるのです。

投稿: うに | 2007/08/17 21:19:34

のれそれさんへ

HNのインパクトからして、我が県の人のように感じます。よかったら、うちでもお話ししてください。

友人、教え子の何人かが青森駐屯地勤務です。

投稿: なのなの勢力 | 2007/08/18 2:02:09

なのなの勢力さん、
コメントありがとうございます。実りある議論になりますよう、お祈り申し上げます。

投稿: うに | 2007/08/18 10:50:17

コメントを書く