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2007.03.08

東南アジアの目、私たちの手

「日本の幼稚さ」(Japan's immaturity)と題されたインドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストの社説(3月6日付け)。いくつかの文を引用する:

世界中の人々にとって、第二次世界大戦の終結から62年近くたった今、なぜ日本が誠実に戦争当時の事実を受け入れることができないのか、なぜ自らの過去を顧みろと言われるたびにこういう「子どもっぽい」態度をとり続けるのかは理解しがたい。

世界は日本が繁栄し、力強く、平和的であることを望んでいる。過去の戦争に関してこの国を追い詰め続けるのは、新たなナショナリズムを生み出すような形で逆の効果をもたらすかもしれない。既にそのようなことが起こりかかっている兆候が見られる。

もし62年も経って日本の政治家たちがまだ歴史を否定しようとするなら、私たちは日本に対して憐れみを感じるしかない。

このように述べた上で、社説は「日本を変えられるのは日本だけだ」と結んでいる。そうだ。私たちが安倍首相の責任を追及し、総理辞任を要求し、日本を変えなくてはいけないのだと思う。慰安婦問題について書くのはもう止めようと思っていたのだけれど、これを読んで、ここで立ち止まってはいけないのだと思った。

「不誠実な安倍」(Dishonest Abe)と題されたフィリピンの Inquirer 紙の社説(3月4日付け)は、安倍首相の「強制はなかった」という発言に関して、

中国や韓国だけではなく、日本の忠実な同盟国であるフィリピン(この国では、日本軍の「慰安所」で何千人もの女性が繰り返し犯されたのである)からさえも反発は免れない。それが日本の国民に彼に関する考えを変えさせる力となるか、さらに彼の人気を高めることになるか、もうすぐ分かることになる。

と述べている。社説はまた、安倍首相が大した手腕や実績もないのに父親や祖父の七光りで担ぎ出され、中国への侵略について謝罪しようとしない極右のナショナリストが支持母体になっており、北朝鮮に対して強硬な姿勢をとったことで人気が出ただけだと述べており、しっかり安倍首相を取り巻く日本の政治情勢を把握していることが分かる。蛇足だが、社説のタイトルは "Honest Abe"(正直者エイブラハム・リンカーン)という熟語のダジャレのようなもの。心の中でツッコミを入れる気力さえ私は失っている。

慰安婦にされたフィリピンの女性たちの抗議デモについては、"Filipino wartime sex slaves call Japanese PM 'liar'" というAP電が伝えている。記事に添えられた写真の "I was raped" (私はレイプされた)と書かれたプラカードが見ていて辛い。

私たちの手で、安倍首相を辞めさせよう。その努力を通じてこそ、私たちは誇ることのできる社会を造ることができる。

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2007年 3月 8日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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コメント

うにさん、トラックバックありがとうございました。

>過去の戦争に関してこの国を追い詰め続けるのは、新たなナショナリズムを生み出すような形で逆の効果をもたらすかもしれない。既にそのようなことが起こりかかっている兆候が見られる。もし62年も経って日本の政治家たちがまだ歴史を否定しようとするなら、私たちは日本に対して憐れみを感じるしかない。

これ、相当きつい日本への苦言で、私は襟を正して聞かなければいけないと思うのですが、そう感じない日本人が増えているとするなら、戦後日本の何かが安倍や自民党保守派が言うのとは別の意味で間違っていたということなのでしょう。今、日本は歴史と世界から重い課題を与えられているのだと思います。私も立ち止まりたくなることもないではないですが(苦笑)、インターネット上で粘り強く訴えを続ける皆さんに学びながら歩き続けたいと思います。

投稿: 村野瀬玲奈 | 2007/03/08 0:54:11

紹介紙での論説は抑制が効いたトーンではあるものの、事の核心を突いているように思います。アジアの日本への眼差しは日本人が想定する以上に厳しくかつ暖かいものを感じます。「日本を変えられるのは日本だけだ」とのあきらめにも似た問いかけは、怠惰な私たちへの檄でもあります。
うにさんの広いフィールドワークには驚かされるとともに、大きな示唆となり感謝し尽くせません。TBありがとうございました。

投稿: ペンギン | 2007/03/08 8:02:51

村野瀬さん、ペンギンさん、コメントありがとうございます。
考えさせられますよねー。もっと考えていただきたい人たちの目や耳にも届けなくちゃいけないんだけど、見ざる、聞かざるですからねえ。せめて言わざるまでセットになっていれば、と思ってしまいます。
フィールドワークなんかやっていませんよー。新聞の感想書いているだけです。

投稿: うに | 2007/03/09 10:03:40

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