南京の陵辱
南京大虐殺に関する論争に参加するつもりはないのですが、最近の政治家の発言などを見ていると、全部「まぼろし」にされてしまいそうなので、基本文献はおさえておこうと思い、 Iris Chang さんの The Rape of Nanking を読みました。
日本では、歴史修正主義者たちが情報攪乱にいとまがなく、この本もヤリ玉に上がっているようです。でも、チャンさんの本は、1937年の12月に日本兵が南京の市民を何万人殺したかといった話が中心の本ではなく、南京で起こったことが人類史的にどういう意味を持つのかについての考察だと思います。執筆にとりかかったきっかけが、中国出身の両親から「南京大屠殺」という言葉を聞いて育ったことだったとしても、彼女の文章からは自分が中国系であるという民族意識とか、日本人に対する憎しみとかは全く感じられません。彼女の本を実際に読まずに、あるいは読んでも英語のニュアンスを把握できないまま批判している人も多いのではないかなと思いました。
非常に整った、淡々とした文体(とても読みやすいです)が印象的です。ナチスの党員だった John Rabe の帰国後の不遇を追ったり、司令官だった松井石根に同情的な記述があったり、その場にいた人たちの心の中にまで入っていこうとする著者の並々ならぬ共感力にも驚嘆すべきものがあります。そして、何よりも、自民族中心的な戦史ではなく人類共通の課題として事象をとらえようとする姿勢がすばらしいです。
日本語訳は出版されていないのですよね。残念なことだと思います。南京入城までの「百人斬り」をめぐる裁判でも名誉毀損で訴えていた遺族側の敗訴が確定したわけですし、右翼の暴力を恐れずに出版する会社が現れてくることを期待します。日本人の名前の綴りとか、明らかな間違いはけっこうあります。それらを直していくためにも、日本語版の出版は意義のあることだと思います。
著者の Iris Chang さんは数年前に亡くなられたと聞いています。彼女の仕事がとても意義深いものであったことを認める人間がここにも一人いることが、ご冥福と、遺されたご家族や友人の心の平安につながりますように。
はじめに述べたように、私は今の時点で論争に参加するつもりはありません。歴史修正主義者たちの本も何か読んでみなくてはね。論争を挑発するコメントや、うさばらしに過ぎないようなコメント等は受け取りません(消します)ので、消されてからぶーぶー言わないでくださいね。
Tags: 南京, 南京大虐殺, Iris Chang, The Rape of Nanking, アジア太平洋戦争, 戦争犯罪
2007年 3月 4日 午前 12:42 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
「レイプオブ南京」は日本で出版しようとした出版社が明らかな間違いを訂正しようと著者に申し出たところ、作者のアイリスチャンに拒否され、流石にあまりに明確な事実誤認の部分をそのままに出すわけにはいかないと日本での出版を諦めたという話があるそうですよ。
彼女は数年前に自殺したのですが、アメリカにおける中華系アメリカ人の差別についての本を出版した所、流石にアメリカについてのことだったので日本については鵜呑みにしたアメリカの方々も検証するわけで、事実誤認が多すぎると総スカンを喰らって(このことだけがメインの理由ではないかもしれませんが)失意で精神を病んでいたとのことでした。
投稿: 始めまして | 2007/03/15 21:08:23
初めましてさん…じゃないんですね。始めましてさん、コメントありがとうございます。
いろいろな噂があるものですね。本を出す時の編集者と著者の間の信頼関係はとても大事だと思います(経験者は語る)。どこかで話がこじれてしまったのでしょうね。
続けて藤岡信勝・東中野修道による批判本を読んだのですが、度の合わないメガネみたいな感じで、元の本の姿が全く伝わってこないなあと思いました。
投稿: うに | 2007/03/15 21:43:18
小銃、機関銃、日本刀、野砲・・・これらの武器で30万人を殺すのは、不可能です。
30万人の死体を処理するのに数ヶ月かかるはずです。
ユダヤ人収容所を見た事がありますか?ドイツ軍が計画的に、虐殺だけを目的とした施設と部隊、道具があったのに、あれだけの死体が未処理のまま放置されていました。
日本軍は30万人の死体を処理するだけの、能力はありません。数万人でも難しいでしょう。
当時20万人しか南京にはいなかったのに、どうやったら30万に殺せるのでしょう。
しかも占領後25万人に人口が増えています。大量虐殺があった場所に普通誰も戻ってこないでしょう。
南京は国際都市で、西洋人も多くいました。報道も多くいました。
当時ライカなどのカメラが、多く普及し西洋人は大抵カメラを持っていました。
またフィルムをまわす人も多くいました。
なのに、30万人が殺されたというのに、虐殺を示す写真、映像が一切ありません。
何故でしょうか。
アイリスチャンのレイプオブ南京に掲載されている、日本軍の写真は全て嘘です。
国民党軍宣伝部が捏造したものや、日本の雑誌から転用しキャプションをすり替え多ものなど、まともな写真は一つもありません。
南京大虐殺を信じている人は、結果的に独裁組織中国共産党の手のひらで踊っているのです。言論統制と言論弾圧の国から、まともな情報が出てくると思っているのでしょうか?
原子爆弾が2発炸裂して、犠牲になった人数が30万人です。
投稿: 強制連行 | 2007/03/16 2:52:44
レイプオブ南京は日本では出版出来ないそうです。
ある出版社が出版しようとしましたが、
あまりにも日本に関しての記述や、常識的な中国大陸の歴史でさえも間違えが多く、注釈本が別途必要になったそうです。それをアイリスチャン氏に諒解をとろうとすると、侮辱するなと大変お怒りになり出版は流れてしまったそうです。
http://www.geocities.com/TheTropics/Paradise/8783/mistake.html
↑レイプオブ南京90カ所の間違い
間違えだらけの本を読んで、真実を知ったかのように振る舞う人は単なる踊り子である。演出家は言うまでもなく中国共産党。
投稿: 強制連行 | 2007/03/16 3:05:13
強制連行さん、
記事の最初と最後を読んで、あなたのような書き込みを歓迎していないことを確認してください。消しても同じ趣旨の書き込みをする人が現れるだけかもしれないので、「もう間に合っているので、お引き取りください」の立て札の意味で、強制連行さんのコメントは残しておきますね。今後は躊躇せず削除するつもりです。
日本語版が出なかった経緯に関しては、昨日、別のかたにもうお答えしたように、編集者と著者のどちらが悪いと決めつけるのは硬直した思考だと思います。
投稿: うに | 2007/03/16 23:02:16
英語が不得意である為読めずに残念です.
自分の目で見て自分の頭で確かめてみたい.
写真は真実を写すに違いないという確からしさがありますが, 写し方や言葉の補足によっては, まったく意味の違う資料に摩り替わってしまう.
全ての写真が植物図鑑のように撮られるわけではない以上, 仕方のないことではありますが...
その場にキャパのような写真家がいれば... あるいは世界の見る目も変わったのかもしれません.
ありがとうございました.
投稿: 石川 | 2007/03/30 14:36:17
石川さん、
The Rape of Nanking の中で、写真は本の真ん中へんに綴じ込んである付録のような扱いで、本文とは結びついていないんです。
南京では、写真の持ち出しにかなり厳しい規制が行なわれていたようで、日の目を見なかった写真も多いのかなと思ってしまいます。
投稿: うに | 2007/03/31 19:37:36