モデスタ・ヴァレンティ通りへの行き方を教えてください
とはいえ、アリエテはまだ生きている。40才という彼の実年齢よりも少々老けて見えるが、こうして元気に自分の話をしている。2002年1月に、ローマ市が創造した架空の通り、「モデスタ・ヴァレンティ通り」のお陰である。この通りは、行政の書類の中にしか存在しない。アリエテのように住所がない人々を救い出すためにつくられた。 … この架空の住所のお陰で、アリエテは人生の再建に取り組めるようになった。 … この通りの住所が彼らにもたらす利益は、社会福祉ばかりではないと言う。例えば、住民登録がないために、選挙権を失った人々が再び権利を獲得できたり、また人々のプライバシーを守る権利の獲得にも役立っている。 … 「住所をもらう前は、警官から長時間くだらない職務質問をされ、ゴミのような扱いを受けてきた。今は、身分証明書を提示すれば、何も言われることはない」 …
ビッグイシュー日本版第3号(2003年12月4日号)に掲載されていたパウロ・ビルゴさんの記事「その名はヴァレンティ通り」からの引用です。モデスタ・ヴァレンティ通りについては、第65号(2007年2月1日号)に短い記事があり、どこかで読んだ覚えはあったものの、記憶の糸をたどれずにいました。第3号まで遡れたのは、中村音楽工房BLOGの記事「ローマ「モデスタ・ヴァレンティ通り」にみる日伊のホームレス対策の差」のおかげです。
2002年、Via Modesta Valenti の“開通”を知らせる告知文はこちら(検索で見つけたこのページはイタリア語ですが、サイトは英語版もあります)。
ビッグイシュー第65号の記事からも引用します。
一方、大阪市は昨年末、「あいりん地域」のある住所に大量の住民登録があったので実態確認のうえ適正化を図ると発表し、職権での登録抹消を示唆しました。新聞も「架空」住民登録と報道。これに対し、ある住所と名指しされた「釜ヶ崎支援機構」などは、自立上必要と認めた人に住民登録先として使ってもらっていると話しています。そして住居を持てない多数の住民が年金受給や就職活動もできないでいる事実を大阪市が認め、「違法」扱いではなく住居を与えるなど「合法」的に住民登録できるような方策をともに考えようと提案しています。
大阪市は、3月2日以降、住民登録の抹消手続きを始める旨、発表しました。草加さんの旗旗にニュースのまとめ、26日の集会、28日の集会の情報があります。
人々の連帯のもとに、開かれた心で、新たな可能性が切り開かれていくことを願わずにはいられません。
Tags: ホームレス, 大阪市, ローマ, 家, 住所, 貧困
3月1日付記:ビッグイシューのサイトで「その名はヴァレンティ通り」が読めるようになりました。一方、今日の夕刻には、2月27日の關淳一大阪市長の記者会見のようすが大阪市のサイトに掲載される予定です。記者の質問に答えて、「3月2日に、法律にのっとって、しっかりと職権で消除を行なう」「法律上、代替地を設定することは不可能」と語ったと聞いています。
2007年 2月 24日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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» 大阪市で2700人の選挙権剥奪 トラックバック ++つぶやき手帳++
「大阪市で2700人の選挙権剥奪」・・・わざとこういうタイトルをつけました。
これを見て「何だって!」と、驚かれるでしょうか?正確に言うと、日雇労働者組合の建物に置かれた2700人分の住民登録を、大阪市が3月2日をもって抹消する通告をしたということです。
大阪あいりん地区大量住民登録 市、2700人に抹消予告書(読売新聞地方版)
公的機関“黙認”の果て 「住所不定ダメ」現行制度に問題(読売新聞地方版)
「なんだ、架空の住所登録を抹消するだけか。ならいいじゃないか」と思われるでしょうか... 続きを読む
受信: 2007/02/25 19:49:43
» 暴走する大阪市=釜ヶ崎住民票削除問題(旗旗) トラックバック タカマサのきまぐれ時評
■うかつだったんだが、大阪市は、さまざまなスキャンダルでたたかれてコリたかとおもったら、全然そうでなかったらしい。■釜ヶ崎をねらいうちにした、むごいしうちが3月2日にせまっている。■『旗旗』から。釜ヶ崎住民票削除反対!あらゆる場所で緊急に行動を!(1) ...... 続きを読む
受信: 2007/03/01 0:35:54
» 山が動いた?大阪高裁が住民登録削除差し止めの仮処分を決定! トラックバック ブログ「旗旗」
そこにこの仮処分決定のニュースがとびこみ、当然に労働者側は俄然わきたちました。しかもなんとこれだけの「重要判例」をひきだしたのは、日雇い・野宿労働者たちが行った、弁護士なしの本人訴訟です。市側もかなり混乱して対応におおわらわだったと思われます。労働者�... 続きを読む
受信: 2007/03/02 6:23:18
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コメント
トラックバックからきました。
私は、ビッグイシュー第65号で初めてモデスタ・ヴァレンティ通りのことを知り(第3号のときはまだビッグイシュー読者ではなかったので)、短い記事でしたが日本との意識の差に驚きました。
「再チャレンジ」などと言われながら、日本ではホームレスの自立を支援するどころか、排除の論理が働いているのはとても残念ですね。
投稿: 中村音楽工房BLOG | 2007/02/24 1:11:23
中村さん、はじめまして。
日本でもできないことじゃない(というか、今まで、事実上それができていた)のに、取り上げてしまうというのだから、首を傾げてしまいますよね。
中村さんのブログ、他の記事もとても興味深く読ませていただきました。\70 のバナーを見て、とても親近感を持ちました。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: うに | 2007/02/24 10:03:10
記事末尾に、「ヴァレンティ通り」の記事がビッグイシューのサイトに掲載されたこと、関市長の記者会見に関することを追記しました。
投稿: うに | 2007/03/01 9:01:33