イスラエルのアラブ人
もう一か月近く前になるが、Mohammed Bakri さんによる一人芝居「悲観楽観悲運のサイード」の京都公演を観た。開演の30分ぐらい前に着いたら、入り口の前の道でたばこを吸っている人がいて、それがバクリさんだった。原作を読んだことがあって、公演をものすごく楽しみにしていることを伝えて、握手してもらった。映画スターと握手したのは生まれて初めて。劇で感動した私は終演後にもう一度握手してもらった。
会場に入ったら、舞台中央に大きなイスラエル国旗があって、たじろいだ。劇は、ナクバ(悲劇=イスラエル建国)によってそれまで住んでいた街を追われ、しかしイスラエル国内にとどまったパレスチナ人の生涯を描いたものだ。ユダヤ人国家として国づくりが進められる中、主人公は疎外感を解離して生き続けていく。征服者の旗は、彼を戸惑わせる数々の不条理の表象でもあるし、彼を監視し行動を制約する構造的な暴力そのものでもある。これらの意味合いは劇中の主人公のみならず、それを演じるバクリさんにとっても同じように切実なものであるはずだ。劇はイスラエル国家の人権蹂躙の数々を解き明かす。彼は、それを旗の前で正々堂々と、そして旗の影にいる人たちの堪忍の度合いをぎりぎりまで見極めて演じているのだ。旗はまた、万が一、権力が彼の芸術を見咎めて、彼が帰国したり出国したりできなくなったとしたら、彼を苛んでいるのがだれであるかが私たちにすぐに分かるようにするための符牒なのかもしれない。
占領下のガザと西岸に比べても、イスラエル国内のパレスチナ人たちについての私の知識は更に極端に限られていて、バクリさんが伝えたかったことのほんの数十分の一しか私には感じることができなかったのだと思う。それでも、観たかった彼の劇を自分の住む街で観ることができたのは、本当に奇跡に近いことだ。その奇跡を起こしてくれたかたがたに、そしてバクリさんその人に、心からお礼を言いたい。
The Future Vision of the Palestinian Arabs in Israel ― イスラエル国内在住のパレスチナ・アラブ人の団体 Mossawa Centre が12月にまとめた提言。執筆はイスラエル国内のアラブ系地方自治体首長全国委員会。イスラエルがアラブ系住民に対して甚だ不平等、不公正な扱いをしてきたことを指摘し、イスラエルの民主化を促している。
ユダヤ人による民族支配(ethnocracy)に関しては、イスラエルをトルコ、スリランカ、ラトビア、リトアニア、エストニアに並ぶ多数民族中心的な国家だと評し、ナクバ以来の差別的な政策の責任を取り、アラブ人を先住民として認めることなどを迫っている。その他、法的地位、土地住宅政策、経済、社会的な発展、教育、文化、公共政策について具体的な提言が記されている。
提言書は、占領に反対するイスラエル市民団体のサイト Occupation Magazine の記事からのリンクで知った。ハアレツ紙の記事によると、先月はイスラエル国内のパレスチナ人団体から「ハイファ文書」という重要な文書も出たらしいのだけれど、見つからない。
P-navi info のビーさんによる京都公演の感想のほか、バクリさんの劇について書いている中野さん、おらびねさん、bukuroさんのブログにトラックバックを送ります。唐突ですみません。観に来ていた「旗旗」の草加さんにも年賀状代わりに送っておこう。
2007年 1月 6日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
この記事へのコメントは終了しました。







この記事の URL をメールで送信する
コメント