フィリピンで、沖縄で
昨年の6月に書いた「死刑廃止と被害者の声」という記事の中で、フィリピンでのアメリカ海兵隊員によるレイプ事件の話に触れました。その事件の裁判は先月4日に判決が出ました。
2005年11月1日にスービックで起きたこの事件では、泥酔した当時22歳のニコルさん(仮名)を車の中でレイプした罪で4人の海兵隊員たちが訴えられていました。強姦には直接関わらず周りではやし立てていたとされる3人が無罪に、直接の関与が立証された1名が有罪、懲役40年になりました。フィリピンの INQ7.net の記事 "US Marine guilty of raping Filipina, 3 others acquitted" に、判決文からのかなり詳しい引用があります。
有罪となった被告はマニラ市内の拘置所に収監されましたが、アメリカ政府は、米軍の地位協定(Visiting Forces Agreement)では「司法手続きがすべて完了するまで身柄は米軍の保護下に置かれる」と定められているとして、控訴中の被告の身柄引き渡しをフィリピン政府に要求していました。2007年2月に予定されていた両国軍の共同演習 Balikatan 2007 の中止を発表するなど("US cancels military exercises with RP over rape case")、アメリカが強い圧力をかけた結果、裁判所が引き渡しの差し止めを命じたにも関わらず("Smith to stay in Makati jail, judge rules")、被告は12月29日深夜、アメリカ大使館に移送されました("He was gone in 30 minutes")。
フィリピン国内では、地位協定の破棄を求める意見や、アロヨ大統領の弾劾を求める声が広がっています。地位協定(第5条第6項)には特例的にフィリピン政府がアメリカ政府に対して身柄について意見を伝えることができ、アメリカ政府はそれを十分考慮しなくてはならないとも定めていますから、それを行なわずに圧力に屈したアロヨ大統領への非難は当然だろうと思います。
フィリピンは民衆の力で米軍基地を撤廃したわけですが(韓国ハンギョレ新聞が31日の記事で日本と韓国の市民グループが基地跡地にできた街を訪れたようすを伝えています)、軛はそれで外れたわけではないようです。有罪となった被告を含め、罪に問われた4名はすべて沖縄駐留軍に在籍する人たちです。詳細は分からないのですが、Raul Gonzalez 法務大臣は、アメリカが有罪となった被告を沖縄に移送し別の裁判に出廷させる計画をたてていたと語っています("US custody of Smith 'slap in face' of judiciary -- lawyer")。米軍の駐留する日本に暮らす私たちにとって、ニコルさんの事件は無関係な遠い国の話ではありません。
2007年 1月 2日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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