思いやる脳
「エゴイズム」の反意語 "altruism" は、「愛他主義」とか「利他的」とか訳されるのだと思いますが、いま一つ据わりが悪いですよね。「思いやり」とはちょっと違うかなあ。とにかく、ちょっと眉つばなのですが、この altruism を司る脳の部分が見つかったそうです。
Activation of Brain Region Predicts Altruism という報道資料によると、米デューク大学医療センターで行なわれた研究で、右脳の posterior superior temporal sulcus というのがその部分らしいと分かったとのこと。たぶん、日本語では「後部上側頭溝」と呼ばれるのだと思います。Nature Neuroscience 誌に掲載された論文そのものはお金を払わないと読めないのですが、図が見られたので、Gray's Anatomy の絵を使って、たぶんここらへんだろうという場所を図示してみました。右耳のちょっと上の後ろのあたりだと思います。間違っていたら、ごめんなさい。
まず、自分の選んだ慈善団体にお金が届けられるようにするコンピュータ・ゲームをしている人、そのゲームが自動で動いているのを見ている人の脳を MRI で撮影すると、見ている人のほうがゲームをしている人より、この部分が活性化されることが分かったそうです。次に、いくつかの質問をして、どれぐらいその被験者が altruistic かを調べた結果、より altruistic な人ほど、この部分の活動が活発であるという相関関係が観察された、というもの。
自分以外の人(この場合はコンピュータですが)がやっていることに意味を見いだす能力をどれくらい持っているかが、他人を思いやり、助ける心につながっているのではないかと、研究を行なった Dharol Tankersley さんたちは考えている、とのことです。
実験の設計や結果の解釈に、ちょっと説得力の不足を感じますが、素人を納得させるための論文ではないから、そんなこと言ってもしかたないのでしょうね。テレビの情報番組で追実験でもやらないかな。(笑)
「そんなの自己責任でしょ。私には関係ない」みたいなことを言う人や何でも経済的な利益に還元して考える人は、この部分が萎縮したりしてるんでしょうかね。今度、一回叩いてみよう。
2007年 1月 26日 午前 12:02 | Permalink | この月のアーカイブへ
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コメント
その部位の発達あるいは萎縮が先天的なものなのか後天的なものなのか、興味ありますね。先天的だとしたら、その遺伝学的、発生学的、生理学的メカニズムはどんなものか。後天的だとしたら、どのような社会環境でその発達が促されるのか。相互作用があるとしたら、それはどのようなものか。
altruismをどう定義し、どういう尺度でどう測定するか。たぶん先行研究はあるんでしょうけど、脳生理学、社会心理学などを総動員した研究になりそうですね。
テレビの情報番組で追試をやるのもいいけど、私としては、「教育再生(井戸端)会議」でぜひ論じてほしいですね。(笑)
投稿: 村野瀬玲奈 | 2007/01/26 0:57:39
解明にはかなり時間がかかるのでしょうけれど、「精神」の仕組みが生理学的に解き明かされていくのは、ちょっとわくわくしますね。
教育再生会議で審議って、いったい何が出てくるのでしょう? 愛国心を司る中枢があると考えて、そこのマッサージを学校のカリキュラムに入れるとか?
投稿: うに | 2007/01/26 23:11:08