プラムディアの四部作を読んだ
今年の4月に亡くなったインドネシアの作家、プラムディア・アナンタ・トゥル(Pramoedya Ananta Toer)の『ブル四部作(Buru Quartet)』を読みました。プラムディアが政治犯としてブル収容所に投獄されていた時に執筆した4冊の小説で、This Earth of Mankind、Child of All Nations、Footsteps、House of Glass から成ります。第4巻を除く3作は、めこん社から『人間の大地(上・下)』、『すべての民族の子(上・下)』、『足跡』として翻訳出版されています。私のイチオシです。
ちょうど一世紀ほど前のインドネシアというか、オランダ領東インド諸島が舞台で、Minke という少年が植民地支配を厳しく糾弾するジャーナリストになっていく姿を描いたものです。人種差別に毅然と対決し、理性的に帝国主義の実相を暴き、民衆を率いていく姿は、現代にあっても英雄と呼ぶに相応しいと思いました。実在の人物を下敷きにしているようですが、いろいろな挫折を乗り越えていく設定も感動的です。ともすれば将来への希望を失いかねない今の日本で、子どもたちの課題図書にするといいのではないでしょうか。
ネタバレしないようにすると漠然としたことしか言えないのですが、最初の3冊は、主人公 Minke の一人称の語りです。最後の巻は、一転して、植民地政府の官僚となった現地人の視点からの記述になります。第3巻の半ばがちょっと中だるみした感じがありますが、あとは、ものすごい迫力です。特に第4巻は、体制の内部から見る形を取っているので、自民党政権とかブッシュ政権とかのやり口みたいなものを理解する上でも、とても参考になる気がしました。話の舞台からは一世紀経っているけど、人間のやっていることって、あまり変わっていないんだな、と思いました。
プラムディアの作品では、この『ブル四部作』のほかに、インドネシアの1945年8月14日と15日を描いた The Fugitive もお勧めです。The Fugitive のほうが、静かで落ち着いた雰囲気です。ブル四部作は収容所生活の中で書かれたというだけあって、ちょっと荒削りなところがあります。ノーベル賞を取れなかったのは、そこらへんが問題だったのかな。
2006年 12月 4日 午前 12:39 | Permalink | この月のアーカイブへ
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受信: 2006/12/04 4:51:57
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