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2006.11.13

ヒレの多いイルカと、宇井純さん追悼

一週間ほど前に「第4のひれ持つイルカ発見」というニュースが新聞に載っていた。陸に棲んでいた鯨類の祖先が海に住み家を移した進化の過程を解き明かすヒントになるのではないかという、研究者の期待に満ちた談話も紹介されていた。

このイルカが見つかったのは和歌山県太地町沖の熊野灘。記事をよく読むと「捕獲したバンドウイルカ118頭の中から見つかった」と書いてある。最近のジャパンタイムズ紙の記事(購読には無料の読者登録が必要)によると、太地町では秋から春先にかけて年間2,000頭から3,000頭のイルカが捕獲され、その多くは食肉として市場に出回るらしい。太地町の漁獲高は日本全国の1割超にあたる。

ジャパンタイムズの記事に北海道医療大学薬学部の遠藤哲也さんによる研究が言及されていた。秋山記念生命科学振興財団というところのサイトに遠藤さんの研究報告「市販鯨肉の水銀汚染-種差と地域差について」があった。全国でイルカなどの小型鯨類(歯鯨)の赤身肉を購入し、水銀濃度を計測すると、すべてのサンプルで旧厚生省が定めた海産物の基準を上回っており、ラットに1週間食べさせるという実験では中毒は認められなかったものの、「慢性的に汚染度の高い鯨肉を摂取すればメチル水銀中毒になることは疑う余地がない。歯鯨の赤身肉は妊婦のみならず、健常人も摂食を避けた方が賢明である」という結論が出されている。

メチル水銀中毒である水俣病の場合、廃業を強いられた漁民の補償を避けるため、メチル水銀が原因だと明らかになってからも熊本県は一度も禁漁措置をとることはなかった。鯨肉に含有される有機水銀の危険性が一般的に認識されているのにもかかわらず、その売買規制等を行なわないこと、そして捕鯨に代わる支援を漁民に行なわないことは、公害一般は言うに及ばず、水俣病と同じ有機水銀の問題についてさえ水俣から私たちが何も学ばなかったことを意味する。

水俣の人々とともに闘った宇井純さんが死んだ。その功績を讃え、ご冥福を祈るとともに、私も市民の一人として彼の遺志を継ぐ努力をしていくことを誓いたい。

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2006年 11月 13日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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