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2006.09.01

ドイツにおける労働者の経営参加

Mitbestimmung ― 英訳の co-determination を手元の英和辞典では「労働者の経営参加」「(労使の)共同決定」と訳し、「旧西ドイツを中心にヨーロッパの多くの国で実施されている企業の意思決定への労働者の参加で, 企業の最高管理機関である監査役会に従業員代表が加わるなどの形で, 投資計画・人員計画・賃金などの事項について強い発言権を行使すること」と解説している。

Deutsche Welle の "Giving Employees a Say: Unique German Labor Law Turns 30" という記事によれば、オランダ、フランス、スウェーデンに若干似た法制があるものの、ドイツのものはかなりしっかりしていて、

  • 5人を超す従業員のいる企業では、保険、安全、解雇、給与、時間外労働などについては、労使協議会を組織するか労働者の代表が出席する場で決定しなければならない
  • 2,000人を超す職場では理事会に労働者の代表のための席がなければならない。数は最低理事の3分の1。大企業では理事の半数が労働者代表である必要がある。労働者代表は2票分の投票権を持ったり、議長として最後の票を投じる権利を持つ

らしい。鉱業、鋼業分野では1951年から、それらの分野では1976年から、こうなっているそうだ。つまり、今年でちょうど30周年。

ご多分に洩れず、グローバリゼーションの影響で、このシステムを変えようという動きが始まっているらしい。すでにヨーロッパの司法裁判所はドイツで操業する他国の企業はこのドイツの法制には縛られないとしている。時代に合わせて何らかの変更が必要だろうという点ではだいたい意見が一致しているものの、労働者の権利を圧迫する変更になるのではないかなど、疑念も存在する。

Deutsche Welle の記事は、労働者の経営参加がストライキなどを防ぐなどの効果を持ってきたという経営者の声も紹介して、基本的にこのシステムを高く評価しているように読める。BBC の記事に、ドイツの新聞3紙の論説が紹介されている。Frankfurter Allgemeine Zeitung 紙は、労働者の経営参加が競争力を弱めるという考えらしい。Berliner Zeitung 紙は、労働者の経営参加がよい労働環境を作ってきたと評価しているが、現在の力関係では労働者の発言力が弱められる方向に行くだろうと悲観的だ。Die Tageszeitung 紙は、環境、汚職、消費者の保護などの意見が取り入れられるような方向で改革すべきだとしている。

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2006年 9月 1日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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コメント

EU 諸国の労使関係に付いて興味深く読まさせてもらいました.恐らくは,歴史的に技術者の地位が高い風土がこの様な労働者の経営参画を可能ならしめたのではないかと,個人的には思っています.EU では,中小企業の地位も高く,中小企業憲章と呼ばれるものが制定されており,社会における中小企業の役割,立場が日本のそれと大きく違っています.日本にしても,企業の殆んどは中小企業ですから,中小企業の地位見直しがなければ,労働者の地位も変わらないのではないかと思っています.

投稿: 桜田 | 2006/09/01 1:22:19

桜田さん、こんにちは。
不勉強で、中小企業をとりまく仕組みをどう変えていくのがいいのか、皆目見当が付きません。税制は大企業に有利になっているだろうなあ、みたいな印象はありますが。
今夜書く記事は、一応、中小企業関係の話なのですが、あまり関係ないだろうなあ。

投稿: うに | 2006/09/01 22:17:19

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