サマワと劣化ウラン
劣化ウランによる健康被害に関する長めの記事がAPから12日付けで配信されている。私は劣化ウランのことについてはほとんど知らず、目にする議論も、ものすごくおぞましい兵器であるとするものから全く無害だとするものまであり、立場を決めかねてしまうのであるが、自衛隊も駐屯していたサマワに関する話だったため、日本で市民権を行使する人間としてとても気になったので紹介しておくことにする。もしかすると私以外の人には旧聞に属することなのかもしれない。
Deborah Hastings さんによる "Sickened Iraq Vets Cite Depleted Uranium" という記事の主人公は Herbert Reed さんというサマワに駐屯していたアメリカの復員兵で、歯茎からの出血、血尿や血便、視覚障害、甲状腺の腫瘍、湿疹、偏頭痛、関節炎など、さまざまな症状で治療を受けている。通院している復員兵向けの医療施設で、同じ部隊に属していた友人を何人も見かけたことから不審になり、仲間たちとともにアメリカの医学研究機関よりも高度な検査が受けられるとされるドイツで検査を受けた(ドイツの医療機関の名前は出ていないが、フランクフルトの大学教授がイギリス the University of Leicester で放射性同位体の研究をする Randall Parrish 教授とともに開発した検査だと書いてある)。尿に劣化ウランが含まれているという結果が出て、アメリカの病院にサンプルを持ち込んだが、そこでは陰性の反応しかでず、依然として効果のある治療を受けられずにいる。
そもそも、第一次、第二次の湾岸戦争に参加したアメリカ兵は90万人に上るのに、政府による劣化ウランの影響に関する復員兵の追跡調査は一つしか行なわれておらず、サンプル数も32名と非常に少なく、十分だとは言えない状況である。動物実験では、劣化ウランが体内に蓄積され、腫瘍が生じたり、遺伝子異常を起こしたり、新生児に障害を及ぼしたりすることが知られている(残念ながら文献等は紹介されていない)のにも関わらずである。さまざまな湾岸戦争症候群の中に埋もれてしまっている状態だ。
現在のところ、劣化ウランを健康被害に結びつける有力な証拠はないものの、第二次世界大戦時の核実験による被曝や、ベトナム戦争で用いられた除草剤の健康への影響を政府が認めたのは長い年月を経た後なので、劣化ウランに関しても、今の時点で頭ごなしに問題ないとしてしまうのは早急かもしれない。
記事ではまた、復員後、病気になり、劣化ウランの影響を疑っているが、病院では取り合ってもらえず、争っても勝ち目がないと考えてじっと耐えている元兵士も数多くいると伝えられている。
以上がこの記事の概要である。この他、劣化ウランによる健康被害に関して中道的な立場をとる研究者として Dan Fahey さんという人の名前があげられている。また、オランダ軍がサマワで放射線を測定したらあまりに値が高かったので、駐屯地を移したといううわさが紹介されている。
劣化ウランをめぐるネット上の議論を見ると、現時点での非常に限られた研究成果を過信して、危険性を憂慮する人を嘲笑するかのような一見「お利口さん」な子どもじみた発言があまりにも多いように思います。そんな状態では、万が一、劣化ウランが本当に健康に被害を及ぼすことがあった場合でも、イラクに派兵された自衛官が自分の健康への心配を口にすることを躊躇してしまうのではないでしょうか。
このブログでは、たぶん今までこれしか劣化ウランのことについては書いていない。もっと考えたほうがいい?
2006年 8月 16日 午前 12:00 | Permalink | この月のアーカイブへ
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