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2006.05.12

憲法草案を読む

アメリカと緊密な同盟関係にあるその国では、近年、憲法に関する論議が高まってきている。今週の月曜日にある団体が発表した新憲法草案を見てみよう。

…といった類の、ちょっと思わせぶりの、もったいぶった書き方が私のスタイルだと思われないよう、脱構築して最初に種明かししちゃいます。イスラエルの話です。

エルサレム・ポスト紙の記事 "Democracy Institute offers constitution" によると、Israel Democracy Institute という団体(司法省から委託を受けて研究などを行なうこともあるようです)が Meir Shamgar 元最高裁長官らの執筆による憲法草案を発表しました(現在のところ、IDI のサイトには報道発表はありますが、英文の草案はまだありません)。

この憲法草案の主な点を記事に沿って拾い上げてみます。

  1. イスラエルをユダヤ国家であると規定する
  2. 拷問などの残酷、非人間的な扱いを禁止する
  3. 治安維持のための予備拘束を禁止し、すみやかに裁判を受ける権利を保証する
  4. 国内での、および国外への移動の権利を保証する
  5. 大臣の数を18と定める
  6. 経済的な格差是正のために予算を用いることを義務づける、財政の透明性を確保する

第1点は、イスラエル国内のアラブ系市民などの問題がありますから重要ですが、詳しいことは述べられていません。第2点、第3点については、イスラエルが現状として Israeli Defence Forces 「イ衛隊」による拘束や拷問などの人権問題を抱えていることが記事でも指摘されています。第4点も、モルデハイ・バヌヌさんが出国を認められていないことからも分かるように、現在は保証されていません。第5点関連では、現在の閣僚数は25名だとのことです。最後の点は財政関連ですが、政府の予算配分などについて裁判で異議を申し立てることができるようになる、という点が記事では紹介されています。

他人の国の憲法に対してああだ、こうだ言うつもりはないのですが、アメリカが「重要な同盟国」であると公言し、「その地域で最も民主的な国」であるとしているイスラエルで、これらの点が今の時点で議論の対象とされ、これから確立されていくのだというのは、私にはちょっと驚きでした(ちなみに、現在、イスラエルは明文憲法を持っていないようです)。

これらの主な点をすでに憲法の中に盛り込んでいる国もあります:

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

すごいですね、この国。時代の最先端の憲法を持っている。ついでだから閣僚数を調べてみよう。18人だ! イスラエルがこれからの目標とする「小さい政府」を既に実現しているではないか! 私、大好き、この国!

…なんだ、結局、もったいぶった書き方になっちゃった。長々と書きましたが、要するに、日本国憲法は古くありません。変える必要なし!

もしみなさんのまわりに「60年近くも前の憲法じゃ古すぎる」「憲法を変えなければアメリカに同盟国として扱ってもらえない」と主張する人がいたら、その人は、かなりの世間知らずか、プロパガンダを鵜呑みにして思考停止してしまっている人だと考えられます。そんな人と話をする時に、この記事のことを思い出していただければ、うれしいです。

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2006年 5月 12日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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