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2005.12.17

東北アジア紛争の伏流

North East Asia's Undercurrents of Conflict ― The International Crisis Group という NGO が12月15日付けでまとめた、日本、中国、韓国の間のぎくしゃくした関係に関する報告書です。中国の反日デモ、島根県の「竹島の日」問題、小泉首相の靖国神社参拝、『嫌韓流』本など、今年の動きを詳しく盛り込んだ、かなりバランスのとれた分析が提示されていると思います。読んでいて新しいことが出て来た気がしないので、ある意味つまらないのですが、時が経ち、今年が歴史の中に取り込まれていくのに従って価値が出てくるのかもしれません。今月に入ってからの新聞報道が引用されるなど、この瞬間をとらえようとしている一方で、長期的には間島地方(中国国内の朝鮮族が多く居住する地域)の領有権が問題になるなどとも指摘してあり、賞味期限が分かりにくい報告書でもあります。

尖閣諸島(釣魚島)問題の解決に中国とASEAN諸国の間の申し合わせに範をとることを中国政府に提案したり、日本の過去の謝罪をもっと率直に受け入れるように韓国に求めたりしています。日本政府に対しては、閣僚の歴史認識発言をなんとかしろ等との注文を付けています。

全体的にちょっと日本の反動勢力に甘いかもしれません。12月7日の麻生太郎外務大臣の「過去に韓国や中国をはじめとするアジアの国々で無辜の民を苦しめたことは謙虚な反省の念をもって臨まなくてはならない」という発言を評価していますが、これはどう考えても買いかぶりでしょう。また、韓国で反日意識が下降してきている一方、中国では依然として「日本を許さない」という姿勢が強く、その差を日本人も認識しているとしていますが、実際のところ、どうなのか、私は疑問に思いました。ちなみに、左翼の現状については、社会党の崩壊によって右傾化に対抗する機関的な存在を失ってしまった、と書かれています。

余談。「度を越したナショナリズムは治療法がまだ見つかっていない慢性疾患に喩えられるかもしれない。しかし、もしその病気そのものを治すことができないとしても、炎症のもとを抑える努力をすることはできる」という一節があります。だから、どんなに困難に思われても領土や歴史の問題が悪影響を起こさないように努力すべきである、そうしなければ地域の秩序はよくすることができない、という論なのですが、私はちょうど、右寄りの人の書いたものを見て、つくづく、これは「死んでも治らない」の類だなと思ったところだったので、喩えが妙に生々しく思えて、頷いてしまいました。

もう一点。ドイツのシュレーダー前首相がアウシュビッツ解放60周年に際して、「今生きているドイツ人のほとんどはホロコーストに対して何ら罪を負っていない。しかし、特別な責任は負っているのだ」と述べたことが紹介されていました。なかなか考えさせられる言葉だな、と思いました。

2005年 12月 17日 午前 12:00 | | この月のアーカイブへ

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中国の隣国、日本で内閣改造が行われました。 中国ではやはり、官房長官に安倍晋三、 続きを読む

受信: 2005/12/17 6:52:54

コメント

はじめまして。
古いエントリですがトラックバックを遅らせていただきました。
日本が韓国と中国とを区別して対応するのでは、という観測は中国も持っているようですね。また、麻生氏や安倍氏もそのように受け取られるような発言をしています。
しかし、実際にはこのような日本の戦略は上手く行っていないようですね。
他方、中国では韓国のナショナリズムに刺激を受けることが多いように思われます(3・1運動以来かもしれません)。4月のデモの際には「韓国では大統領が率先して反日運動してるのにわが国の指導者は弱腰だ」なんて政府批判もあったようです。
最近では、韓流ブームで韓国の高感度がかなり上がっています。以下はその辺りの事情を書いたエントリです。
http://dicenews.cocolog-nifty.com/2075/2005/11/post_b5f7.html
ここで日本が歴史問題を打開することもなく、中韓を離間させようとしても効果は限定的なものになると思います。

投稿: ライター2 | 2005/12/17 7:14:41

なるほど。中国と韓国とで対応を使い分けているのではないかという点、勉強になりました。ぼーっと見ているだけだと気が付きませんよね、これ。ライター2さん、ありがとうございました。

投稿: うに | 2005/12/17 9:03:11

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