空飛ぶ鳥の少女
Secretly Canadian という聞いたことのないレコード会社から出ている、Antony and the Johnsons という謎めいたバンドの I Am a Bird Now というCDを買いました(上はジャケット写真。ここに掲載できる写真がないか問い合わせたところ、レコード会社のプレスキットにあるものを使ってよいというお答えをいただき、使わせていただいています)。 iTunes でこのCDを再生すると、ジャンル欄には "Easy Listening" と表示されます。これほどそぐわない分類もめったにない気がします。とても聴くのがむずかしい(いろいろと考えさせられずには聴けない)CDです。
アルバムの3曲目で、Antony さんは、「いつか私はきれいな女の人になるけれど、今は私は男の子なの」と歌っています。CD の表面には、子どもの幼い筆跡で「ぼくは男の子にはなりたくない。女の子になりたい」と書いてあります。アルバムには、自分の性に戸惑う子どもの気持ち、支えてくれる姉への感謝と愛、死への恐怖などがたくさん詰まっています。
NPR のサイトで、このアルバムでたぶん一番刺激的な曲、"Hope There's Someone" が最初から終わりまで RealPlayer 形式で聴くことができます。おそらく思春期に声変わりをして激しい衝撃を受けたその時のままのアントニーさんの美しいボーカルの後、中ほど2分25秒付近から後の部分に、あなたは何を聞きますか? 幼いころ階段の上から階下をのぞき込んだ時に感じた恐怖? 物心ついてからいつも影のように付きまとってきた実存的な不安? 深遠な宇宙に生きる孤独?それとも性的なオルガスム? 私はここ二日あまり、この幻覚を誘うような曲にちょっと中毒状態になっています。忘れていた子どものころの思い出が一気に噴き出してきたりして… 「かっこつけてらー」と思って、もっと軽い気持ちで聴けばいいんですけどね。
Adam Schecter さんのアニメーションもとても興味深いですが、たぶん、音だけを聞いた後で見たほうがいいと思います。ページ右上のほうにある犬の宇宙飛行士からたどって Flash のページへどうぞ。公式なミュージック・ビデオはこちら。
Antony and the Johnsons は現在、ヨーロッパをツアー中だとのこと。日本にも来てくれるといいなあ。
2005年 11月 30日 午前 01:38 | Permalink | コメント (4) | トラックバック (1)