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2005.05.19

ナショナリズムという悪疫

The Scourge of Nationalism ― The Progressive の6月号に掲載されているアメリカの歴史家 Howard Zinn さんの論考。ナショナリズムが罪のない誇りの感情として存在しうる国もあるが、軍事大国や領土拡張の欲望のある国では、傲慢で、自他ともに危険なものになってしまうと論じている。

ハワード・ジンさんの考察の対象はアメリカ合州国で、その市民が常に「自分たちは他の国とは違う特異な国だ」と考え込まされてきて、メキシコ、キューバ、フィリピン、ハイチ、ドミニカなどへの介入を「文明化」だとして正当化してきたと述べている。今イラクを「解放」し「民主化」するのだと言っているのも、その延長に過ぎない。ナショナリズムに毒されると、釣り合いの感覚が失われてしまう。パールハーバーで2,300人が殺されたことが広島や長崎で24万人を殺すことを正当化するように人々が考えるようになる。

このような危険なナショナリズムを防ぐためには、国旗や国歌などを捨て、国家ではなく人類に忠誠を誓う必要がある。国(nation)というのが、さほど意味のある集団ではないことを知る必要があるのだ。

以上が Zinn さんの主張の概略である。彼の主張は決して合州国だけに当てはまるものだというわけではないだろう。日本にも過去の植民地支配が韓国や台湾の「近代化」に貢献したから贖罪されるべきだなどと主張する傲慢なナショナリストたちがいる。日本の被害体験と加害体験を正しい遠近法の中で見られない人たちがいる。日本を「ユニークな国(普通ではない国)」だと信じて疑わない人たちがいる。

Howard Zinn さんの意図ではないにしても、彼のこのエッセイは、合州国以外の国の人にも読まれるべきものだと思った。

2005年 5月 19日 午後 09:49 | | この月のアーカイブへ

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コメント

 ナショナリズムについては、最近思うところがあるので、共感しました。国の他にも宗教も似たような問題がありますよね。ユニバーサルな視点で物事を考えていかないと、過ちを犯しやすいのではないかと思います。ユニバーサルが100%正しいかというとそうではないとは思うのですが、一番近いキーワードかなと思います。

 アメリカは、パワーによって世界を秩序ある平和な状況に導いているとは思いますが、過ちを犯してしまうと世界が滅びてしまう可能性があり、その点をもっとアメリカ国民が意識する必要があると思いました。自国の利益を考えるあまり、世界の秩序が崩壊することがないように願っています。

投稿: べええ | 2005/05/20 5:48:15

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