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2004.06.22

脳は何色

脳に関する文章を偶然、二つ続けて読んだ。

一つはここにもコメントを書いてくれる ten さんが aozora blog に書いた「記憶ということ・しなやかな指」という文章。ten さんが友人から言われたという次の言葉に笑い転げてしまった。

「あんたの海馬は他の人と色とかが違うんじゃないの?大きさも人より大きいのかも … あんた、どうでもいいことを克明に憶えすぎていて、それが瞬時に脳の中のファイルから引き出されてくるから… いつどんなときにどこで、誰らと飲みに行き、20人ほどの人でもどんな順序に座っていて、どんな順序で何を食べ、だれがどんな話をしたかを克明に覚えているでしょう。まるでビデオテープを再生するように。あれも一つの才能よね… もっと学問的なことだったらよかったのにねえ。飲み会の情景を克明に覚えていても世の中の役にはたたないわねえ」

ten さんからは私信でつい先日、「青空文庫の掲示板に以前、日本の昔話の英訳テキストを見たら“安達が原のおにばば”が“goblin”と訳されていたと書き込んだ覚えがあるのだが、その時の英訳の URL が見あたらない。覚えていないか?」という問い合わせをもらったばかりだった。私には何の話か全く見当が付かなかったのだが、保存してあった過去ログに検索をかけたら、あった。しかも、なんとその英訳本の URL は私が書いたものだった。驚異の海馬である。

もう一つは、雑誌 The Economist の "Bilingualism may protect the mind from deterioration in old age" という記事。Ellen Bialystok さんという人の実験結果を紹介している。モニタ画面に表示される青と赤の四角形を見て、それが青だったら(画面上の位置にかかわらず)左のシフトキーを、それが赤だったら右のシフトキーを押すといった形で、位置に惑わされず色の情報を正しく処理できるかを見る実験である。バイリンガルな人のほうが一つの言語しか話さない人よりも反応が速く、その差は年齢が上がるとともに大きくなる、という結果が出たそうだ。どうしてそうなるのかは、今のところ分かっていないが、二言語を扱う能力が脳の老化に歯止めをかけているのではないかと考えられるという。(この記事は rss 購読している Slate の "in other magazines - Summaries of what's in Time, Newsweek, etc." という記事で紹介されていて見つけた。)

以下は、あるうつ病患者の話。彼は完全なバイリンガルではないが、TOEFL の点数分布では上位1%のところに入る、ほぼ自然に英語も話す日本語話者である。病気になって、いろいろな面で仕事に差し障りが出ているのだが、英語を読んだり話したりには影響は全く出ていない。ところが、“文系”頭のせいか、表への入力とかプログラミングなど“理系”的な作業では著しく能力が低下していて、パニック状態に陥ることもしばしば。おそらく上の実験に参加していたら悲惨な結果を出していただろう。記憶の面では、集中して意識的に覚えるぶんには問題ないが、以前なら付帯的に覚えていたような「どうでもいいこと」はほぼ完全に記憶から抜け落ちてしまうようになった。色の認識は変わらないが、明るさや音の刺激には極端に弱くなっていて、電話の音に驚いて椅子から飛び上がらんばかりになる。器質的な障害を心配して脳のCTスキャンも受けたが、何も見つからなかったという。(いや、脳が見つからなかったのではなく、損傷が見つからなかったのである。)彼は今、海馬ちゃんにおいしいご馳走を食べさせようと、年休を取って、寝ころびながら本を読んでいる。早く元気になるんだよ、海馬ちゃん。

2004年 6月 22日 午前 12:40 | | この月のアーカイブへ

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コメント

『青空文庫・著作権のきれた作家のトリビアの泉』という企画をしましょうか・・(大爆)

投稿: ten | 2004/06/22 13:53:45

ê•îÒê•îÒÅIÅÑtenÇ≥ÇÒ

投稿: Juki | 2004/06/22 22:43:14

↑またも文字化けしてしまいました。
是非是非!とtenさんを煽る発言でした(^^;)

投稿: Juki | 2004/06/23 0:57:58

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