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2004.05.28

麻薬中毒患者の戦争

Kurt Vonnegut さんによる時評 Cold TurkeyIn These Times という革新系のサイトで見つけました。2週間ほど前に出たものです。ボネガットさんは、第2次世界大戦でのドレズデンの空襲をめぐる空想的な小説 Slaughterhouse-Five (これの映画版には、先日ご紹介した Holly Near さんが出演しています)などで有名なアメリカの作家です。

"Cold turkey" とは、麻薬中毒の人が徐々にではなく、いっぺんに服用をやめることによって起こる禁断症状のことです。(ジョン・レノンの歌のタイトルにもなっていましたよね。)

この時評の中で、ボネガットさんは、ユーモアと風刺たっぷりに、ブッシュ政権を筆頭とする保守派の政策を、独善的で金持ちの利益のみを考えたものだと批判しています。イラク戦争については「イラクに民主主義をもたらそうという考えは、アメリカ先住民にキリスト教の福音を広めようとした行為と変わるところがなく、感謝されなくても驚くには値しない」と書いています。この比喩は私にはとても新鮮に思えました。

記事のタイトル、"cold turkey" は、工業社会の石油依存を麻薬中毒に喩え、石油のために戦争をし利権の独占を狙うアメリカの姿勢を、禁断症状から逃れるため、凶暴な犯罪を犯してまで麻薬を買うお金を得ようとする麻薬中毒患者の姿に重ね合わせたものです。

ボネガットさんは記事の中で、1910年代に社会党から大統領選に立候補した Eugene Debs さんのスローガンや、新約聖書にあるイエス・キリストの山上の垂訓を引用していますが、私はそれらではなく、あえてボネガットさんの Slaughterhouse-Five の中で主人公の Billy Pilgrim が部屋の壁に掲げていた祈りの言葉をここに引用したいと思います。私は "serenity prayer" と呼ばれるこの祈りが好きで、よく心の中で唱えるのですが、これはアルコール中毒者の自助団体 Alcoholics Anonymous のモットーにもなっているそうです。ボネガットさんは、中毒の喩えで終わるこの記事を読んだ時に私たち読者がこの祈りを思い出し、自分たちに何ができるかを考えてほしかったのではないかと私は思いました。

God grant me
the serenity to accept
the things I cannot change,
courage
to change the things I can,
and wisdom always
to tell the
difference.

2004年 5月 28日 午前 12:07 | | この月のアーカイブへ

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コメント

わたしはSFをよく読んだ時期があったので、ヴォネガット氏の作品もある程度読んだ事があります。
そして「スローターハウス5」という映画は、よくできた映画でした。ヴォネガット自身の体験からフィクションにしたものなので説得力のある物語だし。
彼の紹介サイトがあったので貼ります。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2382/">http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2382/

投稿: しぇんて | 2004/05/28 22:07:29

しぇんてさん、ありがとうございます。
そうか、「ボネガット」より「ヴォネガット」のほうが普通の表記かもしれませんね。書き直したほうがいいかしら… ま、いいか。

輸入盤の著作権についてのコメントもありがとうございました。なんか今ひとつはっきりしない感じですね。特に、リンクを辿っていって行き着いた日本レコード協会の「欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に…」の「欧米」というところにカチンと来てしまいました。

投稿: うに | 2004/05/29 0:21:53

外国人の表記も難しいですからね。翻訳のある方は、そちらで定着してしまうと思いますが。
そういえば、ある個人の方が、・をいれる表記がきらいとか書いてあるのを見たこともあります。イ・スヨンでなくイスヨンにした方が好きとか。
表現の自由と、慣習化した表現には微妙なずれがあるのかもしれません。

>欧米の→さらに彼らの本音は、米英の、てことになるのでしょうが。
レコード業界にも、アジアを含むオセアニア、アフリカ、など諸々の音楽を日本に紹介するために尽力してる方々はいっぱいいらっしゃいます。また輸入のために頑張ってるところもあって、それで日本にいながらにして各国の音楽を楽しめるのですけれどもね。
ただ協会のお偉方からすれば、金のなる木にしか目がいっていないし、そういう方向で、音楽の嗜好を洗脳したいのかもしれません。今回の輸入権の問題は、価格を高値につりあげたままにしたい欲が前面に出ていることを脆くも露呈させてしまっている証左なのでしょうね。日本の公正取引委員会はもっとしっかりしないと・・・。

投稿: しぇんて | 2004/05/29 10:39:08

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