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2004.05.20

経済制裁と鎖国

オーウェル的と言うべきか、カフカ的と言うべきか分からないが、「経済制裁」という政策が私たちの社会をどのように歪めていくかを示唆する話を紹介する。

私は、最初にこの話を Hands Off という記事で読んだ。Valley Advocate というマサチューセッツ州西部で発行されている週刊のフリーペーパーに二か月ほど前に掲載された Stephanie Kraft さんによる記事だ。経済制裁対象国内で書かれた原稿の出版に関するアメリカ商務省の方針を論じている。同じころ、いくつかのもっと大きな新聞でも取り上げられていたと思う。

現在、アメリカ合衆国はキューバ、イラン、イラク、リビア、北朝鮮、スーダン、シリアに対して、厳しい経済制裁措置をとっている。これらの国の人たちが書いた論文や随筆等を編集しアメリカ国内で出版される雑誌等に掲載するには、商務省(Treasury Department)の海外資産管理局(Office of Foreign Assets Control)の特別な許可が必要である。この件に関してある学術雑誌の出版社から受けた問い合わせへの回答が OFAC のウェブサイトに掲載されている。そのメモによれば、例えばイラン在住の著者から送られてきた、いわゆる“カメラ・レディー”の原稿をそのまま掲載することは許される。しかし、驚くべきことに、

  • パラグラフや文を並べ替えたり
  • 文法上の誤りを直したり
  • 不適切な単語を差し替えたり
  • 共著者として原稿の改良や変更を行なったり

することは許されない。つまり、経済制裁対象国の人と共著で論文や本を執筆したり、それらの国の著作物を翻訳したり、その原稿をごく常識的な意味で校正編集すると、それはアメリカ国内では違法行為になるのである。そして、皮肉なことに、その法律は、経済制裁発動の理由であっただろうその国の体制を批判する意見を著者が述べていた場合でも適用される。

これが、“自由の国”という看板を掲げたアメリカの店じまいを意味しているのか、あるいは官僚組織の硬直度を物語っているのかは分からない。また、すべての経済制裁がこれと同等の適用範囲を持って課されるわけでもないことも自明である。ただ、安直に適用される経済制裁は、時として、このようにすこぶる滑稽な形で私たち自身の自由をも奪っていくことは、もっと広く識られるべきであろう。

2004年 5月 20日 午前 12:09 | | この月のアーカイブへ

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