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2004.05.14

チョムスキーのインタビュー

「南アフリカ、イスラエル・パレスチナと現在の世界秩序の輪郭」という題でノーム・チョムスキーさんがインタビューに答えている。インタビューアはハーバード大学のクリストファー・リーさん。インタビューが行なわれたのは今年の3月9日だという。Z-Magazine のサイトで見つけたが、元々はSafundi: Journal of South African and American Comparative Studies という雑誌に掲載されたもの。記事の原題は "South Africa, Israel-Palestine, and the Contours of the Contemporary World Order"。南アフリカやイスラエルにおける隔離政策の違いなど、かなり微妙な差に関する議論があって、読みやすいものとは言えない。私には知らないことが多く、また、かなり長いインタビューであるため、その全体を訳したりうまく要約することは今の私にはできない。南アフリカに関する部分は割愛し、印象に残った点をいくつか紹介しよう。これによってチョムスキーさんの発言の趣旨は曲がって伝わることはないだろうが、記事の全体像を示すものではないことを予めご了承願いたい。

チョムスキーさんは、ヨルダン川西岸地区の分断壁の構築がパレスチナ人を追い出すための長期的な計画の一部だと考えている。それは、壁が国際的に認められた本来の国境よりもパレスチナ側に作られているだけでなく、給水系をパレスチナ人から奪っており、壁の中が徐々に居住不可能になっていくと考えられるからだと言う。

オスロ合意がまとまったのは、アラファトがユダヤ人居住地の撤去を求めなかったからであり、それはアラファトなどの亡命組(チュニス組)パレスチナ人組織の裏切りにも等しいものだとチョムスキーさんは批判する。その結果、その後、居住地建設が絶え間なく続いたとしている。オスロに先立つ協議では、パレスチナ残留組の Haidar Abdel Shafi 氏が交渉にあたり、ユダヤ人居住地の撤去要求を曲げなかったため、合意にいたらなかったとする。チョムスキーさんはこの Haidar Abdel Shafi 氏を高く評価している。

1967年の第三次中東戦争から1973年の第四次中東戦争の間に、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家の連邦制度のようなものの構築が可能だったのではないかとチョムスキーさんは考える。その当時はそのような意見を述べることは異端とされており、イスラエルはその機会を逃してしまい、現在唯一可能性があるのは、イスラエルとパレスチナという二つの全く独立した国が本来の国境線沿いに作られることが国際社会で合意されることだとチョムスキーさんは語っている。

このインタビューで一番興味深かったのは、チョムスキーさんが自らの生い立ちを語っている部分である。反ユダヤ主義の風潮が非常に強かった1930年代には、モーテルに "restricted" (立ち入り限定)と書いてあれば、それは黒人だけでなく、ユダヤ人もお断りという意味だったことや、1950年代はじめには、ハーバード大学ではユダヤ系の教員が全くいなかったことを述懐している。似たような意味で、現在のアメリカ社会には反アラブ主義的な風潮が見られると語っている。

また、彼は十代のころ、自分がシオニストであったと語っている。当時、シオニズムと言っても、それは必ずしもユダヤ人国家建設とは同義ではなく、ユダヤ教国家、イスラム教国家、キリスト教国家、白人国家など、すべて差別的であらざるを得ず、そのようなものには当時も今も反対であると言う。

もう一点、経済制裁という政策に関するチョムスキーさんの見解も非常に興味深い。経済制裁は対象となる国の民衆を傷つけるものであるから、その国の民衆が望んでいるのでなければ、そのような政策をとるのは非道徳的であると言う。

これを敷衍して他の地域の問題に若干、私の意見を述べる。以前、東ティモール外務大臣のラモス・オルタさんが「経済制裁は有効性に乏しい」という発言をしたことを紹介した。その視点同様、昨今、安直に北朝鮮への経済制裁を唱える人たちには、この「道徳性」という視点も欠けているように思われる。「あっちも非道徳的なことをやっているから、こっちもやるんだ」というのでは子どもの喧嘩であり、説得力を全く持たない。経済制裁の非道徳性を認識しつつ、それを主張するのは、「なぜ人を殺してはいけないの」と問いかけることとほぼ同等であると私は考える。

2004年 5月 14日 午前 12:20 | | この月のアーカイブへ

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